地震
辺りは一変して、地震の脈動にゲンシは足元がふらつくのを堪えようと背中を壁につけ身の安定を図るのだった。
突如として起こった地震に掘り進めた鉱山跡から土埃が落ち、天井からの土塊がゲンシの頭にぶつかっては、地面に積み重なり辺りの可動範囲を狭めてくる。
「おいおい、こんな所で地震かよ?!」ゲンシは憤りと恐怖で先におこるであろう事態を想像する。ヘルメットのライトで完全な暗闇という状況では無いにしろ、天災に人間の力は非力である。内心の不安を露わにするゲンシであった。
地震が落ちついたのは、地震発生より20分後の事で、ゲンシの身体を覆うように被さった土塊は外からの光を遮るように積み重なっている。
ゲンシは地震にその身を揺らされ続け、軽い脳震盪に陥っていた。
視界はぼやけ、思考能力が著しく低下する中、どうにか身体への影響を最小限に抑えるべく、三輪付きの台車を逆さにして、その中に身を潜め、地震が鎮まるのを待つのであった。
20分後、地震が鎮まるとゲンシは台車をひっくり返し、ヘルメットのライトを頼りに辺りを見渡し、身体が自由に動かせることを確認して状況を知る為出入り口まで足を運ぶのであった。
石などのガラで頭をぶつけているせいか、意識がはっきりしないまま、出口の方角へと歩みを進めるゲンシであったが、すでに出口に着いてもおかしくない時間歩いているにも関わらず、一向に出口が見えない。
「く、おかしい、そろそろ出口が見えてもおかしくないのに、はやく一度休みたいよ。くそ!」
疲労を露わにするゲンシ。地震による影響からか体力が削られ、身体を休めたい気持ちが疲労感をより一層強くする。
出入口に向かって歩きだしてから2時間後、それは起きた。
突如としてゲンシの身体を激痛が襲う。腕からは突然、血飛沫が噴き出し、着ている服を血色に染め上げていった。
「っ!!!ぁ!」
声も出ないほどに突如として襲う激痛がゲンシの意識を奪うのは一瞬で、視界は暗闇に包まれいった。
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(何も見えねえ―ー。あーあ、もしかして死ぬのかなーー。好きなことに没頭しすぎて、目の前ばっか見すぎて、気づけば死んでいたパターンかよ。ハハッ。・・・笑えねえ)
ゲンシはそれまでの生き方というものにこだわっていたわけではないが、好きなことは出来ていたので、死んだところで後悔はない。
だが、やりたいことは多く、未達成であることに強い後悔があるのも確かであった。
ボーっとする意識を振り払い、ゲンシは辺りを見渡した。
闇が一面に広がる景色に、3つの光が見えている。
赤、黄、青。
それが意味するところは分からないが、ゲン
シは青が好きな為、青色の光を見つめていた。
「あなたが好きな色は青ですか?」
突然頭の後ろから声が聞こえて、ゲンシは声の方へ180度振り返った。
「あなたは?」