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4話 一言だけ良いですか。

ふにっ



柔らかい何かが手に当たる



ふにふに



うん。気持ちいい。


手に触れるそれは気持ち良い弾力をしていてその物体へと頬を擦り寄せる。



ふにふにもちもち



その感触があまりにも気持ち良くてその物体に顔を埋める。




「プギャーッ」



断末魔のような声が聞こえた。

ぼんやりとしていた意識も一瞬で叩き起されて驚いて飛び起き目を開ける。



そこは暗闇だった。


違う。これは、誰かに抱き締められているようだ。頭部を抱え込まれ目の前の身体から全身に体温を感じる。

私は、頭を抱え込むその腕にそっと触れた。




「お母様、おはようございます。こんなに抱き締められては潰されそうですわ」



軽口を叩いて腕の中から顔を上げる。

そこには社交界で海の女神の美貌を持つと比喩され続けた女性の疲弊した姿があり私はぎょっとする。



「あ、あの。お母様?どうしてそんなに…その、お疲れに?」



私は当たり障り無い言葉で聞いてみる。

すると、お母様は菫色の眼を大きく見開き安堵したように私へと笑みを浮かべ口を開いた。



「そう。何も、覚えてないのね」

「?」

「いえ、大丈夫よ。貴女は丸三日も眠っていたのよ」



衝撃の告白に驚いて今度は私の眼が大きく見開かれる。


「え、何故…」


三日も。と続くはずの言葉はその後に登場した人物達により阻まれた。


扉が壊れるのでは無いかと思う程の勢いで開かれ四人の男性がなだれ込んで来たからだ。



「ルゥの目が覚めたって本当か!!」

「……よかった」

「私の天使。とても心配したよっ」

「ピッピコがいなければどうなることかと思ったよ」



上からお父様、ラフ兄様、変態(マティ兄様)、グエン兄様の順に口を開く。




………ん?



「グエン兄様、今なんと??」

「ピッピコがいなければどうなることかと思ったよ?」



首を傾げてグエン兄様に問いかけるとグエン兄様も私に釣られて同じ方向に首を傾け問いに答える。疑問符だが。

イケメンの首傾げとか破壊力やばいな。目の保養かよ。ご馳走様です。


って、違う。そうじゃなくて、今。



「……ピッピコって言った?」



ボソッと呟いたつもりだったが近くにいたお母様にはハッキリと聞こえていたようで、



「ずっとそこにいるでしょう?ルゥのピッピコじゃないの?」



と、私が寝ていた枕元を指差す。

そこには、「ぴぃぃ」と小さな呻き声を上げる潰れた丸い物体がいた。




丸い物体は黄色の産毛が生えており渦を巻いた尻尾?のようなものがある。

先の断末魔のような叫び声を上げたのはどうやらこの子のようだ。

どうやら私が寝ている間に寝惚けて頭で押し潰してしまったようだ。悪いことをした…。


それにしても何故このピッピコは私のベッドにいたのだろう。

それに、お母様の発言からしてもウチ(カプレ家)で飼っているピッピコでも無さそうだ。




ピッピコとは姿形が微妙に違う部分もあるが基本的に丸く、ペットとしてこの世界では人気を博している。しかし、このピッピコはただのペットではなく力は弱いがストレンジ持ちで重宝されており値段がそれなりに張る為貴族階級の者達しか手に入れる事が出来ない。

平民でピッピコを飼う場合はストレンジ無しのものか野生のピッピコを捕まえないといけないがストレンジを持たないものが多い平民にストレンジ持ちのピッピコを捕まえるのはほぼ不可能だ。


また、ピッピコにも様々な種類がいて基本は色付きの丸い形で判別が困難なのだが外見に個体性が出るほどストレンジの力が強いとされている。






急に前世を思い出し、三日も寝込んだかと思えばかなりのストレンジ持ちだと思われる飼い主不明のピッピコが起き抜けに現れて………




一言だけ良いですか。





取り敢えず、状況整理をさせろ!!!!!!!





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