8話 状況整理をしましょう・後編
あー……私って何時模様替えしたかしら?それに狭くなった?
いや、元からこうだった。
これが私の部屋の正しい在り方。
だからお願い、お母様っ……そのデッカイ物体に無邪気に抱き着かないで下さいっ!!!!
「ずっと抱き着いてみたくてウズウズしてたのよぉ」
頬を染めて恥ずかしそうに言うお母様は水色の物体に無邪気に抱き着いて少女のようにはしゃいでいる。
母曰く、「もっちもちのぷよんぷよんよっっ!!」らしい。
今までみんな見て見ぬフリしてくれていたのにこれはどうしたものか………
実はお父様もお兄様達も部屋の中に入らず入口で会話していたのはこの水色の物体が部屋の7割の面積を占めていたからだ。
「お母様、本当にこの子が私のストレンジ暴走を止めてくれたのよね?」
「ええ、グエン達の話ではそうらしいわよ」
私が倒れる前にストレンジ暴走を起こし、その暴走を沈静化してくれたのがどうやらこの水色の物た……ピッピコらしい。
元は今手元にいる黄色のピッピコと同じサイズだったらしいのだが私の暴走したストレンジ、水力を全て飲み込んでこの巨大サイズにまでなったらしい。
因みに腕の中にいる黄色いピッピコは私の回復に力を貸してくれてくれていたらしい。
それにしても何故このピッピコ達が急に出てきたのだろう。
「お母様、もう一度お聞きします。本当にこの子達はお母様やお父様が連れて来たピッピコではないのですよね?」
「あら、こんな強いストレンジ持ちのピッピコは何処の店を探しても居ないと思うわ。王城への献上級なのよ」
そうだよなー。
この子達のストレンジはピッピコの中では伝説級だ。それに、ピッピコは本来飼い主のストレンジを供給しないと強い力は出せない。
それを、この二匹は単体で大人一人分のストレンジを保持している。
今のこの国にこれ程のストレンジ持ちのピッピコはいないだろう。本当にこの子達を私が召喚したとでもいうのだろうか…。
実を言うと別に見覚えが無い、という訳では無い。しかし、それは前世のゲーム内の話だ。
ストワのイベントで偶に強力なストレンジ持ちのピッピコが景品として上位3名限定で配られることがあった。
ゲーム内ではどれだけ野生のピッピコと戦っても絶対に手に入らない伝説級のストレンジ持ちだ。私は給料の殆どをストワに注ぎ込んでいたから常に上位に食い込んでおり、今まで配られたピッピコは全て持っている。
だけど、万が一にも私のピッピコだとしても今まで何処にいたのか。そして、何故急に現れたのか。分からないことだらけだ。
「ピィッピ」
考えても分からない答えに嘆息を漏らすと腕の中から首を傾げる動作をして此方を見上げる黄色のピッピコが鳴き声を上げた。
「ん?どうしたの?」
「ピイッコォォォ」
どうしたのかと問い掛けるといきなり黄色のピッピコは腕の中から跳ね上がった。落ちる!と思って慌ててキャッチしようとすると目の前に金色の光が発せられその眩しさに目を眇る。
金色の光は徐々に輝度が落ち着き目が開けれるようになり、その根源を見遣る。そこには四角に区切られた空間が出来ておりその先は別空間となっており緑が見える。
「ルゥちゃん?あら?黄色い子はどうしたの?」
私の異変に気付いたお母様が問い掛けるがどうやら急遽現れた別空間には気づいては居ないようだ。
私にしか見えていないのか。
中を覗いてみると、先程の黄色いピッピコがいた。無事な事に安堵しつつも更に奥に目をやると私の動きは止まった。
そこにいたのはざっと見20匹は下らないだろうピッピコの集団がいた。それも、黄色と水色と同じくらいのストレンジ持ちと思われるピッピコが。そして、それらは前世で報酬として受け取って育ててきたピッピコ達だった。
20匹はいるであろうピッピコ達は各々此方を見つめその丸い瞳をキラキラと輝かせて飛び跳ねて明らかに喜んでいるのが分かる子達もいる。
うん、犯人は私だったのね。そして、伝説級のピッピコが20匹も……どうしましょう。
そして、私は軽い頭痛を覚え小さな頭を抱えるのだった。




