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悪役令嬢は王子様を御所望です  作者: 茗裡
第三章 正編
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2話 初・対面




ストレンジ学園に編入した主人公は担任となるラーゲル先生に連れられ職員室へと向かう途中、庭先で剣の訓練を行っているレオポルド様と出会う。

ゲーム内のレオポルド様はエド嬢をいつか見返す為がむしゃらに風のストレンジを剣に纏い振るっている所に主人公がやって来る。風を纏い剣を振るう姿はまさに剣舞といったような動きでその姿に感激した主人公が口にする言葉が「わあ、すごーい」と無邪気に褒めてその声に気付いたレオポルド様と目が合い慌てて不躾な態度を謝罪する出会いイベントなのだが、



「あ、ごめんなさい。私ったら、つい見とれてしまって…」



主人公を示すハニーピンクの髪色に甘い蜜を流し込んだような蜂蜜色の瞳。正しく声を上げた彼女はストワでのヒロインで間違いないだろう。隣には、案内中のラーゲル先生もいる。

私は思わずヒロインを凝視する。

一言一句違わない出会い頭の台詞。だが、そのイベント内容は私達の関係性というイレギュラーによって違うものに変更されていた。なのに、何故その台詞が出て来たのか。この場での見惚れるは多少無理があるだろう。14歳の少女が素手で地面を抉り女性に剣を向けて好戦的な笑みを浮かべる少年。とても、見とれるような場面ではない。



「あ、わ、私、間近でしっかりとストレンジを見るのは初めてで。大声出しちゃってごめんなさい」



なるほど。

確かに庶民でストレンジを使えるものはそうそういないしお目にかかる事も滅多にないだろう。

彼女は恥ずかしそうに頬を染めると可愛らしく両手で唇を抑える。私の考え過ぎだろうか。私はヒロインの編入が決まったという情報を手に入れた時、今後の計画の調節を直ぐに行なった。ヒロインの性格は明るく活発で天真爛漫を地で行く性格だ。ゲームと私達の関係性は若干異なるが素直で真っ直ぐなヒロインの行動などある程度予測はつく。そう考えて行く中で私は複数のパターンを考える中である事に思い至ってしまった。

そう、それが私と同じ転生者であった場合だ。



「ラーゲル先生、そちらの方は?初めてお見受けするお顔ですわね」

「ああ、彼女は今日からこの学園に編入する事となったラシェル嬢だ。下町で暮らしていたんだが彼女のストレンジは特殊でね、なかなか人に見つかりにくいストレンジだった為今の時期の入学となったんだ」



ソレンヌの問いにラーゲル先生が彼女の話を観衆含め皆に伝わるように告げる。



「まあ、そうでしたのね。ところで先生が案内をしていると言うことはもしかして彼女はわたくし達のクラスに編入されるのですか?」


「流石ソレンヌ嬢。察しがいいですね。」


「まあ、そうなのですね。…初めまして、ラシェル嬢。わたくし、ソレンヌ・ペルシエと申します。何か分からない事がありましたら何時でも頼って下さいね」


「え?あ、はい。あ、ありがとうございます」




ラーゲル先生の肯定にソレンヌは流石と言うべきか、見本となるような凛とした佇まいでラシェル嬢に自ら挨拶をし困り事があれば頼るように申し出る。

背筋を伸ばし指先は綺麗に両手を重ね聖母のような微笑みに観衆から恍惚とした嘆息が漏れる。本来ゲーム内でのソレンヌは甘やかされた家庭で育ち公爵としての矜恃に(まみ)れた女性に成長する。その為、庶民を下に見る気があったのだが、そんなものは、私達が小さいうちから領地の孤児院を回ったり、私とソレンヌとエドの三人で下町にお忍びで遊びに出掛けたりなどしていたら、一切なくなった。

その為、ソレンヌは聖母のような容姿も相まってご令嬢は勿論の事平民出自の者達からも崇拝される程になっていた。

ラシェル嬢はそんなソレンヌの様子に若干驚いたように目を見開き御礼を言う。

今のところ彼女が転生者であるかどうかを見極めるのは厳しいかもしれない。

ソレンヌに関してはソレンヌの美しさに目を奪われて驚いたという可能性もあるし、サビーヌがいつも口にする早とちりは良くない。



「こんなところで人集りなど作って何をしている」

「何の騒ぎだ。お前達道を開けろ」



その時、観衆の奥からこれまた耳によく届く声が聞こえた。

この傍若無人っぷりはあの方達で間違いないだろう。その声を聞いた瞬間にドナシアン王子の肩が小さく上がり筋肉が萎縮するのが見て取れた。

それに気付き、私とソレンヌは直ぐに動く。観衆が垣根を割るように開いた道から現れるであろう人々を迎える為にドナシアン王子を背後に隠しつつ私とソレンヌは背筋を伸ばして待ち構えた。



「何だお前達だったのか」

「こんなところで何をしてるんだ」



姿を現したのはレナルド王子とルイス王子の双子王子とその後ろにクラスメイトであろう男子生徒の方達だ。

双子王子はクラスを牛耳り時折こうしてクラスメイトの男子生徒達を伴い下僕のように扱うことがある。



「「レナルド王子、ルイス王子ご機嫌麗しゅうございます」」

「騒々しくしてしまい申し訳ございません」

「実は、本日この学園に新入生が来られるとの事で御挨拶を伺っていたのでございますわ」



私達は王子に会釈程度に頭を下げて挨拶をし、今起きている状況を伝える。



「新入生だと?初等部ではなくこの中等部にか?」

「中等部からとは珍しいね。で、その物珍しい奴はどこなの?」



レナルド王子が訝しげに問う。

それもそのはず。ストレンジの発見はほぼ幼少の頃にされ、遅くても初等部の最高学年である12歳までには発見されストレンジ学園に入学させられる。それが、中等部からの編入となると驚くだろう。因みに、初等部、中等部、高等部は同じ敷地内ではあるが校舎が別となっている。その為、この場で編入というと中等部からとなるのだ。

レナルド王子は疑いが僅かにあるが、ルイス王子は完全に好奇心でその人物に対して尋ねる。

それにしても、この状況……双子王子にレオポルド様、クラスメイトの男子生徒に混じっているストレンジ騎士団長のご子息にヒロインの幼馴染、隠しキャラであるラーゲル先生、此処に私の兄であるラフ兄様が高等部から駆け付けようものなら初日でヒロインは第一章の攻略対象者全員との顔合わせを済ませた事になる。

それに、第三章の攻略対象者であるドナシアン王子も既にこの場にいる。

私は当初計画に一切無かったカオスなこの空間に一人遠い目をしつつ、ヒロインであるラシェル嬢を王子達に紹介する事となった。

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