第四話 王子様に恋をしたお姫様(Ⅳ)
一気に予約投稿の悪い事があるとすれば、書いている側は凄い楽ですけれど、今投稿しようとしている自分は文に関してはテキトーに区切っているのでいいんですけど、前書きを書いた方がいいのか、悪いのか、それが分からない所ですね。
「最近増えましたねぇ、まぁ日本でも増えている原因はぁ、マリー達にも一因があるかもですがぁ、それでもテロリストには賛同しないで欲しいですねぇ」
「別に俺達は関係ないと思うけどね」
「その心はぁ?」ミライ君がズバッと言いきりました。
「要は賛同している連中は、平等を求めているんだろ?えーっと確かレニの参考書に書かれてた内容が…」そう言ってミライ君は自らの端末で画像を探しています。
「15年程前から日本は技術的に革命を起こし、世界一の防衛能力と各種産業に他国と比べ大きな優位性を得た結果。事実上の他国との関係を絶った、その自国優先な技術の隠匿に各国は日本を非難した。しかし日本に負けじと各国も革新的技術、製法を生み出しどこも各国との関係を徐々に絶つ、その結果訪れたのが現時点の事実上の無戦争化による絶対平和である。現在では各国を移動する人間は旅行客の様な一部に限られ、直接会って行う国同士の会合なども直接会う事のないオンラインが殆ど。国同士の関係性についてはP153参照、そして現在日本は事実上の完全平等化に成功している唯一の国である」
「P153参照の所まで読む必要ありましたぁ?」
「まぁ覚えてないから、そのまま読むしかなかったってのもある、とにかく言いたい事は、日本という国は国際的にみても平等な社会を実現しているというのに、アベンジャーズの自らが受けた痛みを復讐するという思想に賛同している、国から平等に保護が受けられて、平等に保険を使わせて貰えて、平等に扱われているというのに、それでも不満があるってことでしょ?そんなやつらは例え痛みの復讐じゃなくて、ごく個人的な復讐でも喜んでデモ活動するんじゃないの?」
「確かにそうかもしれませんぅ」
「それこそ、国に復讐できる資格なんてものがあるのならば俺達みたいなゴミだめ在住の
人間位なものでしょ」
あそこに住んでいるミライ君がその言葉を言うと、少し重みに違いが出ている気がします。そしてゴミだめという言葉が出た時、マリーは思い出しました、ミライ君達の過去を知ってしまったからこそ、マリーの友達の、友達の過去をミライ君は知る権利があります。
「ミライ君、今からマリーが話す事は友達の、友達の話なんですけどぉ、いいですかぁ?」
「別に大丈夫だけど…、どうしたのいきなり…」
「別にマリーの話ではないんですぅ、けれどミライ君には知っていて欲しくてぇ、聞いてくれますかぁ?」
「うん、いいよ、それを聞いたところで俺が何かしてあげれる訳ではないけれど」
その返事が聞けてよかったです、この話は別に武勇伝でも悲しいお話でもありません、ただのお姫様が大好きだった少女のお話なのですから。
「コホン、では話します」マリーは一度咳払いをして、真剣な眼差しでミライ君の顔を見つめます、しっかりと人の顔を見るというのは、少々歯がゆいですが、それは今気にする事ではありません、決して気持ちのいい話ではないですし、パパっと話ちゃいましょう。
ある施設に産まれてから外というモノを知らない少女が居りました。少女の他にも子供はいて、その誰もが外というモノを知りませんでした。ある時面倒を見てくれている大人が少女達にこう語ります。
『いつかきっと君達も外に出られるから』
少女達は大人が語る外というモノに夢中になります、外が夢のあるモノだと少女達は沢山の質問を少女達は大人にしました、それはもう沢山の事を聞きました。
そう語ってくれた大人は、次の日病気で死んでしまいます。少年少女は泣きました、しかし施設も面倒を見てくれる人間が居ないと困ると知っていたからでしょうか、大人は新しい人がすぐにやってきました。
少女達は新しい大人にも聞きました『外の話をして…、外はどんな所なの…』と一度知ってしまった外という見た事も無い場所がどんな所なのか、こことは何が違うのかを少女達は聞きますが、大人は決して答えてくれません、しかしこうも約束するのです。
『君達が、私達の目的を達成した暁には、君達が外に出られるように申請してみるよ』
そう言われると同時に少女達は、大人達に連れて行かれます。いつもの事です、お薬を飲んで、お薬を注射して、そして次の日に備えます。
外を夢見て、何日も何日も、外という場所を夢見て、外という場所に憧れを抱いて、自分達が外に出られると信じて、どんなに体がおかしくなろうとも、どんなに自分を自分だと認識できなくなったとしても、自分の命が失おうとも外を目指して、目指して、目指していきます。
幾年が過ぎて少女が女性と呼べるような年齢になった時には、一緒に外見ようと誓った友人も、食べた事の無いモノを食べようと話あった友人も、自分達が話している以外の言語を聞きに行こうと語り合った友人も居たはずなのに、自分が振り返るとそこには誰も居なかった。居たはずの友人は自らが生んだ幻想と言わんばかりに、誰一人として残っていなかったのです。
自分以外誰も居ないと言うのは、自分が好き勝手に出来ると言う事、最初は楽しかったです。いつもならば髪は短くされていたのに髪を伸ばす事が許された、強制されていた勉強もしなくてもいい、大人の話で聞いた、お姫様が出てくる物語を読む事も許された、けれどそれを分かち合う友人が居ないと知った時、彼女は絶望しまし、彼女は懇願しました。
『外に出たいの』それに大人は答えます『まだ目的は達成していない』
それからまた1年、2年、3年と月日は流れます、毎日渡されたお薬を飲んで、毎日なんらかのお注射をうって、身体を触られて、検査をして、決して変わる事のない日常を、何日も、何日も、何日も。だからこそ願いました、このお姫様の物語の様に彼女を連れだしてくれる白馬に乗った王子様の登場を、1週間、半月、半年、1年と待ち続けた時、ついに王子様は彼女の前に現れたのです。その姿は想像した王子様とは違いましたが、王子様は彼女に向ってこう語りました。
『白馬の王子を待つお姫様がここに居ると推理したんだが、まさか君自身が白馬の様に美
しいお姫様だったとは、これは一本取られたな。待たせてしまったね、君を助けに来たんだ、可愛い私の…、私だけのお姫様?』
王子様の登場で、お姫様は救われました。これで物語はお終い…ちゃんちゃん。
「といった感じでぇーす、どうですか?友達の、友達の話なんですけどぉ、とってもロマンチックじゃぁありませんかぁ?」
「マリーが明智の事をなんであそこまで、心酔できるか理由が分かった気がするよ」
あれぇ?マリーはマリーの事と話したつもりは無いのに、なんでミライ君は今の話がマリーの話だってわかるんですか?明智さんに話した時もマリーの話だとバレなかったのに。
「な、なんでマリーの事だと?」
「なんでって…、マリーが幸せそうに語っていたから?」
ミライ君は疑問顔でこちらに確認をとってきますが、マリーにはマリーが今どんな顔をしているかがわかりません、そんなに頬がにやけてしまっているのでしょうか?
「と、とにかくぅ、マリーの事ではぁないんですぅ、勘違いしないでくださいぃ、あんなのマリーじゃありませんからぁ!」
「そっか、そっか、そういう事にしておくよ、でもそうだったんだね、その囚われのお姫様と俺達はちょっと似ているんだ、自ら閉じ込められた馬鹿と、最初から囚われていたっていう違いはあるにせよ」
「そうです!この時代でも囚われるのはぁ、なにも犯罪者だけじゃぁありません!そこの所をミライ君に知っていて欲しかったんですぅ」
そうしてマリーはミライ君がもう少し外を楽しむ事でしたので先にお支払いをしてお店を出ていきます、しかし忘れたモノを思い出し、もう一度お店に戻りました。
「ミライ君、誕生日を楽しみにしといてくださいねぇ!」
今日やるべき事をやりきったマリーは少しの恥ずかしさを覚えながら、マリーのお家への帰路につきました、お仕事の後にも体感できる事ですが何かをやりきるというのは、とても気持ちのいい事だとマリーは思いました、これで明日からもお仕事を頑張れます。
その1時間後ミライ君にマリーが買った、明智さんへのプレゼントを自宅まで運んできてもらうまで、その気持ちは続いたままでした。やっぱりマリーはダメな子です。
ミライ君とのデートから1週間程経過した時の事でした、マリー達特殊事態対策班に不確定ですが、見過ごす事の出来ない情報が、お国からマリー達のもとに届きました。曰くアベンジャーズらしき人員が出入りした形跡がある場所が多数見つかったとの事です、けれどもこんな如何にも罠らしい罠に引っかかるマリー達ではありません。
「で、どう思う?今回の不確かな情報だが、それでもやつらの何かが見つかるかもしれない何かに賭けるか、それとも無視をするか」キャプテンさんがマリー達に問います。
「そうだねぇ、私達は別に国の為に戦っている訳ではないし、そもそもそこにアベンジャーズの痕跡があったとして、それが有用な物か、それに私達の命を賭ける価値があるか…」
「好きに決めて頂戴、私は正直どちらでもいいわ」「サチアに同じく、やるならやるよ」
「マリーは明智さんに従います、明智さんが行けというならば、一人でも行きます」
マリー達が考えるのは、ただ一つの懸念は情報が不確かすぎます。第五課でカバーできるのも情報源の内の一つだけです。果たしてその一つに確かな情報があるかどうか、その損得勘定がマリー達の行動を邪魔します。
「仮にあり得ないとは思うが、情報が確かだったとしても、そこが敵の本拠地ならば私達は行った所で全滅だ、行くとしても戦力を絞るべきか否か…、よし行ってみようか」
「どうしていきなりそこで行ってみようって発想になるのか、教えてくれるかしら?」
マリーも気になります、マイナスな事ばかり明智さんは言っていましたが、明智さんの中で何かが確証に変わったのでしょうか?
「行くなら少人数がいい、そもそも現状私達は大変遺憾だが後手に回っている状態だ。私の意見一つで会社が動く訳ではないが、現状を打破するならばここで動く以外の選択肢はない、それに彼らが先手を取り続けるのは不公平だろう?」
確かに現状を打破するには、ここで分の悪い賭けであっても動く以外の選択肢はないようです、それにそもそも世界に喧嘩を売ったアベンジャーズの侵攻を国が許す訳も無く、すぐにでも正式な依頼そして作戦として、動くことになるとマリーは考えます。
「すぐにでも実行するの?それとも待つ国が行けと言うまで待つのかしら?」
「僕は待つべきだと思うよ、流石に単独で動くには情報が多すぎる、それに万が一こちらの情報が抜かれていた場合はそれこそ待ち受けられて、終わりだよ」
「俺はキャプテンに賛成かな」「マリーもそれが良いと思います」ミライ君と意見が合致しました、ここは安全に動いた方が確実だとミライ君も考えたようです。
「わかった、では国の作戦に合わせようそれまでに、私がどの情報こそ一番の可能性があるか思考する、それまでは各々準備にかかる様に」
「「「「了解」」」」
そうして国が作戦の決行を伝えるのに、もう1週間を要しました。これでも迅速に動いた方だと明智さんは言いますが、その分相手にも準備する時間を与えてしまったなと、少し嘆いていました。しかしそれでも世界各地で同時に拠点を襲撃するという一種の、一致団結ができたという点ではいい事なのかもしれません。
マリーの足りない脳みそでは、情報源全箇所一斉攻撃以外の方法は思いつきませんでしたが、マリーに明智さん程の頭脳があれば、他にも案を出せたかもしれないと嘆く時間もありません、今はただ敵の拠点で一つでも明智さんの推理の為になる情報を見つけるというのがマリーの出来る最善手です。
「マリー、サチア、準備はいいかい?」
「出来てるわ」「行けます!」
「それじゃあ、作戦開始だ…」
この作戦は敵拠点に隠密で侵入、敵が居れば拿捕もしくは排除をし、一つでも多く情報を持ち帰る事です。そもそもその情報があるという確証も無いのが問題ですが…。
キャプテンさんが自分こそ前線で作戦に参加した方が良いと、作戦直前まで明智さんと言い合っていましたが、明智さんは『私の推測が外れだった場合すぐさまデータを本部まで安全に持っていける君という戦力を削ぐのは効率的じゃない』と語り、けれどキャプテンさんもそんな事は百も承知で、それでも明智さんの推測が正しいと思っての発言だったと、マリーは思います。ですが明智さんの言いたい事はマリーにもわかりました、もしもを考えた場合、キャプテンさんが私達と行動を共にするのは明確な弱みになります。
その上でのキャプテンさんの独立遊軍化、世界各地全てをカバーするのは流石のキャプテンさんの技術でも不可能ですが、なんとか日本に限るならば、どの移動手段よりも最速である事に変わりはありません。
全世界に喧嘩を売ったアベンジャーズ、この作戦ですら尻尾を掴ませないというのなら、もうお手上げの状態ですが、そうはならない事をマリーは静かに祈りました。
「クリア」
泥棒猫が先行し誰も居ない事を確認し、猫は猫らしく足音も、物音一つ立てずに内部を確認していきました、マリー達はクリアという言葉を聞いて扉を後ろから着いていくだけのおもちゃになっていればいいと言わんばかりに、ズカズカと泥棒猫は進みます。
「ちょっと待って、何か聞こえる…これは何?」
これは何では何かは、わかりません。具体例を出してほしい所ですが、その音は泥棒猫の特殊な耳で無くても聞こえてくる程の音でした。
風の様な音ですが、どこか機械的です、巨大なファンといえばいいでしょうか?少なくても暴風等の自然現象ではないと言う事は、わかります。けれどもここからでも聞こえる程の爆音の冷却パーツが現代に残っているでしょうか?
「どうする明智入る?入らない?その気になれば外から確認するけれど…」
「ふむ…、少し嫌な予感がする…これはキャップを連れてきた方が英断だったかな?いやこの感じだと全部か、しかし私が知っているレベルであれば何とか対処は出来るか?」
明智さんはブツブツと独り言を話します、マリーには何を考えているのかわかりません。しかしキャプテンさんが必要だったというのは一体どういう事でしょうか?まさかこの先にはキャプテンさんにしかどうにかできないような武器が格納されているのでしょうか?もしそんな巨大な武器が目の前にあるとするのならば、マリーには成すすべがありません、ひしひしとマリーの、そして明智さんの死の足音が近づいている気がして、普段は出ないような冷や汗が一粒マリーの横頬を通りました。
ここまで読んで頂きありがとうございました。




