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悪役令嬢は王子様を御所望です  作者: 茗裡
第三章 正編
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31話 救援

アイロス達は大広間へと転移すると、団員と何やら揉めているレナルドとアイロスの息子がいた。


「レナルド殿下。お帰りなさいませ」

「アイロスか!直ぐに私達を父上の元に送れ」


レナルドはストレンジ騎士団団長であるアイロスが姿を現したことに僅かな安堵の息を吐いて命令する。

城の結界を管理しているのはアイロス本人である。その為、アイロスが許可すれば結界内にいても王城に転移が可能となるのだが、アイロスは動かなかった。


「陛下は今御多忙にごさいます。お急ぎのようですが如何なさいましたか?」


幾ら、王子といえど安易に陛下に謁見が適うものでは無い。その為、本当に陛下直々に話を聞かなければならない案件なのかを探る為にアイロスは用件を尋ねた。


「一大事だ。直ぐに父上に会わせろ!早くしなければ、ルイスとラシェルが危ないんだ!!」


レナルドは気が動転しているのか声を荒立てて訴える。


「それは…どういうことでしょうか。しかし、それより先ずは治療が優先ですね。お怪我をされている。医療班を呼びますので、その後に詳しくお聞かせ願えますでしょうか」

「どうもこうもない!いきなり知らない奴らに襲われたんだ!それに、悠長に治療などしている暇もない。今もまだルイス達が戦っているんだぞ!!」

「レナルド殿下、落ち着いて下さい」

「落ち着いてなどいられるか!早くしなければルイスもラシェルも他の奴らも危ないんだぞ!」


冷静さを失い、癇癪を起こした時のルイスのように怒鳴り散らすだけのレナルドでは落ち着いて詳しい話を聞くのは難しいかと考えた時、アイロスはレナルドの身体を支える自分の息子に目を移した。


「フェルナン。詳しく話せるな」


父、アイロスからの重圧感ある声音で問われれば息子のフェルナンは静かに頷いた。

途中、医療班が来てレナルドとフェルナンの傷を癒しつつ、事のあらましを聞いた。


話によると、レナルド、ルイス、それから同じクラスの級友数名と共に王都を見て回るのが初めてだというラシェルを招いて王都巡りをしていたという。

日も傾き始めそろそろ帰ろうとしていた時に、黒ずくめの男が五人現れた。

男達の要求は、無効化のストレンジを持つラシェルを引き渡すことで、当然これを断ったレナルド達は乱戦に発展したという。


「私のストレンジは超聴覚だから、戦闘には向かない。」

「僕のゲートで皆で逃げようとしたんだけど…今までとは比べ物にならない程の力を持った敵の仲間が現れて次々とクラスメイト達を捉え始めたんだ」

「ラシェルだけでも逃がそうと思ったが、あいつは、ラシェルを逃がせば級友達を殺すと脅して来た」


レナルドとフェルナンは眉間に皺を刻み悔しそうに言葉を吐き出した。


「見つけました!王都東区6番街!未だ交戦中。敵のストレンジ感知完了」


二人が言葉を続けようとした時、アイロスの後ろの方から声が上がる。

レナルドとフェルナンの会話を聞きつつ、感知能力を持つ者が騒ぎの場所を突き止めていた。


「救助に向かいます。ラフとアドルフを連れて行きます」

「お前達、頼むぞ」

「よっしゃ!ラフ、暴れるぞ!」

「アドルフさん気が早い…」


グエナエルは瞬時に人選を行い、アイロスに告げる。

アイロスが頷くとアドルフは漸く暴れられると拳を合わせ口角を上げ気合を入れた。


「グエン兄さん、アドルフさん、ラフ通信機付けて行って」


マティアスは三人にジェルヴェール達と同じ通信機を投げて寄越し、三人はその通信機を耳に付けた。

そして、グエナエル、アドルフ、ラファエルは瞬間移動でルイス達の救出へと向かった。

レナルドとフェルナンは彼等の迅速な対応に唖然とするしかなかった。

つい先程まで、詳細を話していたかと思えば、何の準備もなく一刻もしない内に救援が出された。


「心配ない。あの三人がいれば無事にルイス殿下と級友達を連れて戻って来るでしょう」

「団長。ペルシエ公から陛下直々にレナルド殿下達に話があるとのことです。お繋ぎします」

「ああ」


後方支援組にいたストレンジ騎士団の一人が大広間に設置されている機械を操作すると、大広間の上空に映像が映し出された。


「話は聞かせてもらった」

「父上…」


映像に陛下と宰相の姿が映し出される。


「レナルドよ。よく聞くのだ。お前達が狙われるよりも前にソレンヌ嬢、ルイーズ嬢、エドウィージュ嬢が攫われた。恐らく、お前達を襲って来た者達と関係がある組織だと我は見ておる」

「ソレンヌ達が!?」

「そこでレナルド、お前に問う。お前の数キロ先の音も拾う事が出来る超聴覚は役立つ。どちらに向かうか選べ」


陛下は感情の見えない表情、声音でレナルドに告げる。


「ルイス達の元に戻るか、ソレンヌ嬢達の捜索に向かっている者達と合流し、救出に加わるか。確りと考えて答えよ」


いつにも増して厳格な声音で問う陛下。


「私はルイスとラシェルの元に戻ります」


レナルドは揺るぎない目で映像の中の陛下を見つめて答えた。

ジョゼフ、アイロスの二人はレナルドの返答を聞いて一度静かに目を閉じた。


「それは何故だ。」

「ソレンヌの元にはルイーズとエドウィージュもいるのですよね!彼女たちは強い。それに、救援も出ているのであれば私はルイス達の元に戻ります!ラシェルは私達が守らなければいけませんから」

「……そうか」


陛下もまたジョゼフ、アイロス同様静かに目を閉じ低い声で返した。


「それよりも父上!私達の方にも更に──」


レナルドが増援を要求すると同時に映像は途絶えた。

レナルドは悪態吐く。先程の返答でこれから先の人生の道を大きく踏み外したのだとも知らずに。


「何だ、これは!?」


先程まで、気付かれないようにレナルドを今にも射殺さんとする眼差しで睨み付けていたヘンリーは水晶に目を移すと声を上げた。

何事かとアイロスをはじめヘンリーの元に集結する。

ヘンリーの千里眼で水晶玉に映し出されたのはルイス達の元に向かったグエナエル達の様子であった。


「何だこいつは。複数のストレンジを使ってないか?」

「妹と同じでパワーストーンが使えるとでもいうのか?」

「いや、これは違います。私のストレンジ感知にはこの男が持つストレンジは一般的な念力と同じ反応を示してます」

「どういうことだ。何故、複数のストレンジが使える。」


アイロスは食い入るように水晶に映し出される光景を見つめる。


「他の奴らも複数のストレンジが使えるのか?」

「いえ、他の者達は同じストレンジしか今のところ使ってませんね」


ポールの問にヘンリーが答える。


「グエン兄さん、そっちの戦況はどうなってますか」


マティアスが通信機を使って連絡を取る。

だが、一向に返答がない。


「チッ、妨害されてるのか」


今、こうしている間にも戦闘が激しくなっている。

周囲の者達はラファエルによって避難が行われているが、時折、初めからいた敵と交戦しながらなので苦戦していた。

ストレンジ学園の生徒達も応戦しているが、如何せん、能力の差がありすぎる。

ルイスは負傷して動けなくなってしまっており、グエナエルとアドルフは後から現れた強敵との戦闘で街の人や生徒達に構っている余裕はなかった。

グエナエルとアドルフはグエナエルの瞬間移動を使い、息のあったコンビネーションで敵の不意を着いて背後や四方に現れ攻撃を繰り返すも全て防御されてしまっていた。


そして、ラシェルに近付く敵に彼等は気付いていなかった。

黒ずくめの男は五人。だが、応戦していたのは四人しかいなかった。


「不味い、一人土の中に潜ってます」


感知能力を持つストレンジ騎士団の団員が告げるも、遅かった。

地面から飛び出した敵はラシェルの背後に着いて彼女を拘束した。

それからというもの、敵の動きは早かった。

気を取られたグエナエルとアドルフの隙をついて強敵の男が反撃をし、ラシェルとラシェルを拘束した男の元に向かうと瞬間移動でその場から消えた。


「敵の追跡は」

「今範囲を広げ捜索中です…っ、」


アイロスの言葉に感知能力を持つ団員が応える。


「…頑張ってくれ」


団員は捜索範囲を王都全域と王都に隣接するペルシエ領含む各領地にまで拡げる。

団員は今にでも倒れそうな程に青い顔をしているが、アイロスの頼みに微笑を浮かべて無言で頷いた。


「見つけ、ました。ペルシエ領にあるドビュッシーという町です。詳しい…場所までは…すみ、ません…」

「ここまで分かれば上出来だ。無理をさせたな。ゆっくり休め。ここから先は私達に任せろ」


アイロスは団員を労うと塔の中にいた他の団員を呼んで、彼を医療施設に連れて行くように指示を出す。


「マティアス、総帥達に報告を」

「ヘンリーはグエナエル達が戻って来るまでそのまま様子見を続けてくれ」

「ポール、先に一人で行けるか?」


アイロスは即座に指示を出す。


「誰に言ってるんですか。漸く、俺の出番が来たんですよ。上等。」


流石はラクロワ家の長男。

猛獣でも目の前にしているかのような気迫を感じる程で、彼は好戦的な笑みを浮かべる。


「あ、ポールさん待って。ポールさんが町に着いたらルゥの侍女を送ります」


誰もが彼の気迫に呑まれ恐怖している中、マティアスがその雰囲気を打ち破るようにポールに声をかけた。


「は?おいおい、侍女ってマティ本気か?」

「大丈夫です。彼女強いんで。総帥並の強さっすよ」


マティアスは何か機械を弄りながらポールの言葉に返答する。


「それに、彼女は貴方の役に立つ。しかも、ルゥの護衛として側に仕える侍女ですよ。興味湧きません?」

「ふむ。…ルイーズ嬢の護衛としてというのは確かに興味が唆られるな。分かった。だが、足でまといになるようなら送り返すぞ」

「どうぞご自由に。それと、はいこれ。持って行って下さい」


興味津々な顔をするポールに対して、マティアスは淡白に返答をして、機械を弄り終わったのか小さな正方形の箱をポールに渡した。


「何だこれは」

「結界のパワーストーンを組み込んだ結界装置です。ラファエルが土を抉って住民達の周りに防御壁を作っているのを見て必要かと思いまして」


何ということは無いといった様子で語るマティアスだが、彼がこの装置を作り始めて10分もしていない。

普段からこれだけ使える人材であればいいのにと遠巻きに見守っていたストレンジ騎士団の団員達は心を一つにして思ったのだとか。


「おう。ありがとな。これに、ルイーズ嬢達を閉じ込めれば俺は好き勝手暴れることが出来るってわけか」

「暴れるのは勝手ですけど。ルゥに傷一つでも付けたら許しませんから」

「わっはっは、安心しろ。この俺が行くんだから心配要らん!」

「貴方段々爺さんに似てきてますよ…疲れる」


豪放磊落(ごうほうらいらく)な性格が多いラクロワ家は総帥の血を濃く受け継いでいると思われる。

疲れきった顔をするマティアスをポールは笑い飛ばして、アイロスの指示に従って転送装置で一足先にドビュッシーの町に向かった。


「アイロス、私達も町に行くから転送装置で送れ」

「殿下達は総帥達の元に送ります。彼らと共にドビュッシーに向かって下さい。何、直ぐに行けますよ。ストレンジ騎士団にいるゲート使いの殆どを同行させていますからね」


レナルドとフェルナンはアイロスの説得により、総帥や留学生達がいるペルシエ領へと送り込まれた。

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