表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/26

6

  次の日

 一哉は秋と雪を連れて森に来ていた。

 もちろん朝一番にアルに送り出され、もとい追い出されたのである。


 この国ーヴィクベンシスは回りを海に囲まれた島国である。

 国の上側には広大な森があり、その面積は国土の半分近くを占めている。

 森は魔力で覆われ、中心に行くほどその濃度は濃くなっていく。

 そのためか、森で取れるものには少なからず魔力が宿り、それをもとに、この国は大きな発展を遂げたと言われている。

 また、森にはモンスターや魔物が出現し、それらを倒す専門職も出てくるようになった。




「あー。帰りたい」


 一哉は背を丸めて、だらだらと歩く。

 その姿からは、全くもって覇気が感じられない。

 一哉の呟きが聞こえたのだろう。

 前を歩いていた秋と雪が、ムッとした顔で振り返った。


「くだくだ言ってないで、探しなさいよ」

「一哉、うるさい」

「ひどいや、二人とも」


 泣き真似をしてみるが、冷めた目で見られるだけだった。

 アルに出された課題が難しい訳ではない。

 量が多いだけなのだか、その量が3人でギリギリ持ち帰れる量であるところに、アルの腹の黒さがうかがえる。

 まあ、新人の頃だったら本気で泣いていたかもしれないが。

 ただ、とてつもない時間がかかるのだ。

 加えて、戦うわけでもなく、ただただ探すだけなのである。


 はっきり言って、暇だ。


 そろそろ手応えのあるモンスターとか出て来てくれないかな。なんて思いながら辺りを散策する。


「あ、発見」


 草むらの影に潜んでいたモンスターを見つけ、こちらの存在が気取られる前に魔法を放つ。

 この程度のモンスターなら、ただ魔力を銃弾のように放つだけで消滅してしまう。

 一哉の魔力にあたったモンスターは黒い塵となって消え、その場には緑色に光る石が落ちていた。

 手に入れたそれを持ってきた袋に入れる。


「一哉、木の魔石、ばかり、見つける」

「そんな目で見ないでくれ」


 呆れたように見つめてくる雪の視線に耐えられず、一哉はそっと目をそらす。


「仕方ないだろう。ボクが決められるものじゃないんだ」


 モンスターから取れる魔石の種類はランダムである。


「まあ、土と風が取りにくいのは今に始まったことじゃないしね」


 先頭を行く秋が目の前に出てきたモンスターを剣を一振りさせるだけで倒す。

 そこから出たのも、木の魔石だった。


「...魔物でも出てきてくれたら、手っ取り早いんだけどな」

  ふてくされた顔で魔石を拾った秋は、それを一哉に投げつける。

「っと」


 一哉は難なく受けとると、持っていた袋に入れた。


「危ないだろ。いきなり投げるなよ」

「そういえばさ」

「無視か」

「あんた今回も魔法だけなの?」

「ああ、問題あるか?」

「特には」


 そう言って秋はまた歩き始める。


 今回、森にはいるにあたって、秋と雪はそれぞれ腰に剣を下げている。

 対して一哉は、なにも持ってきておらず、唯一手に持っているものは、集めた素材を入れた袋である。

 一哉が険を使えない訳ではない。

 秋は近距離、雪は近・中距離が得意であるため、今回は魔法による後方支援をすることで、バランスを取るためだ。

 

 目の前を行く雪に目を向けると、何か考えこんでいた。


「どうした雪、変な顔をして。腹でも壊したか?」

「...一哉、さいてー」

「無いわー」

「何なんだよ!」


 女子二人から軽蔑の眼差しを向けられる。

 地味に痛いものがあった。

 

「魔物、と、モンスター、の、違いに、ついて、考えて、た」


 雪はなんてことないことだと前置きして、先ほどまで考えていたことを話す。


「強さの違いでしょ?」

「それ、だけ?」

「他に思い当たらないもの」


 本当になんてことないことだったのだろう。

 秋の言葉以降、二人は興味を失ったように、その話題に触れることはなかった。

 

 その後も、適度にモンスターを倒し、素材集めは順調に進んでいく。

 三人とも怪我をすることなく、お昼が少し過ぎた辺りで、アルから課された量の素材が集まった。

 後は帰って、アルに報告するだけである。




  ...はずだった。
















「魔物が出たぞー!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ