036「俺はきちんと送り届けた」
「……お説教、辛かった」
「今日は特に長かったですからね。でも、仕方ないですよリアちゃん……護衛も付けずに街へ出たわたくしたちが悪いのですし」
「……そうだけど、長いのは辛い」
「ヴィル様がいて下さればもう少し短かったかもしれないですが、メイドたちが出て来る前に帰ってしまわれましたし」
「……お礼がちゃんと出来なかった」
「ヴィル様は遠慮していましたけど。わたくし達の命の恩人ですし、レーラ様のお店まで案内もしてくださいましたし……何かの形でお礼はきちんとしたいですよね」
「……明日叔父様に話してみる?」
「そうですね、お父様にお話しをしてみましょうか」
「……ん、なら明日叔父様の仕事の合間に話に行こう」
「でも、リアちゃん。その恰好でベッドに横にならないで下さい。ゴロゴロしたら下着が見えてしまいますよ?」
「……シャリスしかいないから別に見えても平気」
「そういうことではなくてですね。わたくし達は貴族ですし、普段から気を付けてないと」
「……そうだけど、面倒」
「もっと言えば、わたくし達は女神様から加護を授けられたのですから。しっかりとした姿を見せないと、他の貴族たちに付け入る隙を与える事になってしまいますし。リアちゃんも、言質を取られたりして変な人と婚約させられたくはないでしょ?」
「……私、結婚とか興味ない」
「興味が無くても望んでなくても貴族である以上は独身ではいられませんよ?」
「……わかってる。でも、興味が持てない」
「わたくしたちはまだ婚約者もいませんし、加護を得られたから婚約者が決まるまでもう少しだけ時間はあるとは思いますけど」
「……そういえば」
「はい?」
「……薬ちゃんと渡した?」
「ええ、あの子の世話役に渡しましたから大丈夫ですよ」
「……うん、なら良かった」
「………………………もしかして、わたくしが渡すのを忘れていたと思ってました?」
「……シャリスは時々抜けてるから」
「リアちゃん、どういう意味です?」
「……ヴィルが男の子だってことも気づいてなかったし」
「あ、あれはどう見ても女の子にしか見えませんでしたわ!!」
「……そう?」
「むしろ、何でリアちゃんはわかったのです?ヴィル様だって驚いてましたよ??」
「……普段からよく見てる顔だからわかるよ」
「はい?」
「……何でもない」
「まぁ、いいですわ。さて、そろそろ部屋に戻りますね」
「……もう寝るの?」
「今日は色々ありすぎて疲れましたし、明日もやることは多いですからね」
「……明日も何かあるの?」
「午後からですが、教会への挨拶がありますよ?」
「……なら、朝はゆっくり起きれる」
「リアちゃん、朝が苦手なのは知ってますが。せめて朝食までには起きてくださいね?」
「……努力はする」
「努力じゃなくてきちんと起きて欲しいのですけど」
「……努力はするから」
「まぁ、いいですわ。おやすみなさいリアちゃん、よい夢を」
「……うん、おやすみシャリス」