第7話
佐藤さんだ。お皿を持ってきている。
ここ、佐藤さんの家だったんだ。
驚きとともに、頭に学校で言われたセリフがよみがえった。
――当たり前じゃない、私いつもそうしてるわ。
佐藤さんのすました口調。頭が良くて、でも言い方がきつくて。
そんな子と、友達に?
「にゃだ!」
とっさに言っちゃった。
「にゃにゃにゃ! にゃーにゃにゃにゃ! 」
無理だよ、あんな子!
だいたい僕なんか嫌われてるに決まってる。
吉太郎は引かなかった。
「あの子はいつも優しいにゃ。こないだ『山口くんと友達になりたいのに上手く話せない』っておれに言ってきたにゃ!」
「にゃ?」
え?そんな風に思ってたの?佐藤さんが?
「……にゃ!」
それより、やっと追いついたんだ。
宿題をかえせ!
「やだにゃ」
落ち着いた態度にむかむかして、ぼくは吉太郎に飛びかかった。吉太郎はうまいこと逃げて、木の上に登る。ぼくも続く。
取り返してやる!
でも、そこまでだった。
吉太郎はすばやく木からおりた。ぼくは登ったはいいけど下りられない。
困っていると佐藤さんが走ってきて両手を広げてくれて。
「猫ちゃん、受け止めるよ!」
まっすぐな佐藤さんの目。
真剣で、「信じて!」って全身で言ってる。
ぼくは……ためらったけど佐藤さんに向かってジャンプした。
キャッチ!
「大丈夫?びっくりしたね」
佐藤さんがほっとしたように笑う。ぼくが飛び込んだいきおいで芝生に座ってしまったけど、そんなこと気にしていない、優しい笑顔。
こんな顔、学校で見たことない。
ぼくはちょっと見とれてしまった。
「ケガしてないかな」
体をさわられてくすぐったい。
思わず動くと、吉太郎が逃げるのが見えた。
「あ!猫ちゃん!」
佐藤さんの腕をするりと抜け出して追いかける。