****不運****(3)
玉響から脱兎した有心だったが、
その不運はあれだけに留まらなかった。
「クッソ……絶対あのセンパイのせいだー」
二年二組の教室からロッカーへと向かう道すがら、
有心はそんな独り言を呟いていた。
あれから有心は教室に戻って午後の授業を受け、
放課後すぐ草薙に会いに行ったのだが……
『逢坂、俺には気にせずあの子と帰れよ』
『え、いやあの、僕は……』
『分かってるって。
約束した手前、断りづらいんだろ?
そんなことぐらいでへそ曲げたりしないから行ってこいよ』
『…………』
という次第だった。
真面目を装ったのが徒になったらしい。
あまりにも草薙が
真剣に言ってくるので否定すらできなかった。
ちなみに草薙が言いかけていた、
「お」の続きは聞けず仕舞いである。
「許すまじ、鴨野玉響……」
しかも被害はそれだけに留まらない。
保健室から教室に帰ると、
クラスメートから
あの先輩とどうなったんだと詰め寄られた。
一体どういうことだと尋ねてみると、
一部始終を見ていた
二年の生徒から伝播されていったらしい。
迷惑この上ない話だった。
「逢坂くん、あの先輩とどういう関係なの??」
「攻めと受け?」
「付き合ってるの?」
などホモ疑惑は晴れたようだったが、
「やっぱり、逢坂くんって受けだよね」
「うんうん」
「だよねー」
と満場一致の受け認定をされてしまった。




