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伝説の科学者  作者: 北尾麟
6/13

クルスシアに降りかかる災難(3)

前回からとても時間が経ってしまったような気がします。

「ごふっ!!」

僕の咳込みとともに血液が撒かれる。

「はぁ、はぁ…」

「あれ?もうギブ?まだ首吊りと内蔵出しとアキレス腱切断しかしてないわよ?」

(十分やってるでしょーが!!)

痛めつけられてはされては〈回復ヒール〉されての繰り返し。だから、どんなに痛々しい事をされても僕についた傷が致命傷に至る事はない。

(あー、時間の感覚がおかしくなってきた…)

もうどのくらい時間が経ったのかもわからない。苦痛と痛みの連続にまともに思考できない。

「よし、そろそろ3時間経つし、あなたの、私に逆らわない態度に免じてその傷、終わりにしてあげるわ。」

「…そ、う…それは、どうもありがとう…」

そう言って、倒れている僕に近づいてくるリネ。

(あれ?3時間経った…?何か忘れているような…)

彼女が僕を〈回復ヒール〉しようとした時だった。

「クールースーシーアー!!!!」

あたりにセシリアの声が響いた。

「「!!!」

地面に倒れた僕とリネは顔を見合わせる。

(そうだ!セシリアが来るんだった!くそっ、すっかり忘れてた!!!)

「まずいわね。今すぐあなたを直さないと…今聞こえた声の子がセシリアって子なんでしょ?」

リネの質問にコクリとわずかに頷く僕。リネが僕に〈回復ヒール〉をかけようとしたその時だった。

「あれー?クルスシアー?どこにいるのー?」

こちらに向かってくる足音が聞こえた。

「っ!!空間把握技術、〈回復ヒール〉!!」

小声で空間把握技術を発動させるリネ。彼女の手に付いている指輪から出た光が僕を包み、やんわりと今までの痛みが和らいでいく。

(よし、このままうまくいけば間に合う…何としてもセシリアにこの惨事を見せるわけには行かない!)

が、光はすぐに消える。

「え?なんでやめちゃうの?早く僕を治してよ!」

喋れるようになるまでに回復した僕。

「…ご、ごめん。あなたをいじめるのに力を使いすぎて、粒子がもう残ってない…」

「ええっ?!」

空間把握技術は、道具〈アイテム〉の中にある粒子を操るため、道具の内部にある粒子が尽きると充填させなければならない。しかし、空を飛んでいる最中に粒子が切れても大変なので、内部には大量の粒子が詰められており、その粒子が完全になくなるまで、つまり空間把握技術が使えなくなるまで使うのは通常ならやろうとしてもできない。

「どれだけ使ったらそんな事になるんだよ…僕をいたぶるのに精を出しすぎなんだよ。途中から普通に楽しんでたでしょ?」

「あは。ばれてた?いや、最初は純粋に123年前の仕返しだったんだけどね。途中からそんなこと忘れてたのしくなっちゃって…」

ごめんね☆と舌を出して可愛く笑うリネ。

「あのねぇ、君が楽しんでる間、僕は死にそうだったんだよ!?」

「いいじゃん、どうせ死なないし。許してよ!」

軽く流そうとするリネ。

「まったく、そういう適当なところも変わってないね…まぁ、すぎた事はいいよ。」

「本当に?!あは、ありがとう。」

(こんな謝り方されて許しちゃう僕も僕だけどね…)

「ちょろいなぁ、クルスシアは。」

「…」

なにか小声でリネが喋った気がするが、聞こえなかった事にしよう。

「あっ、あっちに人影がありますね。おーい、クルスシアー!」

「「!!」」

立っているリネを僕と間違えているのだろう。小走りでこちらへ走ってくるセシリア。

(まずい!!このままだと、この惨劇が彼女の目に入る!!!!)

「ちょ、クルスシア、どうする?!」

「…くそっ仕方ない。リネ、僕を殺して。」

「はい?もう一度言ってくれます?」

「いいかい、殺すと言っても心臓を刺すだけだ。いいね?僕の心臓が止まれば僕の道具アイテムが僕の生命活動が停止したと思って自動蘇生が始まるから。」

「ええっ!いや、でも!」

「いいから!そこらへんの太い木を僕のわ心臓にぶっさして!」

こちらに向かってくる足音がだんだん大きくなっているため、焦る僕。

「〜っ!!わかった。」

そういうと、咲がちょうどよく尖った枝をつかむリネ。

「行くわよ、いちにのさんで刺すわよ。」

「わかった。」

そう言って枝を逆手で持ち、倒れている僕に刺す構えをするリネ。

「1」

痛みに供える僕。

「2の…」

その時だった。先ほどまでどんどん大きくなっていた足音が消えた。

「もう、クルスシア。ここにいたの…ね?」

「3!!」

「ちょ、待っ…ぅグハァあああ!」

僕の制止も聞かずに掛け声通りに枝を僕の心臓に突き刺すリネ。あたりにザシュッという音が響き、血がぴしゃりと飛んだ。

「え?く、く、クルスシア??な、なにこれ、え?血?え?」

ほっぺについた液体が血だと知るセシリア。

その声を聞いて、リネもセシリアがいることに気づく。

「あ…どうしよう。クルスシアに怒られる。」

そう言いながら枝を引き抜くセシリア。

「あ、あなた、誰?く、クルスシアは?」

セシリアはリネの握る枝の先を見た。

「え?」

目が真っ白になり、瞳孔が開く。

「い、いい?セシリア。落ち着いて。私はリネ。今倒れてるクルスシアは、死んでないわ。」

「し、死んだ?く、クルスシアが?」

「ち、違うわ、死んでない、死んでないの!」

「い、いや、でも…クルスシアは。」

そう言って下を見るセシリア。彼女の目に入ったのは大量の血液だけで、指輪が光っていることには気づかない。

「う、嘘よ…そんなこと。あ、あるわけが…」

一歩二歩と下がって、木の根に足が引っかかり尻餅をつくセシリア。目には涙がうっすらと浮かんでいた。

その時、光っていた僕の指輪が輝きを失う。

「あるわけないよね、僕が死ぬなんてことはっ!!!!」

急いでばっと起き上がる僕。

(ま、間に合った、のか?いや、ギリギリアウトだなね。これは…)

僕はは自分の体にこびりついた血とリネの苦笑い、そしてセシリアの目の色を見て、状況を判断した。

「えっ、く、クルスシア?いや、でも、そんなはずは…」

僕を見て驚くセシリア。そこで、リネが機転を効かせる。

「ほ、ほら、ど、ドッキリ大成功!!せ、セシリアを驚かさせられた〜!やったー!!」

「や、やったー!」

それはどうなの、と思いつつも引きつった笑顔でハイタッチする僕とリネ。

「どう?セシリア。騙されたでしょ?僕が殺されちゃったドッキリ!!」

「え?ど、ドッキリ?」

その言葉を聞いて目の色を戻すセシリア。

「そ、そう!ドッキリよ!ドッキリ!!」

無理やり話をドッキリで片付けようとするリネとクルスシアに戸惑うセシリア。

「…」

だまってしまったセシリアを見てゴクリと唾を飲み込む僕。

「なぁんだ、ドッキリですか!びっくりしちゃいました!」

そう言って立ち上がるセシリア。そしてリネの方を笑顔で見つめる。

「ええと、リネさん、でしたっけ?」

「え、ええ。」

「私てっきり、あなたがクルスシアを殺しているのかと思っちゃいましたよ。」

笑顔で話すセシリア。

(あれ?セシリアの目が、笑っていないような…気のせいかな?)

「そんなこと、あるわけないでしょ?セシリアも変なこと言うなぁ。あはは。」

「あはは、そうですね。でも、もしもクルスシアが殺されちゃったら、私、犯人を殺しに行きますからぁ。」

あは、と笑うセシリア、

(?!間違いない、セシリアの目が笑ってない!!!!)

「そうね、そこに関しては私もセシリアに共感できるわ。」

「「気が合いそうね(ですね)」」

「…」

(え?なに?なんなの?この空気…女同士で微笑みあっでるのに、悪寒が止まらない!!!)

「あ、じゃあ僕は血のりを落とすためにシャワー浴びてくるよ。もう暗いから、2人は家の中に入ってて。」

僕がこの空気から逃げるようにして自分の家の中へ入ると、2人もついてくる。

「ここが、僕の住んでる家だよ。リネはここに来るのは初めてだよね。」

「ええ。木造なのね。いい趣味してるわね。」

部屋の中を見渡すリネ。セシリアは慣れた様子で入ってくる。

「じゃあ、2人は適当にくつろいでてよ。僕はシャワーで血のりを落としてくるから。」

僕はあくまでも血のりということにして事態を深刻化させないようにする。なぜなら、僕は今真っ赤だからだ。赤いペンキを頭から浴びたような感じだ。もちろんペンキや血のりではなく正真正銘僕の血だ。

「あっ、なら私も血のりがたくさんついちゃってるし〜。」

そう言って立ち上がるリネ。

「…」

(嫌な予感がする。)

そして、僕の近くまで来て背中(血だらけ)に手を当てて上目遣いになる。

「私も一緒に入ろうかな。」

(なんでわざわざ事態を深刻にしようとするかな…)

「血のりだらけでそういうこと言われてもね…」

僕ほどではないが、リネも十分返り血が付いていた。

「どうしても先にシャワー浴びたければ先入ってもいいよ?」

「うわ、華麗にスルーしたわね…まぁいいわ。先に入るのはあなたでも。でも、今度一緒に夫婦水入らずってことでさ!」

「はいはい。いつかね。」

そう言って僕はシャワーを浴びに行くのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「えーと、リネさん。でしたよね?」

「そうよ。」

クルスシアがシャワーを浴びている間、リビングのソファーに座って、向かい合う形で2人が話し始める。

「いくつか聞きたいことがあるのですが、いいですか?」

「…ええ、もちろんいいわよ。なんでも聞いて?」

2人の言葉は一見優しそうだが、当人たちの表情は決して笑っていなかった。

「でしたら、早速一つ目の質問をさせていただきます。」

ニコッと完璧な愛想笑いをするセシリア。2人は笑いあっているが、その場には言いようのない緊張感が出ていた。

「リネさんは、クルスシアのなんですか?先ほど、夫婦水入らずで、とかなんとか言っていたような気がするのですが。」

「そうね、色々言い方はあるでしょうけど…1番わかりやすいのは妻、という言い方じゃないかしら。」

「…妻、ですか。それは、」

「比喩でもなんでもないわよ。クルスシア本人に聞いてもらえればわかると思うけど。」

セシリアの言おうとしたことを遮って話すリネ。その行動は、明らかにセシリアに対する威圧が込められていた。まるで、『あなたの考えなんて読めているのよ』とでも言われたような気がして嫌な気分になるセシリア。

「 そうですか。では、リネさんはいつクルスシアと結婚されたのですか?」

「2071年4月1日、建国された日よ。」

「建国された日…確か、初代ビクトール王国王とその妃が記念として結婚した日でしたよね…て、あれ?確か、初代ビクトール王国王は、クルスシアだったはずじゃ…」

そこまで言って続きが言えなくなるセシリア。

「あら、クルスシアのことはもう知ってるのね。もう気づいただろうけど、初代ビクトール王国王の妃っていうのは私のことよ。」

まさか、と言った声にならない声がにじみ出ているセシリア。

「そう、でしたか。あ、ということは…リネさんもも私の先祖になるってことですよね?」

恐る恐る尋ねるセシリア。

「まぁ、そうなるわね、まあ先祖とは言っても、だいぶ血は薄まってるだろうけどね。」

「…そう、ですね。」

少し落ち込んだ顔をするセシリア。先ほどまでリネに向けていた敵以外すっかり消えていた。

「どうして、そんな顔をするの?知ってるわよ、あなたの事情は。両親が事故で亡くなったんですってね。情報だけなら知ってるわよ。でも、だったら普通は親族が身の回りに増えるのは嬉しいんじゃない?」

「え、ええ。嬉しいことは嬉しいんですが…なんというか。」

そこで言い淀むセシリアをみてクスッと笑うリネ。

「もしかして、私にクルスシアを取られるとか考えてた?」

「えっ?!そ、そんなことは…」

ちょうど思っていたことを言われて過度に反応してしまうセシリア。

「あなたがクルスシアと友達になるのは構わないけど、私からクルスシアを取ろうとすることだけはしないでね?まぁどっちにしろ、クルスシアの事だから浮気なんてしないでしょうけどね。」

「そ、そんな事、わからないじゃないですか!」

「えっ?」

セシリアの反論に思わず驚いて目を見開くリネ。

「…なるほど、あなたは私と戦う気なのね?いいわ、負ける気は全くしないけど受けて立ちましょう。私はたとえ相手が親族でも容赦ないわよ!」

「私だって…!!」

二人の間にバチバチと火花が散る。が、その後すぐに二人ともクスッと笑いあう。お互いの胸の内を語り合った後の空気感は、今までとは違って少し和やかな風合いになっていて、二人はお互いに少し打ち解けたような気がした。

「あ、それはそうとしておきまして…二つ目の質問をしてもよろしいですか?」

「えっ?い、いいけど。」

パッと切り替えるセシリアに少し置いていかれるリネ。

「では、二つ目の質問です。先ほど、私は森でクルスシアがリネさんに殺されているところを目撃しました。これについて詳しく御説明をお願いします。」

「あ、あぁ、あれね?あれは簡単よ。ドッキリよ、ドッキリ!あなたを驚かすためにやっただけよ!」

真面目な表情のセシリアとは反対に笑い事として飛ばそうとしているリネ。

「そうですか、ドッキリでしたか。わかりました。では今リネさんの頬についているクルスシアの血のりをDNA鑑定で私の血と比べたいので採取してもよろしいですか?」

「えっ?!」

どこから取り出したのか綿棒のようなものを取り出すセシリアにうろたえるリネ。

「どうしました?血のり、なんですよね?私、血のりの成分がどのようなものか知りたいんです。ですからDNA鑑定に…」

「待って?おかしくない?その理論?!なんで血のりの成分を調べるのにあなたの細胞と比べるの?!」

「…」

「…」

リネの言葉を境に、お互いのわけのわからない話の押し付け合いは終わる。

「ドッキリなどで私が信じると?」

「…やっぱり、無理がある?」

「無理です。」

「そうよ、ねぇ。うん、私も逆の立場だったら無理って言ってたわね。」

わかったわ、そう言って人差し指を立てるリネ。

「本当のことを教えてあげる。」

「…最初からそうしていただけるとありがたかったんですが。」

セシリアのその言葉は聞こえていないとばかりに無視するリネ。

「まず、 話を始める前に私はあなたに二つ謝っておかなくてはならないわね。」

「2つ、ですか?」

なんのことかわからずに首をかしげるセシリア。

「1つ目は、あなたの両親が亡くなった時、私があなたの元へ助けにいかなかったこと。もう1つは、あなたの友人であり、親族であるクルスシアを痛めつけたこと。」

すると、立ち上がり綺麗にお辞儀をする形になるリネ。

「本当にごめんなさい!!」

その様子をみて、驚くセシリア。しかし、それと同時に納得する。

「いいんです。きっと、あなたもクルスシアと同じで理由があったんですよね?だから、気にしないで座ってください。」

そう言って微笑んだセシリアはリネを座らせる。しかし、その後にセシリアはこう付け加えた。

「ただし1つ目に関しては、です。

2つ目のクルスシアに対する乱暴というのは、話を聞いてみないと私にはなんとも言えません。少なくとも今は、私の中には怒りが充満しています。」

サーっとその顔から微笑みが消えた。

「そうよね。あなたがそう思うのも仕方のないことよ。でも、その前にこの話を聞いて欲しいの。」

「この話?」

「そう。さっきのあなたの質問に対する答えよ。」

そう言って、リネは124年前に起きたことの話を始めた。

少しでも読みやすくなるように頑張ってはみましたが、やはり上手くいきませんね。

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