愚かなる男
男は、振り返るのをやめた。
振り返って感じるのが痛みなら
いっそのこと前を向いて進むしか無いと思った。
男は、振り返らず前を向いた。
それでも痛みを感じるのは
昨夜、寝違えたからに違い無かった。
男は、寝違えた首の痛みを抱えたままコンビミニで買い物をした。
税込価格314円の品物をレジの店員に差し出し
315円を渡した。
店員は、「 315円丁度ですね。では1円のお返しです。
ありがとうございました。」と、商品と一円硬貨を
男に渡した。
男は、部屋に戻り国語辞典を取り出し
「 丁度 」の意味を調べた。
[ 丁度]→おりよく かっきり ぴったり 等と
記されていた。
男は、店員がレジに5円硬貨が不足していて
おりよく、その5円が来たので
その言葉を発したのではと
推理した。
男は、自らの推理の後
自分は何故、こんな行動に出たのか?
この推理に何の意味があるのか?と思い巡らし
国語辞典をペラペラとめくってみたが
答えは、辞典のどのページにも
載っていなかった。
寝違えた首の痛みは、未だ消えては無かった。