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ドラゴニック・グランガルド  作者: こたろう
伝説の始まり
1/40

PART1

 夢でも良い。兎にも角にも、彼、錦 凛音は目の前の光景に感動していた。


 遥か彼方の上空から一望出来る大陸は広大で、緑の自然と荒々しい灼熱の火山、清らかなる湖から形作られていた。まるで漫画やゲームのようだと、それを目の当たりにする凛音は二つの眼を輝かせ笑顔を浮かべた。現状がどんな状態かも気にはならず、本物のその空気に圧倒されいつまでも大陸の姿を彼は見ていたいと思った。


 いつもの退屈な日常が嫌だったわけではなく、尊敬する両親も、親愛なる友人たちも居た。けれど、刺激が無かったことだけは確かで、しかし根っからの善人である凛音にとって刺激的な経験を得ることは難しかった。


 だから今度のような、まるで夢のような体験が彼にとって嬉しくて嬉しくて堪らず、例え本当に夢だったとしても構わないと、そう思えた。そんな凛音の右手を、ひんやりと冷たくて、けれど柔らかな感触が包み込む。凛音を見詰める大きな瞳、長い睫毛の奥にあるその瞳の瞳孔は猫のように細長くて特徴的で、けれどそんなことが気にならないくらい、柔らかそうな白い肌も、翡翠のような色をして煌めく髪も、全てが全て愛らしい姿をした少女。


 そう、彼女こそが凛音をこの地へと導いた。右も左も分からない凛音ではあったが、彼女のその眼差しだけはきっと信用できる。そして凛音自身を信頼してくれているように彼には思えて、今は興奮のあまり隠れがちになっている不安や恐怖が薄らいだ。気が彼にはした。


 少女は凛音を見て、そして次にその先に待つ壮大な大地を見遣る。凛音はそんな少女を見ながら、彼女に握られた己の手、そして凛音の方からも少女の手を握り返す。すると少女は微笑み、光を放ち始める。凛音は驚きながらも温かく心地の良い光の中で、これから始まる自らの運命に対し、覚悟を決めるのだった。


 ――その日、この大地に住まう全ての存在が空を見上げた。遥か天空を駆け抜ける光。きらきらと美しい輝きを放つその彗星は、今後始まるであろう波乱を彼らに想像させる。そして一つの伝承を思い起こさせる。


 ――かつて、遥かかつて、この世界が生まれるよりもずっと前、まだ世界も何も無かった時代。過去も未来も無い、時間の無いそこに神は居た。一つは人ならざる神。そしてもう一つは人なる神。二つの神はこれからを託す世界創造の為に対立し争ったという。人ならざる神は今はフォールンと呼ばれる異形の軍勢を、人なる神は王と呼ばれる三人を配下に戦った。やがて異形の軍勢を王はその内の一人を犠牲にしながらも打ち倒し、人なる神も己の存在と引き換えに人ならざる神を遥か外まで追放、戦いは終わりを告げた。神は自らの血肉を使い、創造した世界に人を生み出し、可能性と言う権能を与えた。そして残る王に彼ら人と人の住まう、これから永延と増え続けてゆくであろう世界を永劫に護るように告げ人なる神は消滅した。人々が住まう世界は、王たちの住まう世界とは違うところにあり、人々は王たちや王の配下の存在を知ることは無いだろう。しかし、王たちは今も人々と彼らの世界を見守っている。そしていずれ来るであろう約束の日に備えているのだ。


 ”ドラゴニック・グランガルド”

 かつてこの地を救いし英雄にして救世主がこの地に与えた名前。邪竜が蔓延りし時、無辜の竜たちを護りし救い主は遥か天空を駆ける彗星に乗りやって来るという。角も牙も爪も無い救い主は、しかし輝く一振りの剣と共に――

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