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12話 真実



陛下は玉座へと戻ると私にも椅子に座るように促す。

一寸の沈黙が部屋を制し漸く陛下が重い口を開いた。



「我が愛しき正妃であるエヴリーヌが一ヶ月前に亡くなったがその原因は存じておるな」

「はい。流行り病でお亡くなりになったと聞いております」



私は、王妃様にとても可愛がって貰った。スタン様と距離を縮めることが出来たのも王妃様が後押しして下さり、色々と教えて下さったからだ。

葬儀の時も散々泣いたが、王妃様の事を思い出すとまた泣きそうになる。



「実はエヴァが命を落としたのは流行り病では無い」



国王陛下の証言に私は涙を耐えながらも、心の中で「やはり」と呟く。だが、私が既に知っている事を悟られてはいけない。


「それはっ、どういう事ですか!?流行り病では無いというのは!?」


私は衝撃の事実に目を見開く演技をする。

だが、陛下の真実の言葉を聞いたことで私の中にある感情がふつふつと湧き上がる。陛下の表情が如実に語っている。私が知っている真実と相違無いのだと…。



「エヴァは……殺されたのだ。」

「そん、な……まさかっ」

「毒殺だ。まだ犯人は分かっていない」



それ以上何も言えなかった。いや、何と答えたらいいのか分からなかった。

私は顔を俯かせて、両手をきつく握り締める。強く噛み合わせた奥歯から血の味がするが込み上げる感情を押し留めるのに精一杯で気にしている場合ではなかった。

如何して、王妃様が亡くなる前に思い出さなかったのか……

記憶が戻るなら王妃様が亡くなる前に思い出せば第二のお母様と思っていた彼女を失うこともなかったのに。


「犯人については現在捜索中だ。そこで、詳しくは教える事は出来ないが調査中に正妃のただ一人の子であるスタニスラスが危険に晒されていることが分かった」


陛下は一度そこで言葉を切る。再び、静寂が部屋を支配し陛下が両手を組み両膝に肘を着いて組んだ手の上に額をつける。



「我は、スタンを隣国に亡命させる事にした。だが、何処から情報が漏れたのかスタンを乗せた一行が奇襲にあった。スタンは一命を取り留めたのだが……」



陛下は一度私へと視線を向ける。

心臓を鷲掴みされているような感覚に陥る。胸が痛くて堪らない。何十回何百回違っていてくれと願った事だろう。



「スタンは記憶喪失になっており、今現在我の心の置ける者に面倒を頼んでおる」



嗚呼。やっぱり、……貴方は忘れてしまったのですね。



「一命を取り留めたことは、幸いで…御座いましたわ。……記憶喪失とは……どの、程度なのでしょうか」



紡ぐ言の葉が震える。

動悸が早くなる。嗚咽が込み上げてくるのを気力で押し留める。

本当は聞かなくても分かっている。あなたは……


「スタンとして生きてきた人生全てだっ」



陛下は完全に顔を俯かせてしまった。声音から泣いている事が分かる。

運命とは如何してこうも上手くいかないのでしょうか。

一ヶ月。後、少しだけでも早くに記憶が戻っていれば悲しむ人が居なくなっていたのに。神は……いいや、此処では始祖様だったか。どうやら運命と始祖様は私の事が嫌いらしい。


私は涙に濡れた瞳に決意を宿す。運命に抗ってやる。神なんて信じない。私は自分の力で幸せを掴んでみせる。

この先、何が起ころうとも!!



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