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4話 模擬戦と下準備



案の定、ミュレーズ邸の中に足を踏み入れてから早速模擬戦を申し込まれた。エド嬢ではなくアドルフ様に……

抜け駆けだとエド嬢が騒いでいたが突っ込むところはそこではない。

なにゆえ、8歳の少女が8つ年上の16歳の少年と戦わなければならないのか。

というか、アドルフ様あと二年で成人するはずである。成人間近の男性がいたいけな少女相手に模擬戦とは如何なものか。



「あの……本日は遊びに来ましたので模擬戦はまた後日──なんてのは如何」

「いいや、今日やろう。次なんていつ出来るか分からないしグエンの奴ガード堅いからなあ」



アドルフ様が言葉を被せて速攻で提案を却下する。


……グエン兄様連れてくるべきでしたわ。


なんて後悔するがもう遅い。

今から呼べない事もないがグエン兄様も忙しいだろうし、それに、アドルフ様とではなかったがエド嬢とは模擬戦を行う予定ではあった。

それに、エド嬢も勿論模擬戦を挑んで来ることだろう。アドルフ様とエド嬢で模擬戦の相手をすれば今回のとある計画の成功率が上がると踏んだ私は申し入れを受けることにした。



「承知致しましたわ。では、アドルフ様とエド嬢お二人の挑戦お受け致します」

「ルゥお姉様!?お二人も相手して大丈夫なのですか!?アドルフ様一人でもかなりの体力を消耗するかと思いますわ」



ソレンヌ嬢が心配して声をかけてくれるが心配ない。この世界にも回復薬のポーションはある。但し、ストレンジ持ちの作り手が作成しており、数が少なく高額な為貴族しか買えない代物だが。

しかし、今回はポーションは使わない。それに、私は回復系のピッピコがいるのでポーションも要らないんだけどね。ピッピコのことは陛下と重鎮達しか知らない上に無闇に人前に見せては駄目だと注意されているからピッピコも使えないが……


「心配してくれてありがとう、ソレンヌ様。だけど、大丈夫よ。無理はしないわ」



未だ心配そうにはしていたが、私の言葉にソレンヌ嬢は渋々納得してくれた。

それから、私達一行は訓練場として使用している広場へと向かった。



「アドルフ様、遠慮は無用ですわ。本気で来て下さいませ。でなければ、お怪我をする可能性がありますので」

「ほう。ルイーズ嬢がこの俺に怪我を負わせることが出来ると申すか。これは、楽しみだ。先ずは御手並み拝見と行こうか。本気を出すかどうかはそれから決めるとしよう」



両者自然体で向き合う。

アドルフ様は私の発言に気分を害した様子も無く興味深そうに好戦的な笑みを浮かべる。

アドルフ様にはこの対戦に集中して頂かなくては。サビーヌは今私の用事を受けて席を外している。その用事が気付かれない為にも私は彼の挑戦を受けたのだ。



「一本勝負。それでは始めっ」



エド嬢の合図で模擬戦が開幕した。


両者手には何も持っていない。先に動いたのはアドルフ様だった。彼は地面を蹴ると真っ直ぐに私へと向かってくる。私は直前で上空に飛び跳ねる。



ドゴォン────…



下を見るとそこには小さなクレーターが出来ていた。



「これを避けるとは流石だな。ルイーズ嬢」

「ふふ。アドルフ様、手加減は無用と申したはずですわ。アドルフ様なら地を抉るほどの力は秘めていますでしょう?」

「一撃で力量までも測るか。これは、思った以上だな」


アドルフ様の瞳が一度驚愕に見開かれるが直ぐに口角を上げて私の攻撃に備える。

私は片手を下に向けアドルフ様に向かって水流を打っ放す。



「くっ…」


アドルフ様は避けることはせずに水流を直に受ける。だが、そこには大きな盾がありその盾で身を守る。

彼のストレンジは自由自在に体の一部を武器に変化させることが出来るのだ。

その強度は下手な職人が作ったものより頑丈だ。

先程のクレーターも右手をハンマーに変えて打ってきたものだった。

私とアドルフ様の攻防は一時間に及んだ。まだまだ余裕はありそうだが、アドルフ様の息が少し上がって来ていた。



そろそろかな。



私は、この戦いに終止符を打つ為両手を上空へと向けた。



「アドルフ様、これが私の取っておきですわ。これを止めることが出来ましたら私の負けを認めましょう」

「はぁ、はぁ……いいだろう。来い!ルイーズ嬢!!受けて立つ!」



「はあぁぁぁっ」



私は声を上げて両手を上から下に降ろす。すると、何も無かった空間から大量の水が滝の如くアドルフ様に降り注ぐ。



「ぐっうう……」


アドルフ様は片手では防ぎ切れないと判断したのか両腕を盾に変えて身を守る。だが、まだまだ水の威力は衰えない。

やがて、アドルフ様は片膝をついて力尽きた。私の勝利だ。

これでアドルフ様の体力は大幅に削ぎ落とすことに成功したことだろう。



「予想以上の強さだったよ。また、手合わせを願えるかな」



模擬戦が終わり、アドルフ様が肩で息をしながら私へと手を差し出す。


「勿論ですわ。最後はつい本気になってしまいました。お怪我は御座いませんか?」

「ははっ、本気だった割にはあまり息が乱れてないようだけどな。この後はエドとも一戦するんだろう?みっちり扱いてやってくれ」

「扱くだなんてそんな……」



私は差し出された手を握り笑顔で対応する。アドルフ様に言われエド嬢を見遣ると彼女は既にフィールドに立ち大きな斧を片手にブンブンと振り回して気合い十分な様子だ。

彼は私とエド嬢の模擬戦を観戦していくようで、ソレンヌ嬢と一緒にお茶をしながら観戦していた。


エド嬢との模擬戦は私はストレンジを極力使わずに体力と力だけで対処していく。

彼女は身体強化系のストレンジで50キロはあるだろう斧を軽々と振り回している。私はそれを避けたりいなしたりして攻撃を防ぐ。時折、小さな水泡を彼女に飛ばすが尽く斧で切られたり防がれたりしている。

私がアドルフ様と同じ戦い方をすると、エド様ではまだ対応仕切れないと自覚しているから彼女自身も文句は言わない。それどころか、口元には笑みを浮かべてどうやって私に一撃喰らわせようかと戦いながら思考している。


私はそんな彼女が嫌いではない。だから、毎回彼女からの挑戦を受けて手解きのような事をしている。

だか、そろそろ30分は経った頃だろう。ここいらで終わらせないといつまでも終わらない。

それに、サビーヌはとっくに用事を済ませて戻って来ており、ソレンヌ嬢とアドルフ様の後ろに他の侍女たちと混ざって立っていた。


サビーヌにチラリと視線を向けると視線に気付いたサビーヌが小さく頷く。どうやら、計画の第一段階は無事成功したようだ。


私は両足にぐっと力を篭めてエド嬢の前に飛び出す。エド嬢がそれに合わせて斧を振り下ろすが即座に軌道修正をしてエド嬢背後を取る。



「それまでっ」



ソレンヌ嬢の掛け声に模擬戦が無事終了した。

私はその後エド嬢と共にお茶会に混ざり少ししてから計画を決行する為に花摘みだと言ってサビーヌを伴って一度席を立った。


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