第三話 何処にでもいる、取り換えの利く探偵(Ⅵ)
あぁーい、一先ず三話終わりまーした、心理描写しかねぇ気がしますが、状況描写の書き方が分からないで次作の予定はあるのでその時は、google先生に頑張ってもらいます。因みに次回作は多分絶対なろう受けしないと思います、本当にただの恋愛です、異世界でもないですし、この世界みたいに少し未来の話でもないです、現実の軸に話しを作って行ってます。
3冊目を開いて全体を確認するべくペラペラと流し見するが、この3冊目は10ページ程で終わっているらしい、悪魔の証明を達成し必要なしと判断され組織はデータを残し処分、それとも第二段階の安定でクーデターを起こされるか、まぁ答えはどの道一つで、彼らが辿る道も一つだ。唯一別の可能性があるとすれば被検体の底をついたか位か。
実験記録は合計で13ページつまりは1013名もの人材がこの愚かな妄執に費やされたという事、11人目まで何も変わらない先ほどと同じく第二段階に耐えられないか、第一段階で限界を迎えたかのどちらかだ、しかし12人目は私の良く知る人が記載されていた。被検体1012番そこに写っている姿と名前は紛れも無く、サチアそのものだった。『第一段階の成功、得た特異性は聴力の異常発達。第二段階の成功、持ちえた特殊能力は不明、しかしこの実験が始まって以来の実験の適合者』という事だけが示されている。そしてここまで来てしまえば最後のページが誰かはもう理解できてしまう、ページを捲るとそこに写るのは紛れもなくミライだった『第一段階の成功、得た特異性は視力の異常発達。第二段階の成功、持ちえた特殊能力は推測ではあるが未来視に準じるモノ』その文章を見て、明智は笑ってしまった。
「ここまでのリソースを割いて成功したのが、聴力と視力の発達と未来視の様なモノだって?馬鹿馬鹿しい、そんな事の為に彼女らは生きてきた訳ではない!」
明智の声が狭い一室に反響する、その反響を通じてか、はたまた資料に全て目を通した事を教授が知ってか、閉まっていた先の扉が開く。その先は一本道の通路、横に入れる部屋はあるものの、そこには一切価値は無いだろう、この最奥に教授は待つ私はそう考える。
「教授聞こえているか?私はこの資料に目を通したぞ、なんだこの無駄な研究の成果は」
明智は怒りにも似た感情を覚え、悪魔の証明を完遂した事だけは褒めてやる、だが証明で得た物はゴミより価値が無い。八つ当たりの如く私を監視している教授に話しかける。
『言ったはずですよ、貴方が目に通すのはこの世界の闇だと』機械音声の様な声が通路を反響し、更なる言葉が私を苛立たせる。『この世界はとても不平等だと思いませんか?』
「不平等?まさか君達は報われない自分達に社会的地位を与えられたいという、ある種の平等を求めて行動しているのかい?それならやり方を間違っているぞ、君達のやり方では迫害が更に酷くなるだけだろうさ」
『私は、私が迫害を受けようが、極刑を言い渡され言ようが構いません、私はただ貴方という世界の宝をつまらない鳥籠に閉じ込める世界に、貴方が堂々と自分の研究を発表できる平等を求めているだけです』
まさに推している人間の事を考えず、自分がこうあってほしいという理想を押し付けようとしてくる厄介なファンに変わりない、だからこそ私は苛立たしい、私という偶像のファンを生んでしまった私自身の稚拙さを、私自身を隠せなかった未熟さが。
「良い事を教えてあげよう、私はね。世界は不平等であるべきだと考えているのさ、私が望むのは公平な世界だ、誰しもが公平な世界を私は作る事が、私の目標なんだよ」
『公平と平等そこに違いはありますか?平等な世界と公平な世界どちらも達成できれば、幸せな世界でしょう?』
「いーや違うね、平等というのは強者が弱者に合わせる世界だ、そして公平というのは弱者を強者に合わせる世界だ、合わせる方向が違うだけで全く意味は変わるのさ、みにくいアヒルの子は、自身が白鳥という美しい生き物である事を知り幸せに至る物語、平等とはこのアヒルの子にアヒルのまま生を終えさせる行為だ、例え白鳥だったとしても、アヒルとして生を受けたのならば、他のアヒルと違うとしても、アヒルとして平等と扱われなければならない。そんな世界私はごめんだね、私はマッチ売りの少女に、年の瀬の夜に慌ただしい人間と同じだけの暮らしをできるように援助する、それが私の目指す世界だよ!」
『それだけの世界を造れたとしても、そこに貴方の名前が残らないんじゃ……なに…』
教授の声が震えているように感じた、私の名前が残らない事の何が問題なのか、私にはわからない、名前を残すという事にそこまでの価値なんてないだろうに。
「もう喋るな、君の底は見えた。君は私のファンだと言ったな、それならば考えなかったのか?私が名前なんて物になんの価値も抱いていない事に、それもわからず君は私のファンを名乗っていたのか?呆れるな」
『うるさい…うるさい…うるさい…』本当の事を言われて反論できないんじゃまるで年端も行かぬ子供だ、知識と術を持っていたとしても学者として三流で、本当に不愉快だ。
「首相暗殺も、リアルという青年を使ってキャップの勧誘をしたのも君の立案だと思ったが、この様子では期待外れだな、そこで喚いていろ、今すぐ殺しに行ってやる」
私の愛する人達を危険に晒したそれだけで、私が貴様を殺すだけの理由にはなる。
最奥の扉を開くと、そこには年端も行かない少女のような姿をした女性が居た、最後のヒステリックを見るに教授という人間が女性だと確信を持っていたが、私より幼い少女が私の目の前に立つ、これでは年齢的にこちらがモリアーティ教授で、あっちがホームズとも思いたくなるが、服装までいれて判断するのであれば、やはりこちらがホームズであちらがモリアーティ教授だろう。そして終わらせる為の物語は外野の声でまだ歩みを進める。
しかしどこまで行っても幼い少女だ、ブロンドの髪に青い瞳、背丈は似ても似つかないがキャップ女性版と言った所かと、明智は観察する。正直言うと私好みの女性ではある、そのヒステリーも含めて私は彼女を愛せるだろう、けれども少し残念な事があるとすれば、彼女が画面越しで、私の愛する人を人質に取っている事。それだけで先ほどまでの考えは消え失せた。私は、私の愛する人が、傷つくのが一番堪えられない。
「死ぬ用意はできていると考えていいかな?」
「貴方こそ、この姿に油断していない?私は仮にもアベンジャーズの幹部、貴方を殺す算段も考えてきている」機械音声を通さない教授の声が、私の耳をつんざく。
「君がアベンジャーズの幹部なら、私は5課の頭脳担当だ、よろしく頼むよ!」
言葉を言い放ち終わったと同時に明智は、袖に隠していた短刀を彼女の頭に目掛け投げる、これで殺せるとは思ってはいないが、牽制の一つぐらいにはなる筈だ。
「舐めないでもらえる?」
教授に短刀が届く前に、教授の姿が一瞬消えたと思ったら、私のすぐ目の前に居る。手には刃物間違いなく、この距離から防ぐことは不可能だろう、ならば明智というこの身を持って、その斬撃を甘んじて受けよう、ファンから貢金だと思えば悪くも無い。
けれどそれは君の死を確定付ける一手にもなる、こちらが見せたのは袖から取り出した短刀一本のみ、私は牽制として手の内を明かした、けれど教授、君はその牽制にその他一切の考えも無しに、私の命を奪おうとした…、それこそが君の敗因だ。
「サチアが言っていた、殺し合いと言うのは数秒で終わる、終わらないのは物語の中だけで、相手の死を確認せずに、勝利の余悦に酔う物が決まって死ぬと」
明智の体から、間違いなく軽傷では済まないであろう、傷と鮮血が流れ落ちる。このまま長引けば私の負けだが、そこには私の言った事も耳には届かず、ただ覚悟を決めさせられて、愛しい偶像に手を掛けた事を自らの中で正当化しようと必死な少女だけだ。
ならば私に一手余裕が生まれる、さっさと終わらせる為に服の内部に仕掛けた銃を発砲した。貫通力こそ無いが、この距離ならば内臓をズタズタにする位の威力はある。
「あっ…ああ……」
「最後に言いたい事があったんだ…、恐らく最初で最後の私のファンに…」
教授は多量の油汗を流しながら、なんとか私の顔を見る為に、跪き地面を見ていた顔を上に向ける、別に顔をこちらに向ける必要は無かったというのに。
「喋る必要は無い……ただの……自分語りだ」傷が痛む、血が抜ける、少し意識が遠のく。
一つだけ彼女に伝えるべき事がある。もう少しだけ私をしっかり調べていれば、彼女は私の傍に居られたという事を伝えるだけだ、私という存在がこの世界をどう思っているか。
「もう少し調べていれば…君は私の傍に居られたよ…恋人にもなれたかも知れない…私はね、この世界が大嫌いだ、だからこの世界を自分の思い通りに変えてやりたい、私がまだ君達の様な犯罪者になるものを予測して裁く機能を作っていないのは、第一に裁かれるのはこの世をいつか絶対に壊すと考えている、私だと知っているからだ。私の恩師を…私に真摯に寄り添い…私を唯一理解してくれた人を殺した世界の為に殺した、この世界を私は絶対に許さない、私のお蔭で今の生活がある…私のお蔭で今の平和がある…あの人の死のお蔭でこの世界はこの形を取っている、私はある意味で君達と同じ立場だ…けれど今はあの人が私を理解し愛してくれた様に…私も愛し理解した人達の為に自分を捨てた」
世界に対しての憎しみが増し、私の瞳から多量の涙が零れ落ちる。
「そう……だったんです…ね……」こちらに微笑み教授は目を瞑る。
「これが、私が誰にも理解させる気のない…、私を動かす行動理念だ…満足して死ね」
左手に持つピストルで教授の眉間を撃ち抜く、最後の表情はきっと至上の喜びだったのだろう、憧れの人を初めて理解出来たというファンとして喜びだった。
「死んだら、私の恩師と会ってくると良い、あの人に私を聞けばどれだけ、私がこの世界が好きだったか…、そしてどれだけ何故これだけ世界を憎んでいるか…それが君でも解る」
頭から血を流す教授を後目に、教授の後ろにある装置でこの施設の電波暗室化を強引に切断する。この手の装置を簡略化して売ったのはあの人が死ぬ前だ、何時かはこの規模レベルでこのような事も出来る様にしているだろうと、読んではいたがこういう使い方をされるとは思っていなかった。公平な世界を夢見てバラまいた知識は、結局的には私の想い等理解せずに私の愛している人を傷つける。いやはや公平など諦めて正解だった、
無線が繋がり、私はただ一つ気になる事を確認する。
「生きているかい?」
『生きているわよ』『生きてますぅ―』
それだけの口が利ければ満足だ、そちらで何があったかは知る由も無いが、その様子では大した事は無かったのだろう。ならば私達がやるべき事はただ一つだった。
「帰ろうか」
この世界で私の弱みを知り、理解したのはあの人と、君だけだ満足だろう?
硝煙の匂いと、床に広がる赤い絨毯の事は気にもかけず、明智は入ってきた扉を開き、そして閉める、そこではまるで何もなかったように。
誰がなんと評そうと、世界は私が世界を豊かにするべく、活動するそんな馬鹿な世界をどうしようなく愛している人間と、理解した気になる。
私の事など誰も理解できない、理解できるのは私が愛した人でも無く、私に崇拝した物でも無く、知という暴力を振りかざす事しか出来なかった私をどこまでも…、親よりも愛し接してくれたあの人と私だけが理解できればそれでいい。
床に広がり続ける赤い絨毯が、誰かが流した水滴の数々を飲み込めば、ここには何も残らない…。
ここまで読んで頂きありがとうございます!