第一章 プロローグ
初投稿です。 素人の作品ですが、暇つぶしにでも読んでもらえたら幸いです。よろしくお願いします。
(どうしよう)
霧に覆われた草木もない荒れた山岳地帯のような場所で兵士として動員された少年は目の前の事態から目をそらすように心の中で呟く。
ここは新しく発見された第四迷宮。この少年を含めた大勢の兵士達は探索艦に乗ってこの地にやってきた。探索艦は船の形はしているも宙に浮き、尚且つ多大な武装を施した戦闘艦であり、師団長は万が一にも探索に支障はないと力説していた。だが
(どうしよう)
迷宮にたどり着き深い霧の中を進み、平坦な場所を見つけ上陸し、拠点を築こうとして間もなく、怪物の群れがなだれのごとく襲い掛かり指揮系統は崩壊し、探索艦は不利とみるやいなやすぐさま艦の外にいた兵士を置き去りにして迷宮を離脱した。
(置いて行かれちまった「ノエル」これからどうしたら「ノエル!」っ)
自身を呼ぶ怒鳴り声に少年、ノエルの意識は現実に引っ張られる。目の前にいるのは二人。
「なにボケッとしてんだ! その手に持ってるもんは飾りか! ああ!?」
荒々しく怒鳴り散らすのは、銃とバールの様なものに強化を施して臨戦態勢で構えるのは共に兵士に動員され幼少の頃から付き合いのある男レオン。
「バケモンども! そんなに焼き殺されたいか! いいぜ! こんがり焼いてやるよ! 」
火炎放射器で武装し、空になった円筒の中に新たな燃料を生み出しながら好戦的な態度で吠えるのは、同じく縁のある男ダニエル。
殺気だった二人の先、そこには凄惨な光景が広がっていた。
グルルル! グルアアアアア!
「ぎゃあああああああああ!」
自分とそう歳が離れてない兵士が犬のような、されど体長8mはある体をもった異形・【眷属】に嬲り殺される。
「い、嫌だ助けt」
「が」
「ぐぇ」
巨木のように太い二本足で立ち、ランスのような嘴を持った鳥のような眷属が見た目に似つかわしくない素早さで兵士を三人まとめて串刺しにする。
「攻撃が効かな――――」
「嘘だろ! 硬すg」
「無理だこんなもん!」
全身を角ばった鋲のような鱗で覆ったワニの体にカメの頭をつけた姿をした眷属に何人か瞬く間に嚙み殺され、他の者もひたすらに逃げ惑う。これらと似たような惨状があちこちで起こっていた。
「わ、悪い。レオン」
「ならさっさと「おい! こっちに来たぞ!」なに!」
ダニエルの声に二人が顔を向けると先ほど兵士を殺していた眷属がこちらに狙いを定め迫っていきてた。
「チクショウ! ノエル、援護しろ! ダニエルは合図を待て!」
「わかった!」
「しくじんなよ!」
二人に指示を出すと同時にレオンが銃を乱射しながら突撃する。
「うおおおおおおおお!」
グオオオオオオオオオオオオオオオ!
眷属は、強化され威力が上がった弾丸を真正面から受けてもモノともせず咆哮をあげながら四足で猛突進する。
(さっぱり効かないか! なら)
レオンは自動小銃を眷属の目に狙いを定める。視界を阻害されたためか、眷属は突進そのものは続けるが怯む様子を見せた。その時
「これでもくらえ!」
ノエルは構えた銃、だがレオンが使用した銃とは構造が違うそれに意識を集中させ、銃口付近から淡く輝く光弾を発射する。
ノエルが放った光弾が眷属の頭部へと被弾する。金属の弾丸よりは遅いがその光弾は、頭部に着弾した瞬間、爆発を引き起こした。
ガアッ
光弾によるダメージ自体はほとんどなかったが爆発により、眷属は迫り来るレオンを見失った。咄嗟に噛みつくがレオンに当たらず空振る。
(よくやった、ノエル!)
レオンは攻撃を避けるとちょうど弾切れを起こした自動小銃を投げ捨て、バールを片方に直ぐ様四つん這いになった背によじ登る。
「銃がダメなら―――――」
背に乗ったレオンはバールの先を鱗の隙間に添え
「これならどうよ!」
勢い良く奥まで挿し込み、鱗をベリベリと引き剥がしていった。
ガアアアアア!?
「おらおらおらおら!」
ひたすらにバールで鱗を剥がしにかかるレオン。まさか鱗の内側を晒されるのは予想外だった眷属は慌てて暴れようとする。
「させるか!」
ノエルはそこで動揺して開けたままにしてしまった口の中に光弾を放つ。
▲☆◾️!?
流石に口内に光弾が炸裂したのに堪えた眷属は本の一瞬、動きが止まる。それなりの量の鱗を剥がしたレオンはその隙に背を降りて眷属から距離を取る。
「よし! ダニエル殺れ!」
「シヤァ! バーベキューだああああああ!」
今かいまかと合図を待っていたダニエルは生み出した燃料を解放、火炎放射器で眷属を火達磨にする。
ガギャアアアアア!??
無防備になった血肉を焼かれた眷属が四方八方に転がり、近くにいた鳥型や犬型の眷属を巻添えにする。元々互いに殺しあっていた関係、殺意の矛先を兵士から鱗型に変更し血走った目で攻撃する。
アアアアアアアァァァァァァ
鱗のない箇所に根本まで嘴を突き立てられ、身動きがとれなくなった所で首を噛まれた眷属の断末魔が響き渡る。
「ぎゃはは! ザマァ見ろ!」
「これからどうする!」
「とにかくここを離れんだよ! 急げお前ら! 」
眷属が兵士、または同族に襲い掛かる乱戦状態の中を駆け抜ける。レオンが接近戦で翻弄、ノエルが隙を作りダニエルが燃やす。うまいこと退けていたがいずれ限界が来る。減るどころか争いを聞きつけ集まってくる眷属の群れ。やがて数体の眷属に切り立った崖まで追いやられてしまう。下は断崖絶壁で落ちたら無事ではすまない。
「クソが! 殺せるもんなら殺してみろ! 丸焼きにしてやる!」
ダニエルが炎でけん制するがあまり効果がない。この眷属達は先ほど焼かれた個体を見ていたのか警戒してむやみに近ずきはしないが少しずつにじり寄っていき、その内の一体が先頭にいたダニエルを襲う。
「なめやがって――――ぐあ!」
眷属の一体に攻撃される。直前に火炎放射器を盾にしたが耐え切れず、崖ぎわに吹き飛ばされる。
「ダニエル!」
「うああ! こっち来るな!」
レオンがダニエルを受け止め落ちずに済んだが、盾にした火炎放射器は酷くひしゃげ使い物にならなくなった。ノエルが光弾で追い払おうとするが傷は負わせても殺すには至らない。絶対絶命の状況で死を目前にした三人に眷属達が止めをさそうと歩みだした。その時
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
咆哮が、だが今まで相手をしてきた眷属とは比べ物にならない規模で響き渡る。兵士や眷属問わずその咆哮を浴びた者達の動きが止まる。三人も突然の事態にどう動揺しながらも辺りを見渡す。そして
「あ、あれは」
山の一角から咆哮の主が現れた。霧も多少晴れたことで見えるその体は80mは超えているだろうか、全体的にカメのような体系だが足が六本あり、背に背負う甲羅には分厚く鋭い角のようなものが乱雑に生やし、途中から三つに分かれた太く長い尾を兼ね備えた、これまで戦ってきたものとは比べ物にならない存在だった。その眷属は今自分たちが争っているエリアに顔を向けると、口元を開き大量の空気を吸い込む。
「まさか・・・・」
巨大な眷属が何をしようとしているのか察した三人の顔が青ざめる。このままでは確実な死が訪れてしまう。
(ど、どうする)
他の二人はまだ態勢が崩れたままですぐに動けるのはノエルだけだった。ノエルは必死になって頭を回す。すぐに仕掛けないことから、あくまで勘だが最悪の結末まで、まだ多少の時間があると。幸い迫ってきていた眷属たちも注意が巨大眷属に向いている。まだ終わっていない。
(どうするばっ)
目の前いるのはそれぞれ6~7メートルほどの眷属が五体で獣、二足の鳥、トカゲと形態はざっと三種類ほど、後ろは崖、そばには二人の仲間―――――――ここで一つの考えが浮かぶが、それが正解かどうかは全く自信がない。
(――――――――――)
巨大眷属が攻撃準備を終えようとしていた。ノエルは悩み続け、しかし遂に行動に出る。ノエルはレオンとダニエルのそばに寄り、ただ二人の体に手を触れる。
「ごめん!」
ノエルは二人に向けて謝り、そして動く。ダニエルの壊れた火炎放射機―――――そのかろうじて無事だった燃料タンクを手に取り、それを眷属の方へと投げた。燃料タンクは眷属の足元に転がり、そこをノエルは光弾で狙い撃つ。
!?
気づいた時にはもう遅かった。燃料タンクは大爆発し、そしてダメ押しと言わんばかりに光弾を乱射する。すると足場に亀裂が入っていき、そして足場が完全に崩れ、崖下へ落下を始めた。同時に
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
巨大眷属が放ったブレスがエリア一帯を襲う。干渉の影響で緑色に視認できる空気のブレスが衝撃と暴風を撒き散らし全てを吹き飛ばしていく。
「うおおお!?」
「ノエル! てめ―――」
落下によりブレスの直撃を免れ、突然の無茶振りにダニエルは叫びレオンはノエルに対して何か言おうとしたがやめた。ノエルの顔は申し訳ながらも二人に信頼を寄せたものだったからだ。
「頼む」
「っ!」
ノエルの言葉で二人は先ほど伝わってきた思考に答えるよう動く。まず道連れにした眷属のうち、大量の毛に覆われた獣型の一体に全員でしがみつく。そしたらダニエルがクッションになりそうな物を眷属との間に生み出し、レオンがそれに干渉・補強する。最後にノエルが半透明な膜のようなもので自分たちを包んだところで轟音と共に地面へ着地した。
――――――――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
吹き飛ばしたエリアを眺め、結果に満足した巨大眷属が勝利の雄たけびをあげ、その場を去っていく。
ノエルたちがいたエリアは台形のような地形をしていたが平坦部は完全に消失しU字の形にえぐれていた。人も眷属もブレスの範囲内のいたものはもはや面影も残っていなかった。
巨大眷属が立ち去って数分はたっただろうか、崖下は土くれが小山のようにたまっており、その一部に穴が開き、そこから三人が這い出てきた。
「「「ぶはぁ」」」
ノエル達は這い出た後に辺りの確認をする。道連れにした眷属はみな半ばひき肉になった状態で死んでいた。ひとまず危険がないことを確認し、三人ともその場に座り込む。
「クソ、もうなにもだせねえ・・・」
「ノエル。てめえ無茶なこと考えたな」
「う、本当にごめんよ」
ダニエルは眷属から受けた攻撃と創造の負荷で疲弊し横たわった。レオンは軽くノエルを責め、ノエルは謝罪をする。その後も文句が続くが助かったのはノエルのおかげであるのは分かっているのでレオンは最後、素直に感謝する。
「まあ、おかげで今も俺たちは生きてる。ありがとよ。」
「・・・うん」
そこで一旦会話をやめ、体力の回復に専念する。しかしいつまでもこの場にいるわけにはいかない。少ししてから三人は動き出す。 警戒しながら道なき道を歩いていき、そして途中で見渡しのいい場所にたどり着きそこから見てしまった。
先ほどの濃霧が嘘のように晴れ、されど荒れた大地のあちこちで眷属達が争い、なによりブレスを放った巨大眷属と同等かそれ以上の眷属が遠くで地形が変わるほどの殺し合いを繰り広げているのを
「「「――――――――――」」」
目を背けたくなる現実を前にただ黙って見ることしかできなかった。
「そんな・・・・」
「――――行くぞ」
「どこへだ? あの世か? クソっ」
「とにかく進むんだ。これ以上悪くなりようもないだろうが」
再び歩きだすレオンにダニエルが悪態をつきながらも続いてく。ノエルも顔色が悪くなりながらも後ろを付いていく。
(どうしよう)
置いていかれ、脱出も不可能なこの第四迷宮を彷徨うしかない現状にノエルは考える。だが答えは浮かばない。
(どうしてこんなことに)
ノエルは現実から逃げるように、この迷宮に来る前のことを思い返した。
時は徴集される前に遡る。
誤字や脱字などの間違い等がありましたら指摘してもらえると嬉しいです。