18モフモフとフーフー
「だぁーーーーーー! また猫になったのかぁーー!」
曽祖母の部屋から出て、早速ポーションを飲んだマティアスは一瞬にして猫になった。
うん、まあ、そうだよね。
足元で喚いている猫には悪いけど、こうなるだろうとは思っていた。でも一度は確かめておかないとね。
曽祖母の呪いはそんなに簡単ではないようだ。納品されたポーションでなくても、騎士に影響するとなると、時間稼ぎもできないってことになる。ひと月で呪いを解呪しなければならない。
曽祖母の部屋から取り出せた、呪いについて書かれた本を見てため息をつきたくなる。
あれを全部読み終えるだけでひと月かかりそうなんだけど。
祖母から呪いについて学ばなかった事を後悔したのは初めてだ。
呪いなんて必要ないって、祖母はよく言っていた。あれは人の運命さえ変えてしまう危険なものだって。私も呪いという言葉の禍々しさに、嫌なものを感じていたから無理に触れようとは思わなかった。まさかそのしっぺ返しが私の代にこなくても良いのに。
私は足元にいる猫をジッと見つめる。これは私が避けていた呪いによっておこった現象。瞳の青さは変わっていない。
マティアスは騎士というだけあって立派な体格をしている。あの大きさがこんなに小さな生き物に変化するなんて不思議だ。
変化の魔法とは全く違う。これはすごいことだ。私の魔女としての血が騒ぐ。呪いは嫌だけど、その過程にはとても興味がわく。
この猫は被害者でもあるけど、研究対象でもある。そう思うと我慢できなかった。
「うわ! どこを触っているんだ」
本当に猫なのかを確認するために、あちこち触っていたら、猫の爪でひっかかれてしまった。
猫マティアスはフーフーと威嚇している。
「ごめんなさい。本当に猫になっているのか確認したかったのです」
ぺこぺこと猫に頭を下げる。毛並みの良いマティアスはもふもふだった。できるならもう一度堪能させて欲しいくらいだ。
間違いなくマティアスは本物の猫になっている。
「またやったら許さないからな」
フーフーしている姿も可愛いかった。
残念だけどもう触ることはできなさそう。
「ごめんなさい。もうしません。約束します」
私が何度も謝ると、やっと警戒態勢を解いてくれた。
猫の姿のマティアスは前足で顔を洗っている。気持ちを落ち着かせようとしているのだろう。
無意識の行動だろうけど、本当の猫のようだ。
マティアスが人間の姿に戻ったのは15分後のことだった。




