14魔法の絨毯
『魔女のラーメン』と『魔女のスープ』の納品も無事に終わり、アルフォンスたち家族も従業員宿舎へ引っ越してきた。
部屋の窓から見える従業員宿舎の明かりにホッと息を吐く。アルフォンスは自分は従業員ではないからと最後まで遠慮していた。忙しい時は手伝ってもらうということで、やっと説得できた。
家族は一緒に暮らさないとね。
私は幼い頃に家族と引き離されて育った。血の繋がった祖母と暮らしたけど、魔女としての修行が目的だったから、師匠と弟子の関係の方が強かった。
幼い頃に引き離された両親、兄や妹と会うのは年に一度くらい。会ってもどこかしら他人行儀になってしまう。
幼い頃は母が恋しくて、寂しくて泣いたこともあった。
今はもう寂しくなんかないけどね。本当にね。
私は明かりから目を逸らして、魔法の箒、魔法の絨毯、魔法のランプ…、前世の記憶を頼りに作った物たちに目を向ける。実用性がなくてお蔵入りしたものばかりなんだけど、今回これを利用しようと思う。
曽祖母の部屋の罠を回避するには、マティアスのような騎士には向かないと気付いたからだ。
それというのも彼と話していて、彼の魔法は攻撃魔法が多いことがわかったからだ。
曽祖母の部屋がメチャクチャになってしまう。攻撃魔法くらいで、壊れるような部屋ではないけど、部屋の掃除をするのは私になるだろうから、できればそれは避けたい。
罠なんて攻略することを考えるより、回避するのが一番よ。
「魔法のランプはこすったら妖精さんが出てくるけど今回はあんまり役に立ちそうもないし、私一人なら魔法の箒でもいいけど、ここは魔法の絨毯の出番かしらね」
曽祖母の部屋の捜索が面倒だからってごねたのは間違いだった。私一人で探した方が、マシだった気がする。かえって面倒を抱え込んだような。
「まあ、いいわ。魔法の絨毯があれば罠に引っかかることもないだろうし、呪いのことも気になるしね」
声に出すと本当に気になってきた。
このままだと『魔女のポーション』ではなく、『呪いのポーション』なんて呼ばれるようになるかもしれない。そんなことになったら、今でも売れないのに、もっと売れなくなってしまう。
それだけで済めばいいけど、下手をすると営業停止なんてこともあるかもしれない。
ん? でも変ね。
マティアスはどうしてそんな店のラーメンやスープを騎士団に納品させたのかしら。
私に協力させるため?
確かにラーメンやスープの件がなかったら、曽祖母の部屋のことは話さなかったかな。だってあの部屋はカオスだから。
開かずの間にしておく方が一番だって祖母も言っていたもの。




