第2話
「おいおい。子供に向かってオバケだなんて、さすがに失礼じゃないか?」
テンションの上がった彼女を落ち着かせる意味で、努めて冷静に対応する。
「夏だからなあ。特に子供なら、日焼けも普通だろう?」
俺が小さい頃とは時代も変わってきたが、ここは田舎なのだ。家でネットやゲームに夢中になるより、外で元気に遊ぶ子供たちも多いはず。
しかし彼女は、大袈裟なくらいにブンブン首を振って、俺の言葉を強く否定した。
「違うの、そういう真っ黒じゃないの。もっと影みたいな感じ。うん、そう、影って言葉がピッタリ……。 いや『影』というより『陰』かな? 厳密には黒一色じゃなかったし」
「よくわからないけど、だったら陰になってたんだろう? ほら、暗い夜なんだから、そう見えて当たり前……」
「田舎が都会より真っ暗なのは、私もわかってる。でもね、今日は花火があったでしょう? 花火で照らされても、影みたいに黒かったのよ!」
確かに、真里がトイレに行っている間も、まだ花火大会は続いていた。ならば……。
「しかもね、二人とも全体的に黒いのに、体を取り巻くみたいに、すぐ周りだけボーッと白く光ってるの! ほら、普通じゃないでしょ?」
この説明で、真里が見た子供たちの正体がわかった気がする。
彼女の頭に優しく手を置いて、俺は微笑みを浮かべた。
「やっぱりオバケ扱いは失礼だったね。真里が見たのはオバケどころか、むしろ神様の類いだ。おやしろわらし様だよ」