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10話 ストレンジ学園




『俺はジル。ジルと呼んでくれ』




「ふふふふふふ」


ジル様との逢瀬から約半年後、十歳となった私はダルシアク国が誇るストレンジを保持する子供達を育成する最大機関ストレンジ学園へと入学しました。

ジル様との別れは辛く悲しい限りでしたが、最後に言われた言葉。ジルと愛称でお呼びしてもいいと許可を頂く程までに仲を深める事が出来たのです!!



学園に入ってからは敷地には大きな結界が張られ敷地内でしかテレポートは出来ないようになっている。あれから更に一年が経ち彼には後約四年後の再会まで会うことは出来ない。それに、会いに行けたとしても、彼は十歳になる年にマラルメ国第一王子付の侍従として仕える事が正式に決まったので今も彼の側近としてともにマラルメ国の学園に通い、休暇には師匠である野暮男の元で訓練をしたり王子に付きっきりになっているだろうから会うことが出来ないのだ。


それにしても後四年は長い。後四年もジル様がいない生活をしなくてはならないのだ。ジル様にお会いしてからというもの会わなかった一年以上をどう過ごしていたのかなどすっぱり忘れてしまった。それ程までにジル様の補給が足りていない。その為、私は今日もある物を手にそれを眺めながらスタン様とジル様の別れの言葉を交互に脳内ループさせて口元に笑みを浮かべ別次元へと飛んでいた。




「……、お嬢様。その不気味な笑い方はお辞め下さいと何度も注意申し上げているではありませんか」



サビーヌが呆れた表情でそう小言を洩らす。私達は今、学園の敷地内にある喫茶店のテラス席にいる。

サビーヌは周りを気にして言っているのかもしれないが、四月とはいえ今はまだ冷え込む。その為、テラス席にいるのは私を含めても3、4人だ。それも、店内から溢れてしまった平民出自の人達で、私の席の近くに来ようとするものは一人もいない。

私は寒いのは嫌いではない。だって、あの方の近くにいるような気がするんだもの。



「思い出すくらい良いじゃない。だって、最後の最後で愛称で呼ぶ許可を下さったのよ?それって、もうわたくしの事を気になってるって事ではなくって?」



私はあの日の事を思い出すだけでも嬉しくて鼻息荒くサビーヌに力説する。



「お嬢様。厳しいようですが、早とちりは泣きをみますので慎重に参りましょう。」

「うっ。分かってるわよぅ。でも、気があるかもって、少しくらい夢見てもいいじゃない」



サビーヌの言い分も分かる。計画が始動してまだ四年。現段階では序盤でしかないのだ。大きな動きがあるのはジル様がこの学園に来てから。そこからが勝負時となる。

ジル様にとっては友達程度にしか思われていないかもしれないけど、再び別れてから六年も我慢するのだからちょっとくらい夢見てもいいと思う。

私がぶすっと頬を膨らませるとサビーヌは微苦笑を浮かべて頭を撫でる。完全に子供扱いだが、サビーヌは一年ほど前から私に対してずっとこんな扱いである。もう、十一歳なんだけどな…。



「お嬢様、来ます」

「ええ、分かっているわ」



私はサッと手に持っていたものをポケットにしまった。

その直後、目の前にピッピコが出てくるゲートの大きいサイズが少し開けた空間に形作る。



「お姉様ぁ。やっぱり此処にいらっしゃいましたわあ」

「姐さ~ん。ここで会ったが百年目!!」



先ず初めに二つの妖精が飛び出て来た。デジャブ。

ソレンヌ嬢とエド嬢である。その後にも何人か続いて出て来ているようで思わずまだ出て来るのかよとツッコミそうになったのは内緒。

今年新入生として入学してきた生徒の一部と教師を一人排出したことで現れたゲートは綺麗さっぱり消えて元の空間に戻っている。



「ああ、なるほど。君がいるからソレンヌ嬢もエド嬢もこの喫茶店で歓迎会をしたいって言ったんだね」



そう朗らかに言うのは、この学園の教師であるシーグフリード・ラーゲルベック先生だ。ラーゲルベック先生は新米教師でこの学園の卒業生でもある。そして、第一章の隠れキャラで攻略対象だ。



「お初にお目にかかりますシーグフリード・ラーゲルベック先生。わたくし、ルイーズ・カプレと申します。ルイーズとお呼び下さい。」



公式な場ではないので席を立ち簡易な挨拶とカーテシーで名乗る。



「流石初等部の、模範生と名高いルイーズ嬢。僕の名前まで既にご存知とは。しかし、改めて、シーグフリード・ラーゲルベックと申します。ラーゲル先生と呼んでくださいね。」



緑の落ち着いた髪色と瞳に優しい笑顔。全てから優しさが溢れ出ているのだが、そうでは無いことを初対面から覆して来るスタイルのようです。

私は、先生の両肩に担がれたある物体を見て思わず頬が引き攣る。



「ところで、あの……その肩に乗っているのは…」

「ああ、この子達はレナルド王子とルイス王子ですよ」



ですよねー…

どうみても、双子の王子ですね。うん。



変わらない笑顔で笑う先生の顔が怖く見えてくるのは私だけだろうか。

取り敢えず、何かを仕出かしたのは確かだろうなと思わず遠い目をしてしまった。



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