当たり前の奇蹟があるならば
初ケータイ小説になりますが…あれですね、恋かぁとただただため息が、今ときめいてねぇよ…(←)なんて言ってしまいましたがこの作品にお目を通して頂き僅かにも心の奥で何かを感じて頂けたら幸いと思っております。悪しからず。
終わりは余りにも早くて理解するのに1週間かかった、それが同じクラスの人だからこそ毎日顔を合わす事がかなり気まずい。
「ナオー?また眉間にシワ寄ってるよ?」
指で私の眉間を突っついたのは幼なじみだ。
「アイはいつもにこにこ…にこにこにこにこ…!出来るかぁぁあ!!」
机をぶん投げて思い切り窓ガラスを割りたい気分だったが学校の備品を壊したら弁償だろうなと思いやめた、叫んでもいない、彼がこちらを見ていたから。
「もう忘れなよアイツの事なんて…♪あっ合コンやろうよ!」
「合コン〜?」
「そ、合コン」
にこにことアイは言う、はっきり言って乗り気ではない…まだ別れて1週間…いやもう1週間…どちらにしても彼が私の心から消えていない事には変わりはない。
アイの姉は2個上の大学生で2人は仲が良い、便乗してかお姉さんは私にも優しい。
「ナオちゃん?傷付いた心を癒すのは新しい恋よ!!…たぶん」
「たぶんて…」
「まぁさ〜今日の合コンはってかもう飲み会よ、私の友達ばかりだし?気兼ね無く楽しんで?お酒はダメよ?一口でも飲んだらぶっ叩くから♪」
にこにこと恐い事を言うがその笑顔はやっぱりアイに似ていて親しみがある。
「ねぇナオ〜あの人カッコ良くない?」気のせいかとろんとした瞳でありふれた言葉を吐くアイを私は横目で見ながら視線の先を見つめた、着崩した服装にハットを被ったお洒落さんといった人で煙草を吸う仕草がやけに似合う、確かにモテそうである。
「うーん…私は…別に」
「えぇ〜…ナオのタイプかなぁ〜って思ったのに」
「うんまぁ…好きじゃないって言ったら嘘になるかな」
「なら行きなよ…今日はナオの為にここ連れて来たんだから」
「でも、アイ…」「分かってるよ、まだ忘れられないってのは一番近くで見てきたんだから…でもね、いつまでも俯いてるナオなんて見たくないから」
「優しいね、大好きだよアイちゃん」
ぎゅっと抱き付くとアイは真っ赤になって驚いている、それが何だか可愛く見えた。
「もうナオ!やめて恥ずかしいからぁ…!」
「あ〜あアイと付き合いたいよーマジで…」
「じょ、冗談言うな!」グイッと肩を押し退けられて私は真面目な顔をするアイを見た。
「アイ…?」
「…冗談は…冗談は…顔だけにしろーい!!」
どーんと突き飛ばされてフンッと鼻を鳴らすアイはきょとんとする私を見てまた直ぐにこにこした。
次の日私は放課後呼び出された、呼び出し人は別れた彼である。
屋上に行くとオレンジ色に染まる景色の中手摺に寄りかかりじーっと空を見つめていた、他の男の子とは違う不思議なオーラを持つそんな彼が好きで仕方ない、その気持ちはまだ私の胸の中でモヤモヤと右往左往しながら何処へも行けず漂っている。
「よう…久しぶり…?教室では会うか…てか話すのは1週間ぶり、か」
「うん…」
「呼んだのはさ、えっと…」
口ごもりながら頭を掻く仕草を見せ、彼は目を泳がせる、私は緊張して喉を小さく鳴らし瞬きを繰り返した。
「…俺さ、今別の奴と付き合い始めた」
「…えっあぁー…ええっ!?早っ!!!おめでとう!」
咄嗟にそんな言葉が出た、自分でもどうしてなのかは分からなかった、目をぱちくりさせていると彼はぷっと吹き出しお腹を押さえて笑っている。
「…面白いなお前は」
「う、うるさい!」
「付き合った彼女には悪いけど、本当はまだナオの事が忘れられない…」
「最低じゃんそんなの…」
「分かってるよ、だから忘れようと必死なんだ…」
「…その子の為にも早く忘れてよ私の事なんか…」
「…うん、ごめん」
「謝んないでよ…私は…私はまだ…」
ふいにアイの顔が浮かんだ、何故だか分からないけど、その後に思った、もしも私が飲み会の時にあの男の人の所へ行って付き合うなんて事が…、もしもの事だがそうなったら人の事言えないんじゃないか、と、彼が忘れようとしたのと同じ事をしていたかもしれない。
人の事言えないじゃん。
「ナオ、俺はずっと嫉妬してたんだ…」
「え、誰に?」
「鈍感だな、だからいつもベタベタして、お前には俺がいるのに…俺がどんな気持ちでいたのか知らなかったろ?」
「え、うん…そうかも…」
現に今彼が何を言っているのか皆目見当が付かない。
「アイはナオが好きなんだよ、見てて分かる…俺に遠慮してるのも分かった、でもナオ、お前はアイの気持ちにも気付いてない」
彼の目は見たことないくらい真剣だった、私に告白した日よりも。
「アイが?」
「あいつも男だろ、ただの幼なじみって思ってんのはお前だけだ…」
「アイはアイだもん、ずっとそれは変わらないもん」
「だったら言ってやれよ!あいつがもしかしたら一番傷付いてんじゃねぇのか!?…って何で俺が…こんな事言わなきゃなんねぇんだよ、あームカつくなぁ!俺はまだお前が好きなんだよ!…あームカつく!!」
頭を押さえわしゃわしゃっと掻きむしる、私は何だか腑に落ちず悶々としていた、アイが本当に私を好きだとしてもどうしたらいいのか…。
答えなんて直ぐ見つからない。
「…言いたかったのはそれだけだから、お前早く行け」
「どこ…に…?」
「アイの所だよ、他にどこ行くんだよ…まぁ俺の所でもいいけど?…なーんて」
ははっと彼は空笑いして私を見つめた、さっきまでの私なら飛び付いたかもしれない、なのに出来なかった確実に迷いが生じたのだ。
「今までも一緒だったんだからこれからも一緒でいいんじゃないか?」
「だけど…」
「だけどじゃねぇよ、さっさと俺を1人にしてくれ…フラれたんだから、でも諦めないけど…」
目を反らして彼は呟くように言った、何も言えない、もどかしさだけが私を包み込んでいた、それから背中を向ける彼を見て私は屋上を後にした。
階段を下りるとアイが恐い顔をしていた、でも私に気付くとにこにこした、それが何故か悲しく見えて私は泣きそうだった。
「ナオ、帰ろう?」
「うん…」
「帰りにアイスでも買って帰る?」
「うん…」
「どうしたの?大丈夫?アイツに何かされた…?」
「ねぇ…」
アイを見上げて私は言葉を止めた、私が好きなの?そう聞いてアイは何て言うのだろうか。
「僕はナオが好きだよ」
いつかもしもそんな事を言われたら私はどうするんだろうかとアイを見つめていると1つだけ気付いた、首を傾げて私を見つめるアイが昨日とは違う人に見えたのだ。
【完】
ありがとうございました!!