022「異世界の自営業-4」
ある日ー森の中ークマさんにー出会ったー。
「…………………………………」
依頼された薬草も揃え、ユニークスキルの訓練を終わらせたのでそろそろ街へ帰ろうかと森の中を歩いていたら魔物に遭遇した。
「…………………………………」
魔力の節約にユニークスキルの探知魔法を使わずに自分の経験と勘だけで魔物を避けて帰ろうとした結果がこれなので、まだまだ未熟すぎて嫌になる。
「…………………………………」
遭遇したのは体長2mくらいの薄い緑色の体毛をした熊みたい魔物、たしかリーフベアーとかグリーンベアーって呼ばれている種類だったはず。
「…………………………………」
雑食だけど主食は木の実とか茸を食べている自然派？なクマさんで、こちらから攻撃したり縄張りを極端に荒らしたりしなければ襲ってはこないという比較的温厚な性格をしていると聞いたことがある。
「…………………………………」
そんな優しい性格をしているらしい薄緑色のクマさんと見つめあう。
俺だけでなく、クマさんも予期せぬ遭遇だったらしく固まってこちらを見ている。
「…………………………………」
俺から攻撃する気はないし、早く帰りたいからどっか行ってくれないかな？
「…………………………………」
願いが通じたのかクマさんは俺から視線を外してのそのそと歩いて行ってくれたので、ある程度距離が離れるまで待ってから俺も移動しようと思ったらクマさんは反転して俺に向かって走ってきた。
「そういうフェイントはいらないから！襲うなら素直に最初から襲ってこいよ！！」
わざわざ一回離れてから助走付けて突進してくるんだよ、面倒くさいクマさんだな。
クマさんは結構いい速度を出してこっちに走って来ているけど、距離が空いていたので対処を考える時間はある。
逃げる？却下、森の中でクマさんと競争したら俺が間違いなく負ける。
ユニークスキルを使って迎撃する？使えば対処は楽だけど、問題なく使えるほど魔力が回復しきってないしから却下。
「となると、ナイフと魔法で迎撃するしかないんだけど」
俺の腕力だとナイフで致命傷を与えるのは難しいし、ナイフが当たるより前に殴られるか爪で切り裂かれる方が早そうだし、クマさんと接近戦なんぞして勝てる気がしない。
魔法を使っても逃げるのは無理そうだし、クマさんとわざわざ正面からまともに戦う必要なんかないから適当にやろう。
魔物と正面から戦う必要は無い、そういうのは戦う事が大好きな中毒者がやればいい。
冒険者なら魔物とは戦わずに狩りをすればいい、使える物は何でも使え。
走ってくるクマさんを避けながらナイフを抜いて魔法を使う準備をする。
森の中なら木を利用すれば正面に立たたなくていいし、相手に攻撃されないよう立ち回ればいい。
さて、森の中だから火の魔法は使えないし、水の魔法はここでは水を集めるまでに時間がかかるし、狩るとなれば出来れば素材が欲しいから周囲と一緒に消し飛ばす恐れがある調整がまだ出来ない光や闇の魔法も使えない。
「土の魔法で足を止めさせてから攻撃でもいいけど、そこまで器用にまだ出来ないから風の魔法を使うしかないか」
木々を目隠しにして何度も方向を変え走ってくるクマさんをやり過ごしながら魔力を大気に通して風を捕まえて圧縮していく。
イメージは空気の砲弾、捕まえた風を魔力で包んで丸く大砲の弾のように圧縮する。
「そこっ！！」
方向転換しようと速度が落ちたクマさんに向けて圧縮した空気の砲弾を放つ、頭を狙っても外した時が怖いから狙うのは胴体の真ん中、これなら多少ズレても何処かには当たる。
クマさんは圧縮された空気の砲弾が見えたのか、それとも野生の勘なのか回避しようとしたけどこっちの攻撃のが速く腰の辺りに命中しクマさんは声を上げ崩れ落ちる。
結構威力があったのか、それともいい位置に当たったのか必死でじたばたと起き上がろうとするクマさんの正面に立ち風を槍の形に圧縮して放つ。
数は5つ、放つときに槍が回転するようにする。螺旋の動きは貫通力が上がるってドリルが言っていた。
2つは外れ、1つはじたばたしている腕に当たり、残りの2本は頭と右眼に命中した。
「………………………死んだかな？」
槍が当たり悲痛な叫びを上げたクマさんは痙攣したあとに動かなくなった。
「頭に当たった方はそこまで深く刺さらなかったぽいけど、眼のに当たった方が脳まで届いてくれたのかな？」
念の為に小さく圧縮した風の弾をぶつけるが、ぴくりとも動かないので死んでくれたっぽい。
魔力が減って少しだけ身体が怠いけど、クマさんを解体しなきゃならないから幻視の図書館を展開して探知魔法を起動する。
「血の匂いで他の魔物が寄ってくるかもだし、必要な分だけ手早く解体しちゃおう」
解体のやり方もレーラさんや先輩冒険者達に教えてもらっているので、熊は初めてだけど何とかなるはず。
「とりあえず、血抜きからかな…」
クマさんに近付いてナイフを刺して血抜きをし、解体を始める。
しかし、なんで割と温厚な種類のクマさんなのにわざわざ襲って来たんだろ？
