表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/75

11話 イタズラ兄弟


それにしても何をしたんだ、このイタズラ兄弟は。



「御二方は何をなされたのでしょうか?」



二人の王子はじたばたと暴れてはいるものの全然声を発さない。いや、後ろ向きで分かりにくいが時折見える口元は二人とも開いていて怒った形相をしている。どうやら音だけがないようだ。

この先生、恐らく二人の王子にこの学園で作られている無音キャンディでも食べさせたのだろうかと貼り付けた笑顔が引き攣るのを我慢して尋ねる。無音キャンディとはひと舐めするだけでも十数秒は声が出なくなるという代物だ。



「ちょっとおいたが過ぎたのでお灸を据えたんですよ。レディのスカートをめくろうとしていたものですから」



おいおいおい、仮にも一国の王子が二人揃ってスカートめくりって。まあ、そりゃあ先生の対応もそうなりますよね。

それにしても、どの子にそんな事をしようとしたのか。ざっと辺りを見渡すも被害者らしき人は見当たらない。女の子8人程で固まり怯えてはいるが泣いているわけでもないし被害にあったというわけでも無さそうだ。私の両脇に引っ付いているソレンヌ嬢とエド嬢はケロッとしてるし、まさか幼馴染だからと王子もそんな事するはずもないか。と再び女子軍に目を戻したのだが、


「ああ、捲られたのはソレンヌ嬢とエド嬢ですよ」


私の視線に気付いた先生がしれっと教えてくれる。


お前達やったんかーい!!


という突っ込みはさて置き。

先生のその発言に何故か二人はドヤ顔で私を見ている。



「私は常に動きやすいようにしてるのでその時スカートが捲れて大丈夫なようにドロ─────」

「ストープッッ!ですわよエド嬢?」


私はエド嬢の口を塞ぎスカートの裾を掴んだ手の動きを制する。

この子今、ドロワーズって言ってスカート上げようとした?ちょっとミュレーズ家どんな教育してるんですか!!

まあ、私達の履くドロワーズはかぼちゃパンツみたいな形で確かに普通のパンツでは無いが、此処には男の子もいるのだ。しかも、その中にはエド嬢の婚約者もいる。自分の婚約者の下着情報など齢十歳で知りたくもないだろう。

恐らく、ドヤ顔していたソレンヌ嬢もエド嬢と同じで下にドロワーズの方を履いているのだろう。ここ数年、ソレンヌ嬢も私とエド嬢の模擬戦に参加するようになり力を付けてきているのだ。

本人曰く、レナルド王子の隣に立てるような強い女性になる為らしいが、多分、というか絶対意味を間違っている。間違って意気込んでるソレンヌ嬢が可愛かったから訂正しなかったけど。



「ルイーズ嬢、エド嬢を止めて頂きありがとうございます」

「いえ、慣れておりますので。それにしても、先生もこれからお忙しそうですね。何かお力になれることがありましたら申し付け下さいね」

「先ずはみんなと仲良くなる事が目標ですからね。大変なのは当たり前です。ははっ、では何かあった時はお願いしますよ」



私はラーゲル先生が受け持つクラスの顔触れを見渡し、微苦笑を浮かべる。

双子王子は勿論、何れ悪役令嬢の立場となるその婚約者にお転婆娘のエド嬢に負けず劣らずの筋肉バカな婚約者に攻略対象達が全員揃っているのだ。

因みに、私の前世での推しはラーゲル先生だった。こうして第一章の攻略対象達を見て思ったのだが、今は初めて元推しと対面しても何も感じないのだ。それに、他の攻略対象達も精神年齢が成人超えている私からすると子供過ぎて可愛いの一言しかない。

ドキドキするのも恋しくなるのも今やあの方しかいない。こんなにも胸が苦しく、寂しく、だけど彼を思うだけで胸の周りが暖かくなる。早く、ジル様に会いたいなぁ…と思っていると急に音が戻って来たかのように甲高い声が聞こえ出した。



「僕の婚約者なんだから婚約者にイタズラして何が悪いんだ!」

「お前、僕達が誰か分かってるのか!父上に言いつけるぞ!!」




レナルド王子とルイス王子に漸く声が戻って来ていた。先生はそれを見越して既に二人を降ろしていたのだが、双子王子ほ腰に両手を当てて教師に向かって怒っている。


というか、レナルド王子よ。婚約者だからいいという理由にはならないからね!?

それに、ルイス王子に関しても権力を振りかざすのは最早口癖となりつつあるのでは無いだろうか。

これが更に大きくなるにつれてヒートアップするのかと思うと悪魔にしか見えなくなってきた。いや、初対面から既に天使の皮を被った悪魔でした。



ゴゴンッ



鈍い音が二連発。

ラーゲル先生が拳を作って二人の脳天に叩き落とした後だった。



「そのお父上であらせられる国王陛下から"他の子達と同様に接し、また悪いことをしたら罰して良い"と言われてますからね。あれ程言って聞かせたつもりでしたがまだ分かりませんでしたか?」



うん。こういう人でしたね。

確かに裏表のある人だったが、ゲーム内ではもっと優しさが全面に出ている人のはずだったと思うんだけどなと思いつつも、ゲーム開始時の双子王子の先生に対する態度は他とは違っていたからこんなところでその教育が行われていたんだなと密かに思った。

恐らく、此処に来る前のお灸が効いているのだろう、二人は瞬時に口を噤んで目を潤ませている。こういう所は可愛いんだけど口を開くとアレだ。

先生には二人の教育をもっともっと頑張ってもらわなければなるまい。特にルイス王子の。勿論、私の為に。



そして、それから何故か一つ年上の私まで彼等の仲良くなる為の歓迎会に混ざる事となった。

それにより、エド嬢の婚約者である北軍騎士団長を父に持つレオポルド・ラクロワ様と何故か仲良くなり後日模擬戦も申し込まれました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ