15 魔法の絨毯 2
曽祖母の部屋は魔女マチルダの店の地下にある。
私はマティアスをその部屋の前まで案内した。
正直言って、一人で探した方が良くなっていたので断ったのだが、私が遠慮していると勘違いしたらしく、強硬に同行を申し出されて断れなかったのだ。
何故かマティアスには強く断れないのよね。
きっとあの青い瞳がいけないんだわ。あの瞳で見つめられるとつい頷いてしまうもの。
「ここなのか?」
「ええ、そうよ」
「普通の扉だな」
「罠は床に張り巡らされてるの。正しい所を踏まないと死ぬような目にあうのよ。それで考えたんだけど、今回はこれを使うつもり」
魔法の絨毯は昨夜のうちに、扉の前まで持ってきている。私がそれを叩いてみせた。
「それは絨毯か?」
「ただの絨毯じゃないのよ。魔法の絨毯なの」
扉を開けると絨毯を広げて部屋の中に投げ入れた。絹製のそれは緑色の生地に金色の横糸が入っている。
「変わった柄の絨毯だな」
「そうでしょう。私がデザインしたの」
私が自慢げに胸を張るとハッとしたようにマティアスが首を振った。
「そんなことよりどうして絨毯が浮かんでるんだ?」
そんなことって酷いわ。でも仕方ないわね。空中を飛ぶ絨毯なんて存在しないのだから。
「魔法の絨毯だって言ったでしょう? 少し小さい絨毯だけど二人乗るくらいならこれくらいで丁度いいわ」
「これに私も乗るのか?」
「そうよこれに乗れば、曽祖母の罠を回避できるでしょ」
「これに乗るだって? 二人も乗ったら落ちるんじゃないか? 絨毯ってペラペラしてるじゃないか」
「失礼ね。人間が五人乗っても飛ぶことができるように作ってるわ。乗ったらわかると思うけど、床の上を歩いてるのと同じくらいに安定しているのよ」
実はこれが一番難しかったのよね。
空飛ぶ絨毯を作るのより、絨毯の上に人が乗ることの方が難しいなんてね。空飛ぶ板にすればすぐに出来たんだけど、転生者としては絨毯にこだわりたかったのよね。
「な、なんてことだ。こ、こここれはもしかして空を飛ぶことができるんじゃないか?」
この世界で空を飛ぶのはまだまだ夢のような話だから、マティアスが驚くのも無理はない。
本当ならもっと自慢したいけど、それはまた今度にしなくてはならない。
「そうねえ。できるけど、今はそんなことどうでもいいことよ。この絨毯の飛行時間は2時間。それまでにこの部屋から、呪いに関しての資料を探さないといけないのよ」
マティアスは空を飛ぶことを頭からしめ出すためか、頭をブンブンと振っている。
「そうだな。今は呪いの方が重要だ」
無理やり納得させたような顔で何度も頷いている。




