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悪役令嬢は王子様を御所望です  作者: 茗裡
第三章 正編
68/75

34話 分散

研究所へと潜入する騎士団と留学生達。

サビーヌの報告からすると、捕虜となっている人達は左の最奥にいるということで西棟を中心に攻めて行った。

中からストレンジを持った者や重武装をして凶器を手にした者達が彼等の前に立ち塞がる。


「フン、小童共が。手応えのない奴等ばかりじゃのう」


総帥が先導して敵をバッタバッタと薙ぎ倒して行くが急に動きが止まった。


「どうされましたか総帥」

「来るなっ!下がれ!!」


中央騎士団の団員が急に立ち止まった総帥に駆け寄ろうとするも、総帥は駆け寄る者達に制止をかける。

次の瞬間


ドゴォォォォン


大きな音と共に総帥の姿は消え、目の前には大きな土壁が現れた。


「HAHAHAHAHAHA。流石私のゴーちゃん三号だ。素晴らし~い威力・DA☆」


上空からの声に全員が顔を上げた。

そこには、土壁と思っていた物体は今目の前にいる傀儡の腕の一部で15mはあるであろう高さの巨大ゴーレムがいた。

ゴーレムの肩には金髪に長髪の男が立っており、前髪を掻き上げ夜風に髪を靡かせている。


「ん~っ、皆様初めまして。私はカミーユと申す者だ。ナンバーはナイン(9)を授かる者・DA☆」


カミーユと名乗った男は独特の口調で自己紹介を始めた。


「と、言うわけで皆様には死んでもらうの・DA☆」


──どういう訳だよ!!


脈絡の無い言葉に騎士団達はそう思ったのだとか。

カミーユが次の攻撃を繰り出そうとゴーレムが反対の手を振り上げた。


「や、やばいぞ」

「あんなもの一撃でも喰らったら終わりだ」

「デカすぎるだろ」


団員達は何とか食い止めようと臨戦態勢に入るが、15mを超えるゴーレムの相手をするなど初めての事で引き腰になっていると団員達の前に立ち塞がる影があった。

彼等の前に立ち塞がったのは、ジェルヴェール、ロラン、セレスタン、ヴィヴィアン、デジレ、ピエール、ドナシアン、レオポルド、ポール、サビーヌだった。


「私が腕の付け根を凍らせて動きを一時的に止めますのでロラン殿下はそこを狙って下さい」

「ああ。私の爆破威力では精々腕一本を吹き飛ばすくらいだろうな。だが、動きを鈍らせるくらいは出来るだろう」

「威力が爆散しないように俺もロラン殿下の補助致します」

「三分…持ってくれればアレと同じ大きさのゴーレムを二体造ります」

「俺のフェロモンはあの化物には通用しないだろうから、本体を狙うか」

「そうですね。ただ、先ずは先方に降りてきて頂かなければなりません」

「僕のストレンジもあの大きさのゴーレムを止めるのは難しそうだなぁ」

「殿下、御安心を。俺の風であの者を引き摺り下ろします」

「手応えありそうな奴が出てきたじゃねぇか。そのデカブツ粉々に砕いてやる」

「お嬢様救出の邪魔をする者は誰であろうと許しません」


十人は好戦的な目をして臨戦態勢に入る。

レナルドとフェルナンは突然の事に呆然とするしか無く、直ぐに対応することが出来なかった。

十人がそれぞれ仕掛けようとした時。


「待たんかッッ」


ビリビリと空気が揺れるような大きな声が聞こえた。そして、彼等の行先を塞いでいた土壁のようなゴーレムの片腕にヒビが入ったかと思えば次の瞬間砕け散った。


「チッ、ジジィ生きていたか」


ポールが言う。

ゴーレムによって出来たクレーターの底にいたのは、怪我一つなくピンピンとした総帥の姿だった。


「此処はワシにお任せ下さい。殿下達は彼女たちの救出を最優先でお願い出来ますじゃろうか。ポール、お主も殿下達と共にゆくんじゃ!」

「し、しかしこれ程の力を持つ者相手に一人は厳しい──」


ドナシアンがそう言おうとした時、レオポルドに先を制される。


「ガワワワワワワ。ワシも見くびられたもんじゃ。殿下よ、心配は無用じゃ。こんな小童ワシ一人で十分じゃわい。それに、部下達は此処に残らせる故安心して下さい」


総帥はそう言うと、拳に力を込める。


「oh......なんて悲しいことだ。もの程知らずの爺さんを葬らなければならないとは。老いぼれをいたぶる趣味は私は無いというのに……な~んて、そんなわけねーだろ。自分の力量も分からない耄碌ジジイはさっさとくたばれ」


敵は破壊されたゴーレムの腕を修復しながら逆の腕を総帥目掛けて繰り出す。


「力量が分かっておらんのはどっちじゃ小童がァッッ !!」


総帥は突き出しされたゴーレムの拳に降り抜いた拳を突き合わせる。ただのパンチでゴーレムの動きを止めたかと思えばそれだけでは終わらず、ゴーレムの腕は一発のパンチで粉々に砕け散った。


「行くぞ。救出が先決です。此処はジジィと部下に任せておけば大丈夫でしょう」


それを見た殆どの者達が総帥の力に唖然としているも、ポールの言葉に我に返り彼等は先を急いだ。

アレから敵は誰一人出て来ていない。

その為、順調に彼等はソレンヌ達が囚われている西棟まで辿り着く。

西棟は今までの場所とは違い薄暗く嫌な空気を発していた。しかし、彼等はそれでも先を進む。仲間を愛する者を助け出す為に。


「何か聴こえる」


西棟の入口でレナルドがそう言った。


「これは…歌…なのか?子供の声が聴こえる」


レナルドの言葉に全員が耳を澄ますも声などは一切聞こえない。

取り敢えず、彼等は先を進む事にした。

そして、200m程歩いた頃だろうか。子供の声が皆にも聞こえてきた。


でんでらりゅうば

でてくるばってん

でんでられんけん

でーてこんけん

こんこられんけん

こられられんけん

こーんこん


二人の少女が歌を歌いながら手遊びをしていた。


「ねぇねぇ、次はもっと速くしよーよ」

「待って、ユメ。おにーさんおねーさんのお出ましばい」

「あ、本当だ!やぁっと来た。来るの遅かーっ。ユメねユメね、君たちが来るのずぅっと待っとったとよお?」


ジャポンヌ国独特の着物というものを来た齢十歳程の少女達。二人は瓜二つの顔立ちから双子だろうと推測出来る。


「ねぇねぇ、誰がユメと遊んでくれると?おにーさん?それともおねーさん?」

「ユメ、ダメだよ!敵の前ではちゃんと番号で言わんと!」

「あ、そーやった。忘れとったぁ、ゴメンね。ウツツ」

「あー、また名前!それも、ウツツの名前勝手に言ったあ!」


二人のやり取りに呆然とするジェルヴェール達。

二人は敵と言っていたし、此処はそっとしてやり過ごす方が良いだろうと二人の横を通り過ぎようとした。


「ねぇ…わい達は勝手にどこ行きよっと?」

「遊んでくれるってゆーけんずっと待っとったとに無視するとか酷かやん」


少女達から齢十歳とは思えない殺気が溢れ出す。


「「私達はNo.8。此処から先は通すなって言われとっけん、通っちゃダメー」」


二人の少女は両手を広げて横に並び道を塞いで通せんぼをする。


「ピエール。この子達どう思う?」

「手強いですね。かなり」

「やっぱりかぁ。じゃあ、此処には誰か残らないと行けないよね」

「そうですね」

「デジレ王子、僕も残りましょう」

「ならば、俺も」

「レオはあっち。エド姉さんを助けに行かなくちゃでしょ?」

「しかし」

「ならば、俺が残ります。レオポルドさん、婚約者さんを助けに行ってください。ロラン殿下…お傍を離れる事をお許し下さい」

「セレスタン、君が自分で決めたことなら何も言わないよ。ただ、一つだけ約束だ。必ず私の元に生きて帰って来ること。いいな」

「はい!」


デジレ達の計らいにより、二手に分かれる事となった。


「仕方ねぇな。王子様方に何かあったら大変だ。俺も残ろう。それに、ガキにしてはなかなかの力を持っていそうだしな」


ポールは好戦的な笑みを浮かべて言う。

中央騎士団副団長のポールが残るのであれば心強い。


「嬢ちゃん達の遊び相手は俺達がしてやるよ。」

「本当に!?」

「やったあ。遊ぼう遊ぼう」


ポールは徐に少女達に近寄って言う。

所詮は子供。少女達は目を輝かせてポールに群がる。

残る組と救出に向かう組で分かれた彼等はアイコンタクトで頷き合うと救出に向かうジェルヴェール、ロラン、ヴィヴィアン、レオポルド、レナルド、フェルナン、サビーヌの七人はこの先にある部屋へと先を急いだ。


「此処からお嬢様達が囚われている部屋まで障壁はありません。一気に行けます」


サビーヌは人の気配を探りそう言うと、目的の部屋までの一直線を彼等は駆け、サビーヌの言う通り何の障壁も無くソレンヌ達が囚われている部屋に辿り着いた。

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