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7 『魔女のラーメン プレミアム』

 ぼうっとしている場合ではないと気付いたのは、お昼が過ぎて、冒険者たちに声をかけられてからだった。

とうもろこしについては後で考えよう。

三日後までに1000食分の『魔女のラーメン』と『魔女のスープ』を用意しなくてはならないのだから。ラーメンだけだと思ったから三日後って言ったのに。まさかスープ込みだったなんて。はぁ。大変だよ。

 とはいうもののお客さんがいるのに店を閉めるわけにはいかない。

 ラーメン作りやスープ作りは魔法も使うからそれほど苦にはならない。問題は袋詰め。一人で1000食分、チマチマと詰めるのは勘弁してほしい。


「お姉さん、これください」


 悩んでいると冒険者の卵、アルフォンスが『魔女のラーメン』二袋と『魔女のスープ』をカウンターに置いていた。


「トンタイの森に行ってたの?」


 冒険者の卵であるアルフォンスはまだダンジョンには行けない。トンタイの森でウサギや鳥を狩るか、薬草採取をして稼いでいる。まだ10歳。正式に冒険者になるには後三年必要だ。

 アルフォンスとの出会いは三ヶ月前のことだった。200エールを持って『魔女のラーメン』を買いに来たのだ。けれど『魔女のラーメン』を買っても店から出ずに、ポーションを眺めていたので声をかけた。この店に来た冒険者のほとんどはポーションを無視しているからポーションを見ている彼が気になったのだ。


「このポーションは病気も治るって本当?」


 初級ポーションを指差して尋ねてくる。

 冒険ギルドで売っている廉価版と違って、魔女のポーションは病気も治る。初級ポーションでも風邪くらいならあっという間に治る。


「そうね。病気によるけど風邪くらいなら治るわよ」


「母ちゃんの咳がずっと続いてるんだ」


「どのくらい?」


「一ヶ月くらい」


 それは大変だ。肺炎になっているかもしれない。肺炎だと薬師の薬では治らないだろう。

 同情でこのポーションをあげるのは簡単だ。でも店を開いている以上それはできない。

 でも肺炎にまでなっているなら猶予はない。この世界では人が簡単に亡くなってしまうのだから。

 どうしたものか。いずれお金を払ってもらうのでもいいけど、この歳で借金させるのも可哀想だよねっと思った私はある商品を彼に渡すことにした。


『魔女のラーメン プレミアム』


 店で売っている『魔女のラーメン』のパッケージの色はオレンジ色。このプレミアムのパッケージの色は黄色。

 『魔女のラーメン』にも元気になる薬草が多少入れてある。栄養素も考えているラーメンなのだ。プレミアムには何が入っているかというと魔女のポーションが入っているのだ。

 魔女のポーションにも消費期限がある。保存箱に入れていれば長く持つけど店で売っている分は売れないから一月くらいで処分しなければならない。それでも商品は置き続けなければならない。それが祖母の遺言だから。

 そこで考えたのが消費期限が来る前に加工できないかってこと。魔女のラーメンに使えば長く持つのではないか。それで出来上がったのが『魔女のラーメン プレミアム』。どのくらいの期間使用できるのか、本当にポーションと同じくらいに効果があるのか、まだまだ検証が必要だから店で販売はできないけど、モニターにちょうどいいと思いアルフォンスに渡した。

 結果として、プレミアムラーメンを食したアルフォンスの母はあっという間に健康体になった。



「お母さんは元気にしてる?」


 あれから三ヶ月も経っているけど、気になったから様子を尋ねる。


「うん。元気だよ。前に働いてたところは咳が出だすとすぐにクビになったんで、今は仕立物とかしてるんだ。オレがもう少し稼げたらいいんだけど、後三年はダンジョンに入れないからなぁ」


 しょんぼりとうなだれたアルフォンスを見て、良いことを思いついた。


「アルフォンス、今困ってるんだけど助けてくれるかな」


「もちろん。何でもするよ。足りない薬草でもあるの?」


「『魔女のラーメン』を騎士団に納入しなければならないんだけど、数が多くて人手が足りないの。お母さんにここで働いてもらえないかな」


 アルフォンスは信じられないと大きな瞳を目一杯見開いている。私が本当だよと頷くと母親に言ってくると走って帰って行った。


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