16 魔法の絨毯 3
時間制限二時間。
長いようで短い。探し物をするにはきっと足りないくらいだろう。
それでも時間内に呪いに関することが書かれた資料か、騎士団との契約に関しての資料を見つけ出したい。
最悪日記帳でも良いけど、できれば読みたくない。人の日記を盗み見するなんてダメとかではなく、曽祖母の日記なんて危険きわまりないからだ。どんな罠が仕掛けられているかわからない。
「ふむ、乗り心地は君の言うように安定しているな。絨毯が波打っているような感じだったから、揺れるのではないかと心配だったんだが」
マティアスは私の後ろに座って、絨毯を触って乗り心地を確かめている。
「絨毯が波打っているのは、私の拘りのようなものなので気にしないでください」
魔法の絨毯はやっぱりこう波打つ感じというか、風に乗ってる感じじゃないとって言う拘りだ。
マティアスから呆れた顔で見られたけど気にしない。この拘りがあるから、この魔法の絨毯だって完成した。魔女のラーメンだって、拘りがなかったらきっと完成しなかったはず。
「それにしても、思ったより広いな」
本来の目的を思い出したようで、曽祖母の部屋を物珍しそうに見ている。
「うちの敷地って結構広いんですよ。曽祖母の部屋は敷地のほとんどを使用してるんじゃないかって、祖母が言ってました」
というのは真っ赤な嘘である。曽祖母らしく魔法で空間をつないでいるのだ。でなければこんな大きな罠を仕掛けるなんて到底無理だ。
関係者でもないマティアスには話せないけどね。
「なんだ。空間魔法でも使っているのかと思ったよ。流石にこんな大規模な空間魔法の使用は無理か」
マティアスの前に座っていて良かった。一瞬だけ顔に出てしまったので、彼に気づかれないようにそっと息を吐く。
「どこに向かっているんだ?」
「曽祖母の机があるところです。確かこの辺りだったと記憶してるんですが、あっ、あそこです」
私が指差す方向へ絨毯が進んでいく。
「不思議だ。舵をとるわけでもないのに、君が示す方向へ進んでいる」
「魔法の絨毯だって言いましたよね。私の魔力で動いてるから、私の指示する方向に進むのは当たり前のことですよ」
「それだと万が一君が気絶した場合どうなる?」
「私がいなくなると浮かんだまま動かなくなりますね。絨毯が意思を持っているわけではないから、指示されないと動かなくなるんです」
「落ちることはないのか?」
「時間が来れば落ちますよ。制限時間二時間です」
「なるほど」
「まあ、そうなった時はマティアス様が動かすしかないですね。魔道具を使う時と同じ感じで、向かう方向を示せば良いだけですから簡単ですよ」




