降り立つ2人の迦桜羅
八は、ほんの少しの時間をもらい僕に会いに来てくれていた。長く一緒にいた僕らは、家族以上の存在だったと思う。八がいたから、孤独の中でも、やってこれた。全ての能力を集めて八を戻す為に、市神を倒すつもりだ
僕は、八を何とか、地面の上に下ろすことが出来た。何が、起きたのか、僕は、理解できていないけど、明らかに、迦桜羅は、僕の中に居た。好んで、この異形になった訳ではないけど、自分の周りの人達を、守るには、僕に必要な力だった。決して、美しくはない姿は、見る人を不快にさせると思う。降り立つ湖畔の水面に映る僕は、半身が獣神の怪鳥に見える。
「ここなら、まだ、誰も来ないと思うよ」
僕は、八を安全と思われる湖畔の中央の浮島に、座らせた。空に満ちていた真っ黒なカラスの一群は、今、静まり返っている。
「蓮。。俺はさ。。」
八が悲しそうに言った。
「あまり、時間がないんだよ」
わかっている。地獄の犬達は、逃げ出して八を追いかけ、地上に現れた。すぐ、この場所も、かぎつけ、八は、引き戻されてしまうだろう。
「お前に、最後に会うために来た。沙羅も、願っている。お前だけでも、逃げるんだ。犠牲になる事はない」
「犠牲なんて、思っていない。八、何を言うんだ?巻き込んだのは、俺なのに」
「誰にも、知られないように、生きて来たんだろう?そもそも、俺が原因だったんだから」
八は、何かを言いそうになったが、そのまま、口をつぐんだ。空の様子が、次第に変わっていくのがわかった。空気が、変わっていくのが、わかる。空気時体が、静電気を帯びて来ている。
「蓮。俺に何があっても、後悔するな」
「どおいう事?」
八は、僕の唇にそっと、自分の唇を重ねた。
「早く行けよ」
そう言うと僕の、胸を押した。空は、次第に暗くなり、たくさんのカラスで、満ち溢れていた。何処から、こんなにカラスが集まって来たのかと、僕は、みあっげていた。ふと、カラスの群れが、一本の道筋を開け始めた。空の端が、次第に明るくなって行き、空を舞う大きな鳥の姿が、見え始めた。
「嘘だろう?」
僕は、言った。次第に大きくなるその影は、僕と同じ、迦桜羅の姿をしていた。市神だった。
「蓮!早く逃げろ」
八は、僕の胸を何度も押した。が、僕は、動かなかった。いつかは、やらなくては行けない事。市神が、正式な迦桜羅の後継者だとしても、今の僕には、この力が必要なのだ。彼と、どちらが、上なのか、決めなくては行けない。影は、次第に大きくなり、僕と八のいる浮島に降り立った。
「ここにいるのは、すぐ、わかったよ」
市神も、同じ半身っが、獣神になっている。僕と鏡映りの姿をしていた。
「同じ体だからな」
市神は、苦々しく笑った。
「全部、私に返してくれたのかと思っていたが」
「そのつもりだったけどね」
僕は、ゆっくりと八の手を取った。八を安全な場所に移したい。
「君の弱みは、どうやら、彼らしいけど、もう、彼は、この世に居れないのでは?」
腕組みしながら、見下ろしている。
「戻れるさ」
「ほう」
市神は、笑った。
「頼みの綱の、看護師は、消え去ったと聞いたが」
沙羅は、消滅してしまった。僕は、八も、沙羅も失うのか。
「そうは、ならない」
方法はある。
「ふむ。だとしても、私と同じ獣神は、必要はない」
僕は、笑った。
「今、何が、起きているのか、わかっているのか?獣神は、俺達だけではない。あちこちで、神とやらが、産まれ始まってるのを、知らない訳がないだろう?」
三界がバランスを失い接近しすぎている。
「だとしても、私の様なスタイルは、1人で十分だと思うよ」
市神は、手の中に細長い剣を召喚していた。
「どう見ても、私が上の様だね」
そう言うと市神は、剣を手に躍りかかってきた。
紗羅の力が、どうしても欲しい。彼女は、本当に消えてしまったのか?迦桜羅の力を全て、手に入れ、彼女を探しに行かなくては。




