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第8話

「にゃー!にゃにゃ!」

 待って!あの子と友達になるよ!


 走る背中にそうさけんだ。

 吉太郎の足が止まる。


 ぼくは言った。

 今日は猫になって、いろんな人の違う顔を見た。

 佐藤さんも、学校とは違う顔があった。

 友達になって、もっと知りたいと思った。


「……ホントかにゃ。うそじゃないにゃ」

 ぼくはコクコクうなずく。


 吉太郎、うれしそう。

「ありがとにゃ。宿題はかえすにゃ」


 そのとたん、なぐられたみたいに目の前がチカチカした。




「いてて……」


 頭をさわって気づいた。


 元に戻ってる!

 ランドセルも、中に宿題も、ある!

「……山口くん?」

 振り返ると佐藤さんが家から出てきたところだった。

「なんでここに?

 あっ、子猫見なかった? 黒ぶちの」

「え? いや……見てないけど」

「そう……」


「佐藤さんって、猫好きなの?」

 うつむいていた佐藤さんが、顔を上げた。


「うん」

「ぼくも」

 吉太郎との約束を思い出して、ぐっとこぶしをにぎった。


「ぼくも、猫好きなんだ」

 ぱあっ、と佐藤さんの顔が明るくなる。

「ほんと?」


「よかったら友達になる? 

 もしよかったら、だけど」

 佐藤さんはびっくりして、でもすぐ笑顔になった。さっき助けてくれたときも笑ってくれたけど、今度はなんていうか、大きな花がふわぁって咲いたみたいな、喜びがこっちまで伝わってきそうな笑顔だった。


「私も、友達になりたいって思ってたの。

 でもいつも山口君に話す時、うまく話せなくて、きつい口調になっちゃって。

 そんな私でも……友達になってくれる?」

 そういうことだったのか。


「いいにゃ!」

 ぼくがそう言うと、佐藤さんは首をかたむけた。

「にゃ?」

 

「ううん、なんでもない」

 ぼくはにっこり笑った。



 それから、佐藤さんとまた会う約束をした。

 人間に戻ったらまた違う世界に来たみたい。

 今年の夏は面白くなりそう。

 ワクワクする。



「ただいまー!」


 スキップしてたどり着いた、ぼくの家。

 お母さんが待っている家。

 ぼくがドアを開けると、カレーのいいにおいが鼻をくすぐった。


 戻ってこられてよかったなぁ!

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