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悪役令嬢は王子様を御所望です  作者: 茗裡
第三章 正編
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30話 レナルド王子の帰還

「来たか」

「ご機嫌麗しゅう。アイロス様」


ジェルヴェール達が王都を出発して一時間程経った。ストレンジ騎士団が所有する王城近くの塔。ストレンジ騎士団団長アイロスによって呼び集められた者達が研究所のとある一室に集結していた。


「お前達を呼んだ理由は既に知っているな」

「ええ、存じております」

「カプレ家、ペルシエ家、ミュレーズ家の者にとっては身内が攫われたとあって直ぐに助けに行きたいだろうが今回はある者達に救出を任せてはくれんか」

「アイロス様、一つ宜しいでしょうか」

「何だ。ヘンリー・ペルシエ」


この度、研究所に集められたのは全部で十人の二十前後の男達である。ストレンジ騎士団団長アイロスに認められた、国内でも強力な力を持つ者達が集められていた。

カプレ家からグエナエル、マティアス、ラファエルの三兄弟。ペルシエ家から長男のヘンリー・ペルシエ。ミュレーズ家から次男のアドルフ・ミュレーズ。ラクロワ家から長男のポール・ラクロワ。他四名もまたダルシアク国内で指折りの強力な能力を持つ者達で内二人はストレンジ騎士団に属する庶民出の者である。


「失礼ながらその者達は本当に信用足る人物でしょうか」

「それは、君達よりも強いのかという質問で良いのかな」


ヘンリーの言葉の内に含まれた意図を読み取ったアイロスが率直に尋ねる。


「俺達が待機とは納得がいかないんでね。何せ、此方は可愛い妹を誘拐されているんだ。勿論、俺達よりも強い奴が救出に向かってるってことですよね」

「アドルフ、口の利き方を改めろ」

「良い」


彼等はルイーズ達の救出の後方支援として、研究所に呼ばれたのだが、戦闘狂の気があるアドルフはその待遇に納得がいかないのだろう。言葉をオブラートに包むこともせずに直球にアイロスに聞く。

それを見た、友人であるグエナエルが注意するもアイロスは片手を上げて制す。


「君達が来る前に同じ事を聞かれたよ。なぁ?マティアス?」


愉しそうな笑みを浮かべてアイロスはマティアスを見遣る。マティアスは、同い年で幼馴染でもあるヘンリーと共にソファに深く腰掛けながらぶっすりとむくれていた。


「マティアス。君は彼等に出会ってどう感じた?」


マティアスが妹のルイーズを引くほどに溺愛しているのはここに居る全員が周知していること。

何かあれば、真っ先に周りの制止など聞かずにルイーズ救出へと赴きそうなものだが、救出は別の者へと任せて後方支援組に残っている事にマティアスをよく知るもの達は驚いていた。


「彼等のストレンジの力なら問題無い。それに、俺達よりも彼等の方が強いだろう。」

「お前がべた褒めとはこれまた珍しいな」


グエナエルよりも一つ年上であるポールがマティアスの頭を撫でくり回しながら驚いた調子で言う。

その手を払いつつ、マティアスは更に機嫌悪そうに言葉を続けた。


「別に褒めてないですよ。単純な能力だけなら俺達より勝るってだけです」

「ほう。だが、お前程の男が認めたのだろう?お前は危ない賭けには出ない。それもルイーズ嬢の身に危険が迫っているとなれば尚更だ」

「貴方の爺さんがついてるから今回は後方支援に回っただけです。それに、先程から言っているように能力だけならばうちのルゥにも引けを取らない連中です」


マティアスの言葉にストレンジ騎士団に所属する者達以外の人達が驚いた。

ここに居る十人は指折りのストレンジ使いである。

その為、ルイーズの異常な能力の持ち主であることは皆よく知っている。ルイーズの能力で一般的ストレンジ使いと比べるならば、川の水を自在に操ることが出来る程でストレンジ騎士団のエリートと呼ばれるとすればルイーズは海を自在に操ることが出来る。


「だが、彼等はまだ実践が足りない。その為に俺達が必要なんだ。ポールさんとアドルフさん他数名は戦闘に特化したストレンジなので彼等が危なくなったら直ぐに現場に向かってもらいます。」

「それまでは、私達のストレンジを大いに役立てることが出来るんだろう?」

「ああ。ヘンリー、お前の千里眼と俺が作った通信機で救出に向かっている連中に指示を出す」


ここに集められたのは後方支援に特化した者と前線に特化した者達に分かれる。他にも後方支援に特化した者はストレンジ感知能力を持った者がいる。

彼の目の前にはダルシアク国全土の地図が広げられ、一定の範囲に絞り込んで捜索すると何処でどのようなストレンジが使われているかなどを察知する事が出来る。

また、ルイーズ、ソレンヌ、エドウィージュのストレンジが使われようものならばストレンジ騎士団に所属している彼には容易に判別がつき直ぐに居場所が割れるだろう。だが、その捜索に難航しているということは三人ともストレンジが使えない状態であるか、捜索範囲から外れているかで未だ時間がかかりそうだ。

しかし、三人の居場所が分かり次第直ぐに救出組に合流し応援に加わることが出来るように戦闘力に特化した者達も呼んであるのだ。

場所を突き止めることに成功すれば、グエナエルの行ったことのない場所でも地図に乗っている地区ならば何処にでも転移出来るストレンジで現場に向かったあと、結界や呪術全てを解除出来るストレンジを持つ者、アドルフやポールのように戦闘に特化したストレンジを持つ者達を送り込むことが出来る。

そう、対策を取っている時だった。


「失礼致します!アイロス様、レナルド殿下及びご子息がゲートを使って此方にご帰還なされました。至急、大広間にお越しください」


ストレンジ騎士団員がストレンジ騎士団団長であるアイロスを呼びに来た。

今の時刻は大分日が傾き月が顔を覗かせ始めた時間帯である。

仮にも、王族に名を連ねる者がこんな時間帯まで外を出歩いていた事に、その場にいた者達は驚きを隠せなかった。


「グエナエル、広間までの転移を頼めるかな」

「団長、待って下さい。俺達も同行しても宜しいでしょうか」

「こんな時間帯に王子がお戻りになるのも気になるが、何より、恐らくお忍びで出たのであろうはずなのに、ゲートを使ってお戻りになられたということが一番引っかかるな」

「ソレンヌが大変な時に自分達は遊んでいてこんな時間にお戻りとは」


マティアスがアイロスに同行を求め、ポールが王子達の不可解な行動に思案する。ヘンリーは自分の妹を蔑ろにするレナルドに良い感情は持っておらずに、悪態を吐く。


「良いだろう。だが、君達は話を聞くだけだと約束出来るならば同行を許そう」


ここには血気盛んな者達が多い為、王族だろうと不敬を働きかけない。それを思案しつつも、彼等の同行を許したのはアイロスもまたポールと同じく不穏な空気を感じたからに他ならなかった。

渋々、アイロスの条件を飲んだ彼等はグエナエルの転移で大広間へと移動した。

そこには、かすり傷を負ったアイロスの息子とレナルドの姿があった。

更新が一ヶ月以上途切れてしまい誠に申し訳ございません。

また更新していきますので、今後ともよろしくお願い致しますm(*_ _)m

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