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10 『魔女のスープ」

 『魔女のスープ』もあとは袋に詰めたら、騎士団へ納入する分は出来上がりだ。

 なんとか納期に間に合いそうだ。

 ああ、そういえば冒険者ギルドからも『魔女のラーメン』について話があるって手紙が来てたっけ。冒険者ギルドとは廉価版ポーションのことで、昔は色々と確執はあったみたいだけど、私はたまに薬草採取の依頼をするために利用している。どうしても家にある薬草だけでは足りないこともあるからね。

 アルフォンスみたいな冒険者の卵たちは直接売りに来ることもあるけど、ダンジョン産の薬草は冒険者ギルドを通してでないと買えない決まりがあるから仕方がない。


 そんなことよりスープの材料については、納入する前に話しておきたい。

 マティアスが来たら呼んでくれるように背格好や容姿を話して、リリアに頼んでいるけど今のところ来店した様子はない。


困った。困った。困った。

このまま黙って納品しちゃおうかなぁ。


 ケイシーさんが袋詰めしている横で、テーブルに頭をぐりぐりして悩んでいるとリリアが作業場に入ってきた。


「魔女のお姉さん、銀髪のキラキラした人、店でラーメン食べてるよ」


 リリアの声にバッと顔を上げて、作業エプロンを取ると店の方へ急ぐ。



「あ、あの、えっと」


 マティアスを目の前にすると考えていた言葉が出てこない。

 背中には汗が流れている。

 マティアスはそんな私を気にする事なく、ラーメンのスープを最後まで飲み干した。


「スープの材料のことなら気にしなくて良い。確かにとうもろこしはこの国では家畜の餌にしか使われていないが、他所の国では普通に食べられているからな」


 マティアスは言葉に詰まっている私を見て、可笑しそうに笑ってそんなことを言った。


「へ? そうなんですか?」


「ああ、あのスープと似たような物をサイデリア国で飲んだ事がある。ただ昔飲んだのは、粉に湯を入れただけの簡単スープではなかったがね」


 なんと、とうもろこしを家畜の餌にしか使っていないのは我がグラシアス帝国だけってこと?

 なんて勿体無いことしてるの。とうもろこしって美味しいのに。ん? でも家畜の餌にしか使ってないから安く手に入るんだから私的にはいいのかな。


「はぁ。マティアス様も人が悪いですね。私が困ってるって知ってましたね」


「そんなに怒らなくてもいいだろう。君には、というか魔女マチルダにはとてつもなく迷惑をかけられたのだからね」


「迷惑? 私が? ラーメンのことじゃないですよね」


「君は私がこの店に来て、一番初めに聞いたことを忘れたのか?」


 マティアスがこの店に来て初めに聞いたこと?

 ああ、そういえば呪いのポーションのことで何か言ってたね。

 すっかり忘れてたよ。


「忘れてたんだな」


「ははは、だって私は呪いについては専門外だって言いましたよね。本当に全然習ってないから役になんて立ちませんよ」


「はい、そうなのかってわけにはいかないんだ。これは騎士団と魔女マチルダの契約に関係しているのだから。現在の魔女マチルダである君は嫌でも関係してくるんだよ」





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