バレちゃったか
はっと思い出したように
テーブルに駆け寄り漫画を改めて見返してみると、
そのシーンはただ男と男が絡み合うだけの濡れ場だった。
しかも今行ったようなシチュエーションはなく、
兄と弟という設定もない。
「あっ……うぅ、バレちゃったか。仕方ない」
そう零すように言うと、
玉響はソファから身を起こし、
落ちた書物を拾い上げて
全てをテーブルの上に並べた。
「センパイ、これは一体どういうことですか?」
真っ直ぐに見つめると、
彼女は決まりが悪そうに頬を掻いた。
「あははー……
本当はもっと上手くやるつもりだったんだけどね。
あなたがどうしてそれほどまでに
兄を欲するのかが知りたかったのと、
その深層心理を知りたくて
ちょっとした
疑似シチュエーションを試させてもらったよ」
「そう、だったんですか……
結果はどうでしたか?」
「うん、これは推測なんだけど……
あなたは過去に女性にいいように使われて
ポイ捨てされたって言ってたよね。
それと今回の反応を鑑みると、
有心は単に兄が欲しいんじゃなくて、
過去の状況を正当化できるような理由を、
兄捜しに求めてるような気がするね。
異性なら姉が二人もいるのに
頼れなかった自分の正当化、
同性の兄がいなかったから
頼れなかったという責任転嫁……」
有心の顔はみるみる曇っていく。
しかしそれは自分でも気付かない
本心を言い当てられたからではない。
「センパイ、震えてますよ」
仄暗い世界に浮かぶ玉響の目には
じわりと涙が浮かんでいた。
闇の中でも一目で分かる震えと相俟って、
彼女はとてもか弱い少女に見えた。
そこにいつもの覇気も強引さもない。
ただ残るのは有心ではない何かを見て怯え、
両手を握り締める姿と半壊した猫耳の髪だった。




