宝石視索人
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「かかってくるがいい!」
身に纏う7色のオーラ。
閃光の如き、その姿に触れるものを吹き飛ばす。
動きが止まり見渡せば、辺りにあるのは数千に及ぶ戦闘不能状態の兵士が散らばっていた。
宝石。
主に「美しいものであること」「希少性があること」「耐久性があること」という3つの条件が挙げられる。
しかしながら硬度に劣る真珠などが古来より宝石として認められてきたように、美しさが宝石と認めるに足るものであるという点が最も重要視されており、厳密に定義を当てはめることはあまりされず、宝石の種類は100種とも200種とも言われる。
また、スフェーンのように通常あまり宝石とされることが無いような鉱石であっても、一部収集家向けにカットされ宝石として扱われるような場合もある。
Wikipediaより。
2130年。
宝石を新しく発掘し、生活の糧にする「宝石視索人ほうせきしさくにん」と呼ばれる新職業が誕生した。
宝石視索人に求められるのは、形状記憶能力、状況判断能力、運動能力査定70点以上などがある。他にも細かい条件があり、その条件をクリアした者のみが宝石視索人としての資格を与えられる。
この職業が登場して、1年の間で2人の有資格者が誕生するという超難易度で、現実には1人は勉学の過労により身体に負担がかかってしまい、心筋梗塞で他界してしまった。
そうなると、有資格者が1人しか存在しない為、活動範囲を広げるには至らず、動けるのは国内に留まっていた。
「よいしょー!」力の入った声と共に腕を振り上げ、ツルハシで土を掘っては鉱石と思われるものと、土を振り分ける。
そんな作業を行う人間は自分しかいないため、カツンという音すらも、響くのは暗い洞窟の中だけあってより一層不気味さが増す。
「オレはゲンシだ負けねえゲンシだー」大海元史おおかいゲンシというこの男は、山育ちで、小さい頃より20歳まで山の中で過ごしてきた。
そんなゲンシは宝石視索人になろうとしたわけではなく、単純に石が好きで、小さい頃より川辺で石を拾っては変わった石があれば、コレクションにしていた。
19歳の時、宝石視索人の情報を新聞を読んで知り、資格試験まで6年という期間があることから、将来の自分のやりたいことはこれだと発見することができた。
それからは資格合格の条件をクリアする為に、猛勉強、猛鍛錬を繰り返して25歳になって、その願いが叶った。
今日は初仕事、仕事のスタイルはいたって簡単、ツルハシと鉱石などを入れる袋、金槌ハンマー、頭に安全ヘルメット、非常用の乾パンに弁当を持参して、採掘許可の下りている場所に潜り込む。
採掘現場の奥深くまで潜り込むと、壁に目印である赤バツが彫られていた。
「よいしょー!」赤バツにツルハシの一撃をぶつけると、ガリっという音と共に岩石の塊が取れた。
塊が取れる都度ハンマーで塊を叩いては、鉱石と思われるものと、土を分けては回収していく。
宝石視索人は新しい宝石を探し、国に報告しては提出するのを主な仕事とする。
新しい宝石以外の宝石はそのグラムに対し、時価単価を設け、単価の一部を宝石視索人の手数料とする。
世界的に鉱物鉱石というものが普及し、鉱山と呼ばれるのも少数になり、その資源の採掘に規制が入り、化学化合物による代替が推進されてきた。
特に金は電化製品、情報端末機器などに多く使われいた為、規制された時代からは100年間、金を買い求めて入手する事はできなくなっていた。
そうなってくると、有限である資源の利用方法に意識革命が起きて、人々の装飾品としての宝石は姿を現さなくなりつつあった。
世界各地のトップ、日本でいう総理大臣のみが宝石などの資源売買の権限を持つことになっており、国と国の資源バランスと国民の生活バランスを比較検証しては資源売買取引を行なっていた。
ゲンシは国際情勢に興味を持っていたわけではないが、国が人々に対して生活の安定を考え、行動している事には必要性を感じてはいた為、国の為自分達人の為に出来ることがあるならば、この宝石視索人の仕事もなかなかにやり甲斐がある仕事だと自負していた。
カツンカツンと金属と石の当たる音が響く中、ゲンシの顔は僅かな笑みを浮かべていた。
鉱石と土を分けながら掘り進めること早三時間。
人が通れる大きさで1m進めるのも一苦労だが、6mは進んだぐらいのところで異変は起きた。
宝石視索人は建前。世界構成が始まります。