第1話
楽しんでいただけたら嬉しいです(*^^*)
「かえして! かえしてよ!!」
ぼくの声なんか聞こえやしない、って感じで真っ白な猫が通学路を走っていく。
二本足で、ぼくの宿題を持って。
ぼくはひっしで追いかける。
明日から夏休み!
ぼくは朝顔の鉢も、引き出しの中の荷物も持ち帰って、今日は軽い荷物ですむはずだった。
いつも長い休み前はうんうん言いながらたくさんの荷物を持って帰る。イヤだなーと思ってたらこのあいだ、いい考えが浮かんだ。
まとめてじゃなくて、ちょっとずつ運べばいいんだ!
隣の席の木村君にも話したら「いいな!おれもやる!」と言われた。おまけの話だけど、ぼくは家ではぼくって言うけど学校では「おれ」って言う。木村君もそう。「おれ」って言うと強くなった気がする。
「健太、天才じゃん?」と言われて浮かれてたら、後ろの席の佐藤さんに「当たり前じゃない、私いつもそうしてるわ」なんて言うから気分がしらけた。佐藤さんはいつも頭いいですって感じですましてる。実際頭良くてテストで勝てたことがない。
でも、そんな言い方しなくてもいいのにな。
とにかく。
終業式は身軽なはずで、うきうきしてたんだけど帰る前に先生が宿題をまとめて渡してきた。バラバラに渡すとなくす子がいるからまとめたんだって。チェックシートまである。
うげー。
軽いけど気が重い。
そんで、帰り道で木村君と文句言いながらいつもの角で別れたらすぐ、なにかがぶつかってきた。
「わっ!」
ランドセルが地面に転がって中身がちらばる。ぼくはあわてて教科書を拾おうとして、宿題を取り上げる猫の手に気づいた。
しかも二本足で立っている!ギョッとした。
で、今追いかけてるってわけ。