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12話 もう一つの恋の悩み



「お姉様、聞いて下さいましっ。レナルド王子が…レナルド王子が……うわあああん」



ソレンヌ嬢達が入学して半年後が経った頃。私、ソレンヌ嬢、エド嬢は喫茶店の一室にあるVIPルームを貸し切って定例になりつつあるお茶会をしていた。

そして、ソレンヌ嬢はお茶会開始約3秒で泣き崩れたのである。

私は何事かと思わずエド嬢に目を向けるも彼女はテーブルの上に並べられた大量の茶菓子を頬張るのに夢中でとても説明などしてくれる様子は一切ない。



「ソレンヌ嬢?レナルド王子がどうかしたの?」



私はエド嬢からの説明を諦めソレンヌ嬢にハンカチを差し出しながら問うことにした。ソレンヌ嬢は礼を言ってハンカチを受け取り涙を拭いながらことのあらましを話し出した。



「本日もまたルイス王子と御一緒に悪戯に勤しんでおりましたので、わたくしもお姉様を見習って将来レナルド王子の隣に立つものとして他人には迷惑をかけないようにと注意しましたの……」



本当にあのバカ王子共は学習なさらないらしい。だが、それよりもとうとうレナルド王子に注意してしまったのか。ストワでのソレンヌ嬢はエド嬢の従姉妹ということもあり戦闘狂もとい戦闘民族の血を継いでいるからか元々気は強い方である。

スタン様がいなくなった今、王太子となるのはレナルド王子でありソレンヌ嬢はその婚約者である。その為、イタズラ兄弟である王子達に注意出来る唯一の存在であり、口煩く王子達には上に立つ者の自覚を持つように注意していた。それもこれも、レナルド王子の将来を心配し愛ゆえに行ってきた行為であったのだが、王子にはその気持ちが届くことはなく、ぽっと出のヒロインに想い人を奪われてしまうのだ。

レナルド王子はソレンヌ嬢の口煩さに辟易しており激を飛ばすソレンヌ嬢ではなく包み込み甘やかしてくれるヒロインに惚れたのだ。ならば、そのソレンヌ嬢の役割を私がしようとレナルド王子とルイス王子への注意を行っていたのだが、実質、年上の私より始終行動を共にするソレンヌ嬢の方が適任ではある。今は宥める程度であったが、恐らく我慢の限界で厳しく注意をしてしまったのだろう。



「そうしましたら、レナルド王子にもルイス王子にも指図するんじゃねぇ!と怒られてしまいましたのっ。怒ったお二人はわたくしの事を無視するようになりまして……わたくし、わたくし、……レナルド王子に嫌われてしまいましたわああぁぁ」




そこで気にするのがレナルド王子だけっていうのがソレンヌ嬢らしいよね。

ソレンヌ嬢はこの世の終わりとでも言った形相で泣き叫ぶ。防音設備のされた部屋で良かったと思いつつソレンヌ嬢を慰めようとした時、それまで食べる事にしか意識が向いていなかったエド嬢が口を開いた。



「ソレンヌ、気にする事無いって言ってるじゃん。何も男は王子だけじゃないんだし。もう、王子達のあの性格は治らんだろうから諦めなよー。嫌われたもんは仕方ないって」



おいこら。追い討ちかけてどうする。

ソレンヌ嬢も私もエド嬢の言葉に唖然とするも、ソレンヌ嬢は案の定更に泣き出した。



「エド嬢、しっ。貴方は何も喋らずケーキを食べていなさい」

「はあーい」



私はこれ以上エド嬢が追い討ちをかけないようにまだテーブルの上に置かれた色とりどりのケーキ指さす。

大人しく再びエド嬢がケーキを食べだしたのを確認して私はソレンヌ嬢の席まで歩み寄りテーブルに伏した頭部を撫でる。それに気付いたソレンヌ嬢は涙を止めて顔を上げ此方を見る。



「おねえ、さま?」

「ソレンヌ嬢は正しい行いをしましたわ。確かに、注意をするのはわたくしが請け負うように致しましたが常に一緒にいるわけでは御座いませんものね。ソレンヌ嬢、注意するのは勇気がいったでしょう?王子に物申して良いのかと怖かったでしょう?だけど、他のご令嬢には王子に意見するなど出来ないからレナルド王子の婚約者である貴女が注意なされたのでしょう?よく頑張りましたね」



レナルド王子とソレンヌ嬢の仲を取り持つ方法はまだ思い浮かんでいない。

だが、彼女の行いは次期王太子妃として正しいものである。その為少しでも気負いしないように私は彼女を褒めることにした。ソレンヌ嬢は私に抱きついてまた泣き出したが、取り敢えず双子王子には後日私からもお灸を据えさせて貰おう。




「それにしても、ソレンヌはどうしてそんな酷いことされたり言われてもレナルド王子が好きなの?それに、レナルド王子とルイス王子ってどっちがどっちなのか未だに見分け付かないし見分けつくのってソレンヌと姐さんだけだよね」



ソレンヌ嬢の涙が漸く止まって落ち着いた頃にエド嬢が言う。

まあ、私の場合は後ろに控えているサビーヌがこっそりと教えてくれるのであって私自身も見分けがついているわけではないんだけど、サビーヌの能力に関しては私しか知らない事だから皆には黙っておく。



「あら、エドには話してなかったかしら。五歳の頃登城した時、わたくし、お母様とはぐれちゃって迷子になっていたのよ。わたくしが泣いている時にレナルド王子が現れ「僕も一緒に探してやるからもう泣くな」って言って手を握って一緒にお母様を探して下さいましたの。その後、すぐお父様が探しに駆け付けて下さったのですがその時の男らしいレナルド王子と言ったらもう……」



ソレンヌ嬢は両手を頬に当ててうっとりという。ソレンヌ嬢の恋を応援をしてあげたくもあるが、レナルド王子とルイス王子は常に一緒にいる。その為、私が近付こうとすると毎回ルイス王子に邪魔されるのだ。

ストワでも二人はよく一緒にいたが他人を寄せ付けない程ではなかった。それとも私だからルイス王子が邪魔してくるのだろうか。

ソレンヌ嬢にはそれとなくレナルド王子と上手くいくように口添えしたりもあるのだが、なかなか上手くいかない。



そして今日も一人、ソレンヌ嬢とレナルド王子の恋の行方に頭を悩ませるのだった。

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