038話 マイペース
食事は円卓で行われた。エーデル王女が名前を覚えたいというので、ジェルミア国王は一人一人紹介をしてあげた。隣に座るフィナの紹介の際、エーデル王女は悲痛な表情を見せフィナの手を取る。
「まぁ、そんなことが……。でも無事でよかったわ。……そうだわ! お迎えが来るまで私の部屋で過ごしてください。広すぎて少し寂しく思っていたところだったのです。そうしましょう。ね、お兄様良いでしょう?」
名案だと言わんばかりに瞳を輝かせて、ジェルミア国王を見る。そんなエーデル王女に、ジェルミア国王は笑みを浮かべた。
「そうだね。だけど、エーデルと一緒に過ごしたら気が休まらないんじゃないかい? それにお前からそんなことを言われたら断るに断れないだろう?」
「お兄様。私がただ我儘で言っていると思っていらっしゃるのでしょう? フィナはとても怖い思いをしたのです。今までは誰かと一緒にいたから安心できたかもしれませんが、知らない土地で一人で夜を過ごすのはきっと心細いと思うわ」
膨れたエーデル王女に、ジェルミア国王は少し感心したように頷く。
「なるほど……。フィナちゃんがもし良ければでいいんだけど、どうかな?」
「……は、はい。エーデル様が仰るように、一人になればあの時のことを思い出し、恐怖を感じるかと思います……。ですので、そのお気持ちが大変嬉しいです。ですが――――」
エーデル王女はにっこりと笑みを浮かべ、人差し指でフィナの唇に触れる。相手は女性であったが、フィナはドキッと胸が跳ねた。なんて色っぽいのだろう……。
「では、アリスも一緒にどうかしら? 女同士楽しく過ごしたら嫌な気持ちも飛んでいってしまうわ。それに、アリスが一人で寝ていたらお兄様に襲われそうですもの。ね、そうしましょう」
「お、襲われ……」
急に自分の名前が出てきたアリスは、何の話かと聞いてみれば、思ってもいないことで驚き赤面した。隣に座るジェルミア国王を見ると、にこにこと意味深な笑顔が返ってきた。
「もちろん、アリスちゃんが良ければベッドの上で語らいたいな」
「えっ! あ、いえ。エーデル様とフィナ様のお側につかせて頂きたいと思います」
「では決まりっ! あぁ、楽しくなってきましたわ」
初めて同じ年の同じ女の子と一緒に過ごせることに、エーデル王女の胸はとても弾んでいた。そして、こんな楽しい食事は初めてだった。
「ね、フィナ。着替えは用意させるので、浴場へ参りましょう! 自慢のお風呂なんです。温泉が湧き出て、肌にも良いのよ」
「えっ……い、一緒にですか?」
「もちろん! 一人になんてさせないわ。女同士ですもの、平気ですわよね? さ、アリスもよ! お兄様、セイン様。お先に失礼してもよいかしら?」
二人は笑顔で了承した。
アリスとしては、この場に残り、これからの動きについてなどの話に参加したかった。しかし、セイン王子が目で行くようにと促しているのが感じ取れたため、それに従うことにした。
フィナもまた、アランがどう思っているのか気になり、ちらりと視線を送る。見ると、こちらには全く興味がないようで、ジェルミア国王とセイン王子の会話に耳を傾けていた。
「さ、行きましょう」
エーデル王女は嬉しそうにフィナの腕に絡み付く。弾力のある胸が押し付けられて、変に意識してしまう自分をフィナは恥ずかしく思った。また、気遣ってくれるエーデル王女の気持ちは嬉しいが、自分の貧相な体を見られるのも恥ずかしい。しかし、そんなフィナの気持ちもお構い無しに、エーデル王女はずんずんとフィナを浴場へと引っ張って行った。




