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到着と一芝居

 飛翔して先導する風精霊鳥に置いて行かれないように私は身体能力を強化して駆けた。


 ちらほらと冒険者たちがのんびりと歩いている横を、脇目も振らず駆ける私に驚いていた。


 夕暮れ迫る中、私はセンヴァーリアに着く。

 センヴァーリアに着いたは着いたけれど、町に入るには列に並び審査手続きしなければならないみたいで、行列が出来ていた。


 衛兵が居る。


 迷う。横入りや順番抜かしはマナ―違反。自分さえ良ければルールなんて関係ねえねえは駄目、絶対に!

 ルール無視、マナ―が悪い迷惑系害人になったら駄目、絶対に!!


 索敵範囲にはちらほらと反応は有った。しかし、数十、数百の集団は斃したゴブリンたち以外には反応が無かった。


 索敵範囲外に巣でも在るかも知れない。


 ちょっと強い冒険者を演じる。列に並ばず門へ駆けていく私を非難する声が聞こえる。


「え、衛へ……ぃ、さん!! た、ぃへ、ん!! 大変なんだっ!!」


 息も絶え絶えに遠くから休まずに走って来た、という演技をする。


「な、何だ、何があった!!」


「ゴ、ごほ、ブリンッ!」


「落ち着け。先ずは息を整えてから喋れ」


 大袈裟に深呼吸とちょっと肩で息をする演技をする。


「ゴ、ブリンの軍勢、を見たんだ!! 巨体で太く筋肉質なゴブリンとそれよりも小さいけど、衛兵さんよりも大きいゴブリンと子供と変わらない大きさのゴブリンが百近く……」


 一息に喋り、膝を着く。


「な、なんだとっ!! それは何処だ!!」


「ば、場所は――」


 私はマップ情報を見ながらガリガリと地面にゴブリン討伐場所を描く。


「ま、魔力をぜ、全部使って、落とし穴に落として爆殺したけど……巨体ゴブリン、の雷撃には勝てなかった……。それと他に軍勢を分けてるかも……」


 もし、雷撃が見えていたり、雷鳴が聞こえていた時の事を考えてゴブリンの魔法のせいにすると、魔力欠乏で気絶した、と装う。


「おいっ! 確りしろ!! 情報助かった。話は聞いたな。冒険者ギルドに至急報せろ!!」


「メンラー、私が医務室に運びます」


「タリアか。そうか頼む」


 カッカッ、とタリアと呼ばれた女性の靴音が喧騒の中に響く。


「魔力欠乏で気を失った振りは止せ」


 ギグッ!! バレてる。

 悟られるな。


「あくまでも気を失った振りを続けるか。まぁ良いだろう。だが、お前が頭に乗せていた風精霊鳥を私は知っている。なにせ知人の契約精霊だ。そして片耳に着けている耳飾り(イヤーカフ)も知人のハイアールヴが耳に着けていた物だ」


「リーゼの知り合いさん?」


「そうだ」


 私は懐からリーゼから貰った紹介状を渡す。此処で嘘を吐いても意味がない。素直に話そう。

 【看破】にも悪い性格とは引っかからないし。


 タリアさんは活発な動きに対応できるタイトな制服を着用していて、印象としては落ち着いた雰囲気を纏い、ストイックに身体や技を鍛えている、それを裏付けかのようにスレンダーだけど靭やかな筋肉質な体形だ。

 凛とした佇まいが、四角四面な性格というか冷たい印象や、悪いことをしていなくても此方が勝手に威圧されている感じがしてしまう。


「アールヴイーターを討滅した、だと!? 信じられん……だが、アイツがくだらん嘘を吐く筈もない……か」


 タリアさんはリーゼが冒険者ギルドにアールヴイーター討伐メンバーを募集していたという。

 メンバーを募集し、ともに鍛錬し、力を付けやがて来る時を待とうとしていた、という。

 しかし、魔族との戦争も無く、スタンピードも稀であり、竜種が現れても極一部の高ランク冒険者やクランが斃してしまう平和ボケした冒険者には荷が重く、誰も参加しようなどと手を挙げる者は居なかった。

 

 竜種を斃す程の高ランク冒険者、クランでも無理なの? と問う私に――


「縄張り争いや群れのリーダーを決める下剋上の戦いに敗れ、群れを追われて、食うものにも住まう場所にも困って人里を襲う様なドラゴンが無傷と思うか?」


 ――と、答えが返ってきた。


 言われてみれば納得って感じだ。


「まぁ、中には美姫や財宝を奪う為に街を襲うドラゴンも存在するが、大抵が知恵有る幻魔竜種だ」


 話を変えて私はゴブリンとのエンカウントから討滅に至った経緯を語った。


「衛兵さんに話たゴブリンの話は本当。ただ全力で雷撃を撃ったのは私で、その雷撃でゴブリンを討滅したんだけど、他に分隊が潜んでたら数的に手が回らないから、急いで来たってわけ」


「それなら、芝居などせずに……って身分を示す物が無いからか……」


「身分が無いと、まともに取り合ってくれないかなぁ、って」


「そうだな……一蹴されていただろうな。此処は冒険者の町だ。玉石混交、さらに言えば冒険者なぞ誰にでもなれると勘違いした有象無象の塵芥がやって来ては勝手に冒険者を名乗っていたりもするからな……。冒険者に夢や希望は無いぞ? 悪いことは言わない。 地道でも生活が地味でも学や何か別に得意な事があるならそっちを選べ」


 ギルドのことや登録条件があると教えてくれて、良く考えることだと言ってタリアさんは部屋をあとにする。

 因みに此処はタリアさんの個室だ。


 冒険者ギルド、商業ギルド、どっちでもこの町で住む為の登録と身分保証書は貰える、と。


 さてさて、どうするかなぁ……。


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