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044話 警戒

 セイン王子が部屋で寛いでいると、突然扉が開き何者かが侵入してきた。慌てて剣を掴み立ち上がる。しかし、セイン王子は鞘から剣を抜くことはなく、肩から力を抜いた。


「突然どうされたのですか? エーデル様と……アリス」

「あぁ、セイン様っ! 聞いてください! 今、フィナがアランのところに……ふふふ」


 エーデル王女は無邪気な子供のような笑顔で、セイン王子に抱き付いてきた。


「えっと……どういうこと?」


 さりげなくエーデル王女を引き剥がし、アリスへ視線を送る。


「突然申し訳ございません。本日はアランの誕生日だということで、今、フィナ様が隣の部屋でプレゼントを渡しております。どうせなら、アランが送ってくれるようにと……」


 アリスはエーデル王女の方を視線だけ送り、その言葉の先は察して欲しいと訴えてきた。


「それで、ここに飛び込んできたのか。なるほど。だけど、どちらにせよ二人きりにはならないんじゃないかな。アランには一人で行動するなと伝えているから」

「まぁ! そうなんですの? じゃ、私たちがここに来た意味がないですわね……」


 不服そうに頬を膨らませるエーデル王女に、セイン王子とアリスは顔を見合せて苦笑いを溢す。その時、扉を叩く音が聞こえてきたため、アリスが扉を開けた。


「あ、アリス。エーデル様もこちらにいらしたのですか。これからフィナ様をお送りするのですが……」

「アランが送るのよね? その二人の後ろを私とエーデル様と付いていくからギルはここにいて大丈夫よ」

「でも、それだとアリスがまたこっちに来ないとだろ? 俺も行くよ」

「私なら別に何度往復しても構わないけど。それに、ギルが行ったらセイン様、どーすんのよ?」

「じゃ、皆でこっそり覗き見しよっか」


 ギルとアリスのやり取りを聞いていたセイン王子は、にこにことそう提案した。それについては誰も異論をとなえることはなく、ギルの魔法で気配を消して付いていくことになった。




(もうあんなところにいる、みんな急いで)

(あぁ、何だかわくわくしますわね!)


 セイン王子が小声で声をかけると、エーデル王女がキラキラと瞳を輝かせる。エーデル王女は隣にいるセイン王子と寄り添いながらアランとフィナの後を付ける。その後ろからギルとアリスが付いており、アランとフィナとの間の距離は五メートルほど離れていた。エーデル王女は嬉しそうに二人を見つめている。


(ぁ、フィナ危ない! まぁ! これは……)


 フィナが転びそうになったところをアランが抱えるように助けた。そして、フィナの告白。エーデル王女以外は、何だか見てはいけないような気がして視線を反らした。


(ふふふ。フィナは意外と積極的なのですね。あら? 慌てて何処へ行くのかしら?)


 エーデル王女のその言葉に、三人が顔を上げるとアランとフィナが駆け足で進みだしていた。


(どうしたんだろ? 取り敢えず俺達も急いで付いていこう)


 セイン王子の言葉に三人も見失わないように一緒に駆け出す。しかし、少し進んだ先でとある人物と鉢合わせをした。


「ティス様……失礼致しました」

「これはこれは、セイン様。こんな夜更けに共もつけずに二人でお出かけでしょうか……」


 丁度歩いてきたティス王太后にぶつかりそうになり、いくら気配を消しているとはいえそこまで接近をしてしまったため、気がつかれてしまった。ティス王太后はエーデル王女がセイン王子の腕に絡みついているのを細い目でちらりと見る。後ろにいるギルとアリスについては気が付いていないようで、二人で出かけているのだと思ったのだろう。


「はい。少し夜の散歩を。大切な姫を連れまわしてしまい、申し訳ございません。今、お部屋に送り届けますので」

「いえ、良いのですよ。セイン様と仲良くしていただけるのはこちらとしても喜ばしいことですので。ですが、深夜に城内を動き回ると何か良からぬこと(・・・・・・・・)をしているのかと勘違いされてしまいますので、密会はお部屋でゆっくりとされた方がよろしいかもしれませんね。では、エーデルとごゆっくりとお過ごしください……」


 作ったような笑みを浮かべたティス王太后は、配下を四人引き連れてその場から立ち去った。その後姿をエーデル王女は睨むように見つめる。絡めた腕には力が入っており、セイン王子は安心させるようにその手を擦った。


「アランとフィナが二人だけで鉢合わせしなくてよかった。ティス様が仰っていたようにこんな深夜だ……。二人の身分では難癖をつけられた可能性もあっただろう」

「そうですわね……。私、少し浮かれすぎていましたわ……」


 ティス王太后が裏で何かをしているかはまだ分かってはいなかったが、警戒しておくに越したことはない。セイン王子も険しい顔を崩さずティス王太后が向かった先を見つめていた。




挿絵(By みてみん)




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