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7話 状況整理をしましょう・中編



"但し、一つだけ条件がありますの"



そう言って真面目な表情でお母様を見つめるとお母様も真剣な眼差しで応えてくれる。

一家臣に過ぎない、それもただの7歳の子供が国王陛下のお言葉に条件を付けて返すなど正気の沙汰では無い。しかし、お母様は咎めることも窘めることもなく受け止めようとしてくれている。

そんなお母様に私は感謝しながら口を開いた。



「わたくしを第三王子の婚約者ではなく、婚約者候補としてでしたらそのお話お受け致しますわ」



私が嫌だと言えばお母様も娘に甘いお父様も私の意見を尊重してくれただろう。

だけど、私は第三王子の婚約者候補となることを選んだ。そして、それはお母様も想定外だったのか目を見開いている。

恐らくお母様は私が第一王子が戻ってくる事があれば再び第一王子の婚約者候補に据える事が条件だとでも思っていたのだろう。

しかし、あっさりと婚約者候補だが、第一王子の婚約者候補から外れることを受け入れたのだからそれは驚きだろう。



「婚約者ではなく婚約者候補というのは旦那様に話せばどうにかなるとは思うわ…だけど、その…ルゥは本当にいいの?だって貴女あんなに───」



まだ決定したわけではないが私の条件が親に受け入れられた事に安堵しつつも言い淀むお母様に苦笑を漏らす。

お母様が私のことを心配して何が言いたいのかを汲み取ったからこそ私は敢えて言葉を遮った。



「いいの。心配してくれてありがとう、お母様。わたくしは大丈夫ですわ」



"スタン様を諦めたわけじゃないから"という言葉はすんでのところで飲み込む。

私はよもや齢7歳とは思えない哀愁を孕んだ笑みを浮かべこれ以上は何も聞かないでくれと雰囲気で制する。


これで第一王子の死を悟り未だ思い続けながらも公爵家の令嬢として将来を見据えて第三王子の婚約者候補になる決意をする可哀想なルイーズというイメージがお母様の中に植え付けられたことだろう。

両親を騙す事に心を痛め心の中で謝罪しつつも今後の為に私は来るべき未来の為に備える。恐らく、数日後には第一王子の訃報が入る。既に第一王子の進む道は決まってしまった。

何時までも、いない人のことで時間を無駄にするのは愚の骨頂だ。嘆くのは全てが終わってそれでも駄目だった時だけでいい。



「分かったわ。この話はわたくしから旦那様に話しましょう」

「ありがとうございます。お母様」



お母様は私の決意を受け取って一つ小さな息を吐くとこの話題に終止符を打つ。

それから一変してお母様はにっこりと見惚れる程の笑みを浮かべて顔を寄せて来た。

私はその態度に若干身を引きつつ驚きに目を瞬かせる。



「ところでルゥちゃん。その子達は何処で拾って来たのかしら?」



お母様は膝に置いたままになっていたピッピコを指差す。

ピッピコは既に目を覚ましており丸い瞳を此方に向けて見つめていた。



「分かりませんわ。目が覚めたら──って、()?」



私はお母様の発言に違和感を覚え首を傾げる。

すると、お母様は「うふっ♡」という幻聴が聞こえそうな程の良い笑みで手のひらを返して背後(うしろ)を指す。



そこには、水色の壁があった。

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