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悪役令嬢は王子様を御所望です  作者: 茗裡
第三章 正編
59/75

25話 王都巡り


連休五日目。

私達は連休に入る前に約束した通り私、ソレンヌ、エド、エリヤ様、ロマ様の五人で王都巡りをする為王城にエリヤ様とロマ様を迎えに行った。


だけど、何故!何故彼等までいるのでしょうか!?


エリヤ様とロマ様が待機していると案内された場所へと私とソレンヌ、エドの三人で向かうとそこには男性陣の皆様もいた。



「ごめんね、折角だから僕らも王都巡りに同行させてもらってもいいかな?」


ドナシアン王子が眉尻を下げて申し訳なさそうに私達を見上げて懇願する。


「勿論、構いませんわ」


勿論、王子達の頼みを断ることなど出来るはずもなく、承諾する。

こんな事になるならもっとお洒落して来るんだった!!


お忍びということで留学生の皆さんもラフな格好をしているのだけど…


ヤバいです。


護衛が着る少し堅苦しい服も学園の制服も似合っていたのですが、お忍び服も最っ高にかっこいいです。なんてったって、少し開けた胸元がもう、鼻血ものです。ああぁぁ、あの胸元に飛び込んでスリスリしたい!


私はジル様の姿にぶっ飛びかけた邪心を振り払い何とか正気を保って街に繰り出す。



しかし……



こんな大所帯かつ皆見目麗しいということもあり注目度が半端ない。

パレードの如く道の両端に人集りまで出来始めている。



「お姉様…」

「ええ、ソレンヌ」


これではろくに街案内も出来ないと踏んだ私とソレンヌは目配せで意見を合致させる。

そして、取り敢えず私達の行き付けの喫茶店に入る事にして空いていた個室を借りる。



「このままでは注目を浴びて自由に行動が出来ませんわ」


ソレンヌのその言葉に皆は確かにと頷く。

あんな人集りが出来ては行く先々の店先にも迷惑がかかってしまう。


「そこで、二手に分かれて行動しませんか?」

「うん。僕はいいと思うよ」


私の発言にドナシアン王子が頷く。

それに、他の面々も続いて二手に分かれて行動する事が決まった。

先ずは街に詳しい私、エドとソレンヌ、ドナシアン王子にダルシアク組は分かれる事にした。

そこで、留学生達を誰が案内するかを割り振って行こうとしたのだが。


「私、ドナシアンと一緒に回りたい!」


ロマ様がピシッと手を挙げて言う。

おやまぁ、驚いた。ロマ様はすっかりドナシアン王子に懐いたようです。まあ、唯一年が同じということもあり、年上といるより同級生の方が話しやすいだろうということで問題無くロマ様はソレンヌとドナシアン王子の方で案内する事にした。

後はソレンヌと特に仲良くなったエリヤ様もソレンヌ側でそうすると自然と彼女の婚約者であるヴィヴィアン様もソレンヌ、ドナシアン王子側に入った。


そうなると後はロラン殿下とデジレ殿下、そしてお付の方々の割り振りをどうするかということになったのだが…


「俺とピエールはルイーズ嬢とエド嬢に案内してもらうよ」


そうデジレ殿下が声を上げる。


「ルイーズ嬢と独り者同士仲良くなれるチャンスだし」

「デジレ、口を慎め」


ロラン殿下から直ぐに叱責が飛ぶもデジレ殿下はどこ吹く風だ。

デジレ殿下はまた誤解を生むようなことを。

私とエドの方にまだ1人もいないから気遣ってくれたのだと率直に言えばいいのに、この人は何か軽い発言でもしないと死ぬ病気なのだろうかと一人遠い目で考える。


「他国の王子が二人もいたら緊張するだろうからロランはドナシアン達の方な。あ、でも、人数調整で護衛の一人こっちに頂戴」


デジレ殿下はそう続けるとそうだと手を叩いた。


「セレスタンがこっちに来てエド嬢の婚約者でセレスタンとも同学年のレオポルドもこっちに来たらどうだ?で、ロランとジルはドナシアン達と一緒に行動すれば人数の比率も良くないか?」

「そうですね。じゃあ、レオはエド姉さん達の方についてデジレ王子達を案内してくれる?僕はソレンヌ姉さんもついているから大丈夫だから」

「承知致しました…」


ドナシアン王子がレオポルド様に指示を出すとレオポルド様はその指示を受諾する。


ジル様とは離れてしまったか、と肩を落とすが仕方ない。ただ、レオポルド様とエドが揃ってしまった事に一抹の不安を感じるが、年長者としてまたエドのストッパーとして王都巡りに勤しむ事を決めた。


「いや、セレスタンは私についてもらう。代わりにジルをそちらに入れよう。ジルは常に私に付きっきりだからね、偶には色んな人と話しておいで」


そう言ってロラン殿下はジル様を私達の方へと入るように進言した。

その時、ロラン殿下がチラリと私に目を向けて笑っていたからこれは完全にロラン殿下に目論まれたのだと察した。私の気持ちを知ってるロラン殿下なりの気遣いなのだろうが私は羞恥に頬の熱が収まるまで顔を上げることが出来なかった。

しかし、心の中ではロラン殿下に盛大に感謝した。


そうして、私とエドの方にレオポルド様とジル様、デジレ殿下、ピエール様。

ソレンヌとドナシアン王子の方にロラン殿下とロマ様、エリヤ様、ヴィヴィアン様、セレスタン様とで二手に分かれる事になった。





──────────────


ルイーズ・エド組



「では、改めまして宜しくお願い致します。デジレ殿下は何処か見たいお店はございますか?」

「俺は特に無いかなぁ。ルイーズ嬢とエド嬢のおすすめの場所か行きたい所に連れて行ってよ」

「かしこまりましたわ。そうですわね…何処が良いかしら。エド、何処がいいと思う?」



私はデジレ殿下に丸投げされた事に困りつつも幾つか脳内で観光場所の選別を行う。

留学生がいるこの状態で流石にエドもいつも私達と行動するような態度は取らないだろうと油断していた。

結論からいうと、エドは留学生がいようといまいとエドでした。


「武器屋!!」


ぶ・き・や!!??


いや、うん。聞き間違いだろう。

やっぱり、私一人で考えた場所にお連れしようと口を開くと私よりも先にエドが口を開いた。


「それか装備店!!」



装・備・店!?!?


駄目だ。これ以上エドの好きに発言させると何を言い出すか分かったもんじゃない。

エドは礼儀はきちんと出来るが、礼儀だけである事を失念していた。思考は常に戦闘に関することしか頭にない奴だった。


「ぷっ、くくく」


エドの失言をどう挽回しようかと考えているとデジレ殿下は肩を震わせて笑う。


「いや、すまない。女の子で武器屋や装備店に行きたいなんて言う子初めてで…くくっ。いいね。うん、行こうか。俺もダルシアク国の武具がどういうものか気になるし。ピエールもジルもいいよね」


デジレ殿下の問いに二人は頷く。

レオポルド様に関しては先程まで淡々とした様子だったのが武器屋や装備店に行けると分かってうずうずしているのが伝わって来る。


この似たもの婚約者共が!!


そう叫びたいのを我慢してエド&レオポルド様推薦の武器屋に到着した。

エドとレオポルド様は武器屋に着いてすぐに目を輝かせて店内を物色する。本当は観光スポットにでも行ってジル様との距離を縮められたらなんて僅かに思っていたが、デジレ殿下やピエール様、それにジル様も興味深そうに店内を物色しているのでまあ、いいかと諦めた。

この武器屋は品揃えが豊富なようで騎士団御用達なだけはあり、本格的な取り扱い厳重品から女性が喜びそうな可愛いデザインのちょっとした日常お役立ち機能が付いたようなブレスレットや手袋型の装備品も置いている。


色んなストレンジ職人が作った商品が置いてあって見るだけでも楽しい。


そして、あるものが目に留まり足を止めた。

一つのブレスレットを手に取る。

石が連なったパワーストーンのブレスレットで効能は幸運で幸運のストレンジを持つ職人が手掛けたもののようだ。

だけど、私はその効能よりもパワーストーンが目を引いた。透き通るような青と菫色の石が交互に連なっているのだ。

私とジル様の瞳の色。


「ルイーズ嬢何かめぼしい物でもあったかい?」


ブレスレットに意識が集中していたからデジレ殿下が隣に寄って来たことに気付かなかった。


「デジレで──」


驚いて殿下の名前を呼ぼうとすると唇に人差し指を当てられて言葉を遮られる。


「デジレ。折角お忍びで来てるのに俺が王子だってバレると騒ぎになっちゃうだろ?だから、デジレって呼んで」


デジレ殿下は顔を寄せて周りに聞こえないように小声で話す。デジレ殿下の言葉に辺りに目を配ると小物を物色していた女性達の熱い視線がデジレ殿下に注がれている。

これは確かに他国の王子だとバレると厄介な事になりそうだと黙って頷く。

私が了承した事にデジレ殿下が笑顔で返すとデジレ殿下の指が唇から離れ大きな影にデジレ殿下の姿が消えた。


「あいてててて」


その直後デジレ殿下の苦痛の声が聞こえる。


「デジレ様、無闇に淑女に触れたり必要以上に近付くのはお辞めになられた方がいいかと思います」

「私もジェルヴェールの意見に賛成ですね」


私とデジレ殿下の間に割って入ったのはジル様でデジレ殿下の人差し指を掴んで意見を申し立てる。

それに続くように、デジレ殿下の背後にはピエール様が立っており、ジル様の発言に大きく頷いて同意を示していた。


「いてて。お前達は少し私に対する態度が酷くないか!?」

「「デジレ様自ら友達のように接するようにと拝命を賜っておりますので」」


ジル様とピエール様は意を合わせたのようにそう言うとデジレ殿下は不服そうにしつつも自らの発言を撤回することも無く、二人の意見に素直に引き下がった。


「でも、仲良くなるくらいなら良いだろう?」

「…無理強いをしない事と親密になり過ぎないようにあくまで、一定の距離感だけは保って下さいね」


デジレ殿下の発言にピエール様は呆れたように溜息をついて鋭い目をデジレ殿下へと向ける。

確か、彼等の関係は主従関係にあったはずでは?と思うが、彼等の関係が逆転している気もしなくもないが深く考えないことにした。


その後、すぐに何処かに行っていたエドとレオポルド様が戻って来たのだが、二人の手には新調した新しい武器が握られていた。

二人はホクホクと満足した顔をしていたので、得も言えぬ空気になり、私達は店を後にすることにした。

店を出る時、最後にブレスレットをやっぱり買おうかなと思って振り返ったが私達がやり取りをしている間に誰かに買われてしまったのかそのブレスレットはなくなっていた。その事にちょっとガッカリとしながら私達は店を出てソレンヌ達と待ち合わせをした場所まで行くことにした。




──────────────


ソレンヌ・ドナシアン組


ルイーズ・エド組と分かれたソレンヌ・ドナシアン組は観光スポットに来ていた。

王都の中にある唯一の大きな公園だ。

子供達が遊ぶ場所は勿論、栄える王都の中でそこだけ緑に囲まれ大きな湖がある。

湖の周りにはゆっくりと湖を見れるようにベンチも幾つか設置されて舗装された道の端には点々と屋台も出店している。


恋人達が集う名所としても有名だ。


元々、ソレンヌ達は女性陣だけで此処に訪れる予定だった。その為、何処に行こうか思案する間もなくソレンヌは此処に決めた。

それは、他国から来た新しく仲良くなった友達の為でもあった。


エルヴィラ嬢は婚約者と共にダルシアク国に留学していた。その為、彼女に喜んでもらおうとこの場所を選んだ。それに、湖では普通のボートやアヒルさんボート等もある為ロマーヌ殿下にも楽しんで貰えるだろうということでこの観光スポットに来た。


「ドナシアン!あれに乗ろう!!」


ロマーヌ殿下は案の定アヒルさんボートを見て目を輝かせドナシアン王子の腕を引いて指差す。


「ロマ、落ち着いて。皆にも意見を聞かないと」


ドナシアン王子がロマーヌ殿下を宥める。


「楽しそうですわね。わたくしも乗ってみたいですわ」

「僕はエリヤが乗りたいなら乗ってもいいよ」


エルヴィラ嬢は婚約者であるヴィヴィアン様に寄り添いながら手を合わせて同意を示せばヴィヴィアン様もエルヴィラ嬢の意見に賛同する。


「わたくしも良いと思いますわ」


ソレンヌはエルヴィラ嬢とロマーヌ殿下の楽しそうな表情ににこにこと笑顔で返しながら同意する。


「私達も構わないよ。セレスタンも良いだろう」

「はい!頑張ってボートを漕がせて頂きます!」


ロラン殿下とそのお付であるセレスタン様も同意した事でボートに乗ることが決まった。


組み分けは、

ロマ&ドナシアン

エリヤ&ヴィヴィアン

ソレンヌ&ロラン&セレスタン


という組み分けになった。

ロマーヌ殿下とエルヴィラ嬢達はアヒルさんボートに乗るようだが、ソレンヌ達は三人いる為普通のボートに乗ることとなった。


「お手をどうぞ、ソレンヌ嬢」

「あ、ありがとうございます。ロランで…様」


ボートには先にセレスタン様、ロラン殿下の順に乗り込み最後にソレンヌが乗り込む。

その際、先にボートに乗っていたロラン殿下がソレンヌへと手を差し伸べソレンヌはその手を掴む。殿下と言ってしまいそうになるのを何とか既のところで言い直した。

ここに来るまでにあたって、ロマーヌ殿下、ロラン殿下、ドナシアン王子に関しては彼等が王子王女であると民衆にバレない為敬称を変えて呼ぶようにしたのだ。


「この公園はとても綺麗だな」

「そう言って頂けるとダルシアクの一国民としてとても嬉しいですわ」


太陽の光を反射してキラキラと輝く湖にそこかしこから聞こえる楽しそうな笑い声。緑に囲まれ空気も澄んでいるような気さえする。

ロラン殿下の言葉にソレンヌは嬉しそうに笑顔で返すが、ロラン殿下はソレンヌの違和感に気付いた。


ソレンヌは楽しそうにしているし、受け答えもいつも通りなのだが、時折、ロマーヌ殿下やエルヴィラ嬢の方を熱心に見つめていた。

まるで、その二人に自分を重ね合わせて見ているようなそんな感じだ。相手はさながらレナルド王子だろうかとロラン殿下は考える。

だが、その姿は何処か哀愁漂う姿でロラン殿下は僅かに胸が締め付けられる思いがした。


ボートの貸出時間が迫り船着場に戻る。

先にセレスタン様が降りてロラン殿下を船着場に降りる手伝いをし、ロラン殿下が振り返って再びソレンヌへと手を差し伸べる。


「ソレンヌ嬢、ボートが揺れて危ないからゆっくり上がるんだ」

「は、はい。」


小さい波でもゆらゆらと揺れるボートは乗る時よりも降りる方が船着場から寄ったり離れたりで少しドキドキとするものだった。

ソレンヌは立ち上がりボートの端の方まで歩み寄る。


「ソレンヌ嬢、そんなに端に寄ってはいけませんっ!!」


セレスタン様の慌てた声が上がる。

その瞬間ソレンヌの身体がガクンと大きく揺れた。


「危ないっ!!」


ボートはソレンヌが片方に寄ってしまった為バランスを崩して大きく傾く。

ボートはバシャンと大きな音を立てて元に戻ったが、その拍子に湖に落ちそうになったソレンヌの身体を抱き締め何とか湖に落ちるのを防いだロラン殿下。

ソレンヌはロラン殿下にしがみついて恐怖にドキドキと心臓が脈打ち顔を青ざめさせる。


「も、申し訳ございません」


未だロラン殿下にしがみつき、船着場に引き上げてもらい咄嗟に謝罪する。


「怪我はないかい?」


船着場に足を着いてロラン殿下から離れると彼は焦った様子でソレンヌに尋ねる。


「はい。ロラン様のお陰ですわ。本当にありがとうございました」

「そうか…。それなら良かった」


ホッと安堵の息をつくロラン殿下にソレンヌは本当にお優しい方だと微笑んだ。

ロラン殿下はソレンヌの自分に向けられた自然な笑みに胸が高鳴るのを感じて慌てて顔を反らしドナシアン王子達と合流して、もう一組のルイーズとエドが率いるグループとも合流する為待ち合わせ場所へと向かった。






かくして、各々の思いが交差する王都巡りを終えて王城に戻る頃にはすっかりと全員疲弊していた。

そして、女性陣は明日の朝早くからペルシエの領地へと向かう為エルヴィラ嬢とロマーヌ殿下を迎えに上がることを約束して解散する運びとなった。

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