5話 研究所
ストレンジ騎士団研究所。
此処では様々な実験が行われている。我が国の最高峰でもあるストレンジの研究所だ。
そして、八ヶ国内でも此処の研究所に勝る所は無いだろう。それこそが、我がダルシアク国がストレンジに関しての知識と実力は他の国を寄せ付けないとされる所以なのだから。
「ルイーズ様、ソレンヌ様、エドウィージュ様本日も御足労頂き誠にありがとうございます」
王城の近辺に設立されたストレンジ騎士団の本拠地に着くと紺色のローブに身を包んだ老人が私達を出迎える。
「御機嫌よう、爺や。」
「本日も宜しくお願いします」
「爺や、私達は何時でも飛ばしてもらっていいですよ~」
私達三人は目の前の老人に口々に挨拶をする。因みに、爺やとは本人からそう呼んでくれと言われて私達三人とも爺やと呼んでいる。聞いた話だと、ストレンジ騎士団の方々も爺やと呼んでいて誰も彼の本名を知らないんだとか。
彼はストレンジ騎士団に雇われた案内人で、こうしてストレンジ騎士団を訪れた者達をそれぞれ建物内に転送する役割を担っている。私は7歳の頃から此処に来ているが未だに建物内の構造を全く知らない。
「ルイーズ様は副団長の元に、ソレンヌ様とエドウィージュ様はいつもの研究所に案内致します」
爺やの言葉に了承の意を示して頷く。
「お嬢様、行ってらっしゃいませ」
サビーヌの御見送りを受け、私達は爺やが差し出した掌に手を置く、その瞬間目の前の景色が変わりとある一室へと飛ばされた。ソレンヌとエドは他の部屋に飛ばされ此処には私一人飛ばされた。
「いらっしゃいルイーズ嬢」
「御機嫌よう、ヒロ様。本日も宜しくお願い致しますわ」
転送先で待ち構えていたのは爺やと同じローブに身を包み眼鏡をかけた青年が出迎える。
彼はストレンジ騎士団の副団長でヒロ・イノウエ様。ジャポンヌという国から来た方だ。彼の名前や国名からも分かるようにジャポンヌ国は前世住んでいた日本という国に似ている。しかし、彼から話を聞く限り前世のワタシがいた現代日本とは色々異なっているようだが、いつかジャポンヌ国に行ってみたいと思っている。
「今日はネムとユメの状態を確認させて頂きます」
「分かりましたわ」
ヒロ様はカルテを手に椅子に腰掛ける。
病院の診察室のような部屋で白を基調とし、隣には此方からはガラス張りとなって部屋の中が丸見えの隣接した部屋がある。
私はその隣の部屋へと移動し、備え付けのベッドへと腰を下ろす。
「ネム、ユメおいで」
「今回はネムとユメ同時に調査します。先ずネムのストレンジで眠った後にユメのストレンジを発動し、ユメのストレンジを発動後10分後に目覚めるようにして下さい。」
私は睡眠を促すピッピコと予知夢のピッピコ二匹を呼び出す。
彼の指示に従い、ベッドに仰向けに寝ればネムに私を眠らせるように指示を出し、その後直ぐにユメに予知夢を見せるように指示を出す。
「では、始めて下さい」
隣の部屋からの合図と共に指示通りに二匹のピッピコは力を発揮して私は直ぐに眠りに落ちた。
ユメの能力は不安定で、見たい予知夢を設定する事は出来ない。その為、いつ、何処で、出てくる人物は誰なのかは一切分からないが的中率は100%だ。
私が保持するピッピコは全て私としか共鳴を示さない為、実験をする際は今回のように私自身が実験体となる事もある。
ネムとユメの能力測定も今回が初めてでは無いので油断していた。ユメのストレンジは見たいものも見たくないものも関係無く見せる。
今までは全く知らない人の日常生活だったりと私とは関係の無い未来ばかりだったからまさかあんな未来が待っているなんて思いもしなかった。




