表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神の守人  作者: 蘇 陶華
34/47

あなたを倒して強くなる。

自分を大事にしてくれた周りの人達がいなくなるのなら、僕の存在価値などない。僕が、選ばれたのなら、この力を手放さない。周りの人のために。

僕に剣で襲い掛かる市神は、迷いがなかった。いつも、神々しい姿で、患者を救う姿は、そこには、なくて。紛れもなく迦桜羅の後継者の姿だった。誰が見ても、僕は、偽物の姿だったろう。だけで、どうだ?僕は、ここで、負ける訳には行かなかった。容赦なく市神は、僕と鉢を襲い、剣を振りかざす。空を舞うカラスは、増え、その気配を察し、地獄の犬が、集まり始め、遠吠えを始めた。僕が、迦桜羅と縁を結び、力を返却しても、この姿があるのなら、意味があるはず。僕の中の血が、迦桜羅の遺伝子と結びつき、血がたぎるのなら、本当の僕の姿がそこにあるのなら。僕は、八を抱え、空に舞い、市神との応戦をした。血を流す事は、選びたくない。けど、彼は、容赦ない。

「いい加減、落ちたらどうだ?」

市神は、手を緩めず、叫んだ。

「もう、何もないだろう」

何もない訳ではない。

「八宮は、時間がないんだ。私に、全てを任せろ!」

市神は、全てを把握すれば、八を救うという。

「信用できない!」

「あの、看護師は、仕方がなかったんだ。今までの事を考えると、消えて当然だろう」

沙羅が消えて当然?今は、八までもが、いなくなろうとしている。全てを無くした僕の存在価値があるのか?

「私に任せろ」

「任せる為には、蓮の命を断て!との事ですか?」

八が、僕の腕の中から叫んだ。

「そうだ。そうすれば、私が、全て元通りにする」

「そんな。。。信じろと?」

八は、笑った。市神は、本気で、僕を殺そうとしてる。八を抱え、空を逃げながら、応戦するのは、不利だった。

「蓮。。俺を離せ」

八が、僕の腕を振り解こうと、身を動かした。

「もう、戻らないとだ。本当に、バランスが崩れてしまう」

地獄の犬やカラス、得体の知れない生き物達が、それを埋めていている。八を追いかけ、姿を現した者達。市神の信徒達が、押し掛け、異様な空気に包まれている。市神が、何度も、剣を振りかざすのを避けている中で、僕は、ほんの少し、バランスを崩してしまった。

「足を引っ張って、ごめんな」

その時、八は、僕の腕を振り解き、空へと身を躍り出した。

「やめろ!」

背後にいる市神が、剣を振り下ろす中、僕は、背中を向けてしまった。

「蓮!」

落ちていく八の目が、大きく見開かれたのが、わかった。鈍い音がして、背中ない熱いものが走った。僕は、落ちていく八を、掬い上げようと手を差し出したまま、周りが、真っ赤に染まっていくのが、見えた。僕の血だった。

「八!」

背中を熱く流れる痛みよりも、僕は、八の手を握りしめた事に、安堵した。

「蓮」

何度も、八は、僕の名を呼んでいるのが、わかった。大きく一度目の音が、響いた後、剣は、真っ直ぐ、僕の背中を射抜いた。

「終わった」

市神が安堵する様に呟いたのが、わかった。僕は、八を繋ぎ止めたまま、湖へと落ちていった。


八には、もう、時間がなかった。地獄の犬が、八の魂を食い荒らす。黄泉に戻り、僕は、八を取り戻す。それなのに、僕の体は、湖の底に沈んでしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ