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お兄ちゃんが欲しいっっ♥  作者: ハイドランジア&シーク
【第五章:君じゃなきゃダメみたい】
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****前世譚のようなもの****(22)玉響サイド


 夕闇色に染まる部屋の中、玉響は物思いに耽っていた。 

  

「はぁ、そっかーついに有心も彼女か~」


 正確にはまだ彼女ができたわけでもないし、

 彼女候補がいるというわけでもない。


 ただ単に彼女候補探しを新たに始めるというだけだ。


 それだけでも心に大打撃を与えたのは

 他でもない有心相手だからだった。


(有心は何も言わなかったけど、

 もうボクらの関係って終わっちゃってるんだよね)


 そう、玉響と有心の関係は

 「有心が兄を手に入れ、玉響がそれを見て楽しむ」

 というだけの協定関係に過ぎなかったのだから。


 有心が理想の兄どころか、

 実の兄を手に入れてしまった

 今では二人を繋ぐものなど何もない。


「最初からこうなるって分かってたつもりなんだけどな~」


 玉響はあの手この手を駆使して、

 清花が有心の実の兄である情報を入手した。


 それを有心に話さなかったのは

 やはり独占欲からであったし、

 何より二人を繋ぐものがほしかったのだ。


 でもそれももう終わり。


 明日からどうしようか。


「この髪型も、

 続けてる意味なくなってきちゃったかなぁ……」


 頭部の猫耳を擦りながらそうぼやいてみる。


 しかしいざやめようと鏡の前で髪を崩してみると、

 なんとも情けなく陰気っぽい女子が映っているだけだ。


(こんなんじゃ人前にも立てない)


 やはり猫耳は継続しようと

 箪笥から愛用のワックスを取り出した。


 このワックスは玉響に

 猫耳ヘアを授けてくれた人からもらったものだった。


 もちろんもらったワックスは

 既に使い切ってしまったけれど、

 空の容器も大事に仕舞ってある。


 なぜならそれは有心と出逢う前の、

 玉響が今の玉響になる

 前世譚のようなものなのだから。


 気を引き締め直して、

 今後の接触方法を考えようとワックスの蓋を開けると

 中身はほぼ空で到底一週間持つほどは残っていない。


 箪笥のストックを確認してみるがそれもない。


「ど、どうしよ、

 有心のことが気掛かりだったせいで買い足してなかったや……」


(下ろした髪で登校するなんてとんでもない)


 もう日も落ち沈んでいたが、

 歯牙にもかけず財布を握り締めて家を飛び出した。





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