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13話 悪役令嬢は他の悪役令嬢と仲良くしたい



国王陛下との謁見から数日後。

第一王子スタニスラス様の訃報が世間に発表された。


恐らく、訃報を発表する事でスタン様に放たれた暗殺者の手を緩める為だろう。

フェイクの葬儀も終わり落ち着いた頃、私は再び王城に招かれた。

それは、側室のレリア様が開かれるお茶会に参加する為である。側室は二人おり、第二王子と第三王子の実母であるレリア様。第四王子の実母であるエミリエンヌ様。

言い方は悪いが二人共、子を産むためだけに王宮に召し上げられた身である。正妃のエヴリーヌ様はダルシアク国と長年友好関係にある隣国、マラルメ国の姫君であり、国王陛下とは政略結婚であったが幼馴染でもあった二人は相思相愛で恋愛結婚でもあった。しかし、なかなかお子に恵まれず国政の為二人の側室を娶る事となった。エヴリーヌ様と第四王子の母君であるエミリエンヌ様の仲は良好であったのだが、第二王子と第三王子の母君レリア様は王妃の座を虎視眈々と狙っているという噂が絶えなかった。







「レリア様、ご機嫌麗しゅうございます。此度はお茶会に御招き頂き誠にありがとうございます」



模範のようなカーテシーで庭先に座るご婦人へと挨拶をする。



「おお、良く来た。ルイーズ嬢よ。さあ、此方にいらっしゃい。皆貴方を待っていたのよ」



このお茶会の開催者であるレリア様は粗野な言葉で持て成す。相変わらずの様子に一瞬眉宇を寄せるも直ぐ様笑みを貼り付け促されるまま席に着いた。

率直に言おう。私はこの方が嫌いだ。王妃様を殺した張本人でもあるのだ。

その事実が判明するのは第二王子のルートなのだが、如何せん今は証拠もない上に第二王子と私は全くの他人である。

私は胸の中に渦巻く黒い感情を抑えて彼女に笑いかける。



「本日はお日柄もよく、このような場を設けて頂けたことにレリア様には感謝の念に尽きませんわ」


「まあ、ルイーズ嬢はまだ7歳なのに聡明だというのは本当のようですわね。ルイスの婚約者には勿体ないわ」


「そんな事は御座いませんわ。わたくしのような若輩者はまだまだ未熟で御座いますので日々精進致しております。それに、ルイス王子のような素敵な方の婚約者"候補"になれてわたくしも嬉しく思っておりますわ」



私はにこにこと年相応の笑みを浮かべながらレリア様と会話をする。

途中、聞き捨てならない単語に青筋を浮かべかけたが気合いで押し切り訂正を加える。


ルイス王子の婚約者などとんでもない勘違いをしてくれるな。そんな念を込めながら訂正したのだが、レリア様には一切伝わっていないようだ。

だが、ルイス王子の婚約者候補に選んでくれた事には少なからず感謝している。何故なら、このお茶会に参加出来たのだから。

このお茶会は、第二王子と第三王子の婚約者又は婚約者候補全員を呼んだお茶会だからだ。

レリア様は第二王子と第三王子を呼んで数刻共に過ごしたら少し離れた庭先に用意されている大人のお茶会に参加される。そのテーブルには私のお母様や各婚約者候補達のお母様方が招待されているのである。

このお茶会は、レリア様が第二王子と第三王子の婚約者を正式に決める手前の下準備というところだろう。このお茶会でレリア様のお眼鏡に適わなかった者達は次回からは呼ばれることは無い。

親から色々と指導されている者達もいるだろうが…ざっと見20人前後の令嬢が集められている。恐らく、第二王子と第三王子で半々の婚約者候補達だろう。さて、今回のお茶会で何人がレリア様の目に留まるか。

そんな事を考えながらレリア様と会話を続けていると綺麗な女性を伴ってまた一人の令嬢が庭園に踏み入ってきた。



「お久しゅう御座います、レリア様。此度もまたお茶会に御招き頂き誠にありがとうございます」



私の背丈よりも少し小柄で光を反射する髪は神々しく、薄緑の瞳に羽二重肌。髪の量はやや多めだが均衡のとれた顔立ちにその姿はまさに神秘的な森の奥に棲む妖精のようだと目を奪われた。大人になったら隣の女性のように聖女のような姿になるのだろうか、等と考えていると彼女達はレリア様と少しお話した後女性の方はご婦人方が座るテーブルへと向かい、妖精のような令嬢は私の隣の席に腰掛けた。私は心の中でほくそ笑む。彼女は後の第二王子の婚約者となるソレンヌ・ペルシエ嬢である。

私は今日この日、この時を待っていた。

後は主役である二人の王子が来るのを待つだけだ。


隣に座った妖精…ソレンヌ嬢は此方をちらちらと見て落ち着かない様子だ。私は可愛いなぁと心の中で笑いを堪えながら年上である私から彼女に話し掛けた。


「初めまして。わたくし、カプレ公爵家が長女ルイーズ・カプレと申します」

「あ、えっと。わたくしはペルシエ公爵家の長女ソレンヌ・ペルシエと申します」

「ソレンヌ嬢のことは以前宰相のジョゼフ様からお話を伺った事がございますわ。ソレンヌ嬢はとてもヴァイオリンがお得意だとお聞き致しましたわ」

「お父様ったらそんな事をっ。わたくしなんかまだまだですわ。とても人様にお聞かせ出来るようなものでもないですし」



ソレンヌ嬢は話しかけられた事で嬉しそうに表情を明るくするが、私の発言に頬を赤く染めて恥ずかしそうに俯く。

第一印象はまずまずといったところか。

ソレンヌ嬢と知り合えただけでも大きな収穫だ。これからもっと仲良くならなければと息巻きながら王子達の登場を待った。


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