西の城下町(1)
今まで書くのをサボっていたので少しだけ書こうと思いました。
「はぁ、美味しかった〜!」
そう言ってフォークとスプーンを置くセシリア。
「本当、クルスシアの料理っていつ食べてもおいしいのよね。」
リネも褒めてくれる。
「お粗末様でした。」
(シャワーから出てきた時のセシリアの落ち込み様ったらなかったけど…機嫌も戻ってよかったよかった。)
1人でホッとするクルスシア。
「それじゃあ、私は帰りますね!」
律儀にお皿を下げた後に家を出ようとするセシリア。
「うん。またいつでも来ていいからね。リネと僕で歓迎するよ。」
僕の言葉を聞いて顔を輝かせるセシリア。だが、その後にニコニコしているリネを見てビクッと震える。
「クルスシアの言う通り、いつでも来ていいわよ。」
そこで優しそうな笑みを浮かべるリネ。
「あ、でも夜中はやめてね?私達、なにしてるかわからないから。」
「「?!」」
突然の下ネタに驚く僕とセシリア。
「子供の前でなにを言ってるの?リネ。僕、久々にドン引きしたよ?」
「あら、いいじゃない。セシリアだってもう子供っていうほどの年じゃないし。女王だし。」
「女王は関係ないでしょ…」
僕がリネと小声で話しているとセシリアが少し顔を赤らめて一言。
「わ、わかりました。でしたら、夜10時以降はお邪魔しないようにします。」
「はいそこ!間に受けない!!!!別に夜来てもいいから!全然来ていいから!」
僕は素早いツッコミでリネの一言を間に受けたセシリアに訂正する。
(もっとも、セシリアならそんな夜遅くに来るようなことはそもそもしないだろうけどね。)
「…まさかクルスシア、欲望が、ないの?!」
大声で驚愕!とでもいう仕草をするリネ。
「リネは少し黙っててくれるかい?」
「あはは、冗談なのに。半分くらいは。」
(なにが半分なのかわからないけどとりあえず時間も遅いしセシリアを帰さないと。)
「…まぁいいや、なんにしろ僕たちはセシリアが来るのを歓迎するからね。」
「あ、ありがとうございます。」
少し無理やり締めた気もするが、そんなことは特に気にせず、ぺこりと一礼してドアを開けようとするセシリアだったが、そこでふと動きを止める。
「あの…もしよければ、なんですけど。」
「どうかした?」
少し控えめにこちらを見るセシリア。
「明日、王城に来ませんか?」
「「えっ?」」
僕とリネは顔を見合わせた。
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「うっ、苦し…」
目覚ましを止めた後に出てきた言葉がそれだった。
(なんだ?お腹がやけに締め付けられているような…ていうか、柔らかい完食が。)
そこで僕は事態を把握する。
「これじゃ僕が布団で寝た意味ないじゃん…」
隣のベッドに誰もいなくて、白いタオルケットに包まれてはいるが、布団で寝ている僕の横、というか隣には人1人分くらいの膨らみがあった。
「リネ、手離して…僕朝ごはん作らないといけないからさ。」
僕はタオルケットを取って、自分に抱きついてきているリネを引き剥がそうとする。が、なかなか手が離れない。
「ちょっと、僕かなり本気出して力込めてるんですけど?なんで剥がせないの?!」
「それは、愛の力〜」
ここで、リネが目をぱちっと開けて喋り出す。
「…起きてるならそう言ってよ。ていうか手を離して欲しいんだけど。」
僕は起き上がろうにも起き上がれない状況で寝たまま手を引き剥がそうと奮闘していた。
「おかしいなぁ、普通、美少女にここまで密着されると緊張でびっくりするのがセオリーだと思うんだけどなぁ…」
(今まで散々繰り返し同じことされたからね。そりゃ慣れるよ。)
確かに最初の頃は戸惑ったし、照れたりもした。でも今ではそんなことをされてても真顔で本を読める自信がある。
「セオリーなんていいからさ、手を離してくれないかな?」
僕がそう言うとさらにくっついてくるリネ。もはやここまでくると暑苦しい。
「あれ、無反応。胸をおしつけてるはずなんだけどなぁ…」
「いや、胸はいいから手を離してくれないかな。今日は久しぶりに王城に行くんだから、遅れるわけにはいかないでしょ?」
昨日、セシリアから誘われたので、12時に久しぶりに王城への訪問をすることにしていた。勿論、いくら王城とは言っても、僕たちが生存していることががバレるといろいろ問題になるので僕たちはセシリアの友達、という設定だ。ちなみに現在6時半。一見時間に余裕があるように見えるが、洗濯等をしていると時間なんてあっという間に過ぎてしまうのだ。
「それは、そうだけど…でも今は、クルスシアが私に対して無関心な事の方が問題なの!!」
相変わらず抱きつきながら言ってくる。
「無関心なんて事はないよ?」
「嘘、だったらなんでそんなに普通なの?」
僕を咎めるように聞いてくるリネ。
「いや、だって慣れちゃってるから…」
「慣れる?!そ、そんな、確かに、不老不死だから成長はないけど…でも、これでもC、いいえ、Dくらいはあるのよ?!それを慣れたから、と一掃するのは健全な男子としてどうなの?!」
「男子、とは言っても子供じゃないけどね。」
僕がそう一言発すると今までよりさらに力を込めて抱きついてくるリネ。
「そんな事はッ、聞いてない!!!!」
「あだだだ、ご、ごめんごめん…」
僕が謝ると少し力を緩めてくれるーーと言ってもまだ全然手は外せないがーーリネ。
「全く、どうしてそう茶化すかな?それに、心はともかく体は17歳のまんまでしょ?!」
「それは、そうだけどさ。」
少ししぶるようにして言う。
「そうだけど、何よ?ま、まさか、私から魅力が感じられないっていうの?」
焦ったように、そして悲しそうにつぶやくリネ。
「まさか。そんな事はあるわけないでしょ?」
「なら、何?」
すこし怒り気味のリネ。僕を捕まえている指に力がこもっている。
「ほら、少しでもリネの事をそういう目で見ちゃうと、僕の歯止めが効かなくなっちゃうからさ。」
すこし恥ずかしいが、僕は彼女に向けてウィンクをする。
「え?」
その瞬間、リネの手にこもっていた力が一気に抜けた。
(よし、今だ!)
僕は一気に布団から出て、立ち上がる。
「じゃあ、僕は朝ごはん作ってくるから、まだ寝てて良いよ。」
そう言って、リネを置いて寝室から出ていく僕。
「相変わらずリネは不意打ちに弱いなぁ。いつも、こういう事言えば、大抵油断してくれるんだよね。」
僕は大人を騙した少年のようにクスクスと笑って、一言だけ呟いた。
「まぁ、全部僕の本心だけどね。」
僕はリネには聞こえていないだろう、そう思って呟いていたのだが…
「クルスシアの馬鹿。そんな事言われたら、眠れるわけないじゃない。」
僕の独り言を聞いていた彼女は、顔を真っ赤にしながら布団に顔をうずめていた。
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「にゃは。にゃはは。」
「…」
「にゃははは。」
「…ゴクリ(唾を飲み込む音)」
今日の朝食はレタスとハムのサンドイッチ、そしてリネの好きな卵サンドイッチと果物だ。
(おかしなものは入れてないはずなんだけどな。なんで?何があったの?さっきから変な笑い方してるし。)
「リ、リネ…どうかしたの?やけに機嫌が良いみたいだけど…」
「うんっ!私、今ならクルスシアの頼みであればどんなものでも聞ける自信があるよ!」
「そ、そう。機嫌が良いのは良い事だけど。そんなに卵サンド美味しかった?」
「んー、それもあるけどぉ、ふふっ!」
なんだか口調まで変わってきたリネ。
(何があそこまで彼女を機嫌よくさせたんだろう?卵サンドじゃないっぽいし。むしろ不気味…)
僕は首をかしげて様々な可能性を考えたが、一向に謎は解決せず、リネのこのテンションはしばらく続く事となるのだった…
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「さ、行こうか。」
「うん!」
僕とリネは外にでていた。
「「空間把握技術、〈飛行〉」」
体が浮いたのを確認すると、空を飛んで霧のある方まで行く。
「ねー、クルスシア!」
「なに?」
霧の中に入ったところでリネが僕に質問をしてくる。
「どうして〈転移〉で王城まで行かないの?」
「あぁ、それは簡単な事だよ。突然王城に僕たちが現れたら只者じゃないって、分かっちゃうでしょ?」
「あー、なるほどね。そういう事。」
リネはなぜわざわざ遠回りをするのか気になっていたようだ。
「私、てっきりクルスシアが私のスカートの中見たいのかと思ってた。」
「なッ?!」
突然の爆弾発言に空間把握技術の制御がうまくできずに、空中で少しよろける僕。
「ほら、私って基本的にスカートでしょ?だから、ね?てっきり…」
「ね?じゃないよ!てっきりも何もないよ!リネは僕をなんだと思ってるの?!」
「あはは、ごめんごめん。クルスシアはそんな事しないよね!」
「するわけないでしょーが!しかも理由がしょーもないし!」
手を合わせて謝ってくるリネに、僕は少しキレ気味だった。
「そうだよね、見たければ直接私に言ってくるよね!」
「言わないよ!!!!」
(リネの中の僕はどうなってるのかな?本当に…)
話していると、いつの間にか霧を抜けて、森の先にある町が見えてきた。
「よし、ここら辺で降りようか。ここら辺は人が多いからね。見られると、〈転移〉ほどじゃないけど、注目されちゃうからさ。」
「そうね。そうしましょう。」
僕とリネはちょうど森と町の境目あたりの場所へ降りる。少し進むと、電子掲示板のようなものが見えてきた。そこには、こう書かれていた。
"ようこそ、西の城下町ビーカルへ!!"
僕とリネは、東西南北で合わせて4つあるうちのビクトール王国城下町の1つ、ビーカルへと足を運んだ。
いつもより量が少なくなってしまいました。それと、ちょくちょくネタを入れるようにしました。しばらくは戦いから離れて日常生活が続くかと思います。
こんな話でも読んでくださっている方々、ありがとうございます!!