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24.リリアさん救出作戦

 あたしはしばらくの間のんびりと過ごしていた。

 アクアたちお魚系の魔物たちとお魚パーティもした。

 肉食系の魔物達に連れられて外でバーベキューパーティーもした。

 狩りをする予定が、動物達があたしに食べてほしいと身を差し出してきたのには少しびびったが……。

 今日は何をしようかと考えていた時、急に頭の中に声が聞こえてきたのだ。


――ユウナ様……お助け下さい……――


 今のはリリアさんの声?

 どうしたんだろうか。

 こちらから呼びかけても、それ以降何も聞こえない……。


 あたしはすぐさまメアのところへ行き、事情を説明して合体した。

 メアが集中して何かを探っているようだ。


――ユウナ様……おそらくリリア様は拷問を受けているようです――


 え!?

 拷問って……。

 やっぱり魔物のところへ行って戻ってきたから?

 グリモアさんの交渉も意味がなかったってことかな。

 たしか友好の証としてリリアさんを返すと言って、リリアさんが無事な限り魔物側から攻撃をしないと約束していたように思う。


――命は無事……と解釈しているのかもしれません。拷問して何かしら情報を引き出さねばと思うほど魔物に対して恐怖しているのかもしれませんね――


 全く意味がわからないけど……メアが言っている通りなのかな。

 拷問なんかしたって意味無いのに……。

 何にせよ今からの行動は決まっている。

 助けに行くんだ。

 リリアさん、待っててね……。




 あたしはシノンと合体した状態で麒麟の背中に乗って飛んでいる。

 目指すは北の都ノースリア。

 麒麟の姿を消して近づくこともできるし、ある程度近づけば匂いでリリアさんの居場所もわかるはずだ。

 さらに隣にはピィもいる。

 麒麟と同調して風の魔法を使うことで、麒麟の速度が上がっているようだ。

 いろいろ便利なことができるんだねえ。


 おかげで最初に北のお城へ行った時より早くノースリアに到着できた。

 麒麟が街の上空にいるけど、透明なため気付かれてはいない。

 シノンと一緒に鼻に意識を集中してみる……。


――どうやら地下のようですね。あちらのあたりではないかと――


 ふむ、あれはミリィとミディが捕まっていた地下牢かな?

 リリアさんまであんなところに閉じ込めるとは許すまじ。

 では麒麟を送還して、ちび麒麟と一緒に行ってみようかな。

 ピィは鳥に化けて上空から偵察しててね。


――かしこまりました――


 さて、では潜入開始だ。

 と言っても誰にも気づかれないので楽なものだ。

 地下への階段を降り、リリアさんの匂いの元へと移動していく。

 匂いからすると複数の人間がいるようだ。

 近づくと悲鳴が聞こえてきた……。

 鞭を打つような音もする。


「早く白状しろ! お前は魔物が化けた姿ではないのか?」

「違います……。いやああぁっ!」


 なんてことを……あたしの目には牢の中で鎖につながれ鞭打たれるリリアさんが映った。

 周りにいるのは身分の高い人たちだろうか?

 ちび麒麟……あの鞭打ってる兵士と、周りにいる偉そうなやつらを気絶させて。


 ちび麒麟たちは音もなくそいつらを気絶させたようだ。

 さすが優秀だね。

 あたしはリリアさんに近づいて、姿を現す。


「リリアさん、大丈夫?」

「ユウナ様……なのですか?」


 そう言ってリリアさんは気絶したようだ。

 体中に鞭の跡があって痛々しい。

 とりあえず治療しなくっちゃ。


「ミリィ、ミディ、召喚!」


 リリアさんの拘束を解放して治療を任せる。

 ちび麒麟は人が来ないか見張っててね。

 あたしは……この拷問をしたやつらに制裁を加えたい……。

 あたしは怒りが頂点に達している……。


「メア召喚……神獣合体!」

――ユウナ様、やはりリリア様が大変な目にあわれていたようですね。わたしを呼びだしたのはリリア様の精神的ケアでしょうか?――


 いや、それは帰ってからじっくりするよ。

 今はね……リリアさんをこんなひどい目にあわせたやつらをこらしめたいんだ。

 こいつらにメアの持っている悪夢を見せてやることはできる?


――えっと……それは可能ですが……――


 じゃあやっちゃって!

 あとこいつらに命令出したやつらもまとめて悪夢を見せてやって。


――わ、わかりました――


 あたしと合体したメアの中から嫌な感じの魔力が出ていく。

 それらが目の前で倒れている人間達に吸い込まれていく。

 こいつらの夢を通して命令した人間達にも悪夢が移動するはずだ。

 これでこいつらにおしおきができる。

 そう思った直後、メアの意識が落ちていった。

 強制的に合体が解除される。

 メアは気絶しているようで、すごい熱が出ているような状態?

 もしかしてあたし……とても酷いことをメアにやらせちゃった?


「ミリィ、ちょっと来て!メアの治療はできるかな?」

「にゃにゃ? メアさん倒れちゃってるのにゃ?」


 ミリィが来てくれてメアを見るが、怪我でなければ治療はできないかもしれない。


「ユウナ様、うちには無理なのにゃ。お城に返して医療班に任せるべきなのにゃ」

「わかった、そうするね……」


 メアのことは心配だけど、ここではどうしようもないので送還しかないか。

 お城にいるアクアとチルちゃんにお願いして送還だ。

 メアのことを考えず、怒りに任せて人間に攻撃したことを少し後悔……。

 でも今はリリアさんを連れて帰らなくては……。

 

「リリアさんの怪我はどうかな?」

「応急処置は出来ました。後はお城でしっかり治療すれば体は大丈夫ですにゃあ」

「ありがとね。じゃあミリィとミディは送還するね。ミリィはリリアさんに着せる服を用意してくれるかな? じゃあシノン、また合体だよ」

「はいにゃあ」

「はい!」


 あたしはリリアさんをお姫様抱っこした状態で透明になる。

 このまま気付かれないよう逃げ出そう。

 なんともあっさりした救出だけど、問題はこれからだ。

 リリアさんを元の生活に戻すことは不可能になってしまった……。

 広いところまで移動した後、麒麟を召喚する。

 なんだか騒がしい声が聞こえるけど知ったことではない。

 早く帰ってリリアさんとメアをなんとかしなくちゃね。


 麒麟の背中にてリリアさんを見てみる。

 衣服がぼろぼろでなんとも可哀想な状態だ。

 シノン、先に戻っててくれるかな?

 今からミリィと一緒にリリアさんを治療するんだ。


――わかりました、先に帰還いたします――


 シノンを送還して少し待つ。


――ユウナ様、服の準備ができましたにゃあ――

「よし、ミリィ召喚!」

「にゃおーん」


 ミリィと一緒にリリアさんの服を着せかえる。

 ここに来た時と逆だな……。

 でもリリアさんの体には鞭のひどい傷がまだ残っている。


「ミリィ、この傷治せるよね?」

「ユウナ様と合体すれば余裕なのですにゃ。でもうちだけじゃ完全ではないので、この後ミディとも合体して治療するのにゃあ」

「そっか、じゃあまずミリィと合体だね」

――ユウナよ。神獣合体が魔物2体と出来ると言ったことを覚えているか? 絆の深い魔物同士であれば容易だ――


 おお、麒麟のいいアドバイスが来たぞ。

 ではミディも召喚だ!


「ミリィ、ミディ、これから3人で合体するよ」

「にゃんと? そんなことまで出来るのですかにゃ」

「僕合体するの初めてですが、大丈夫でしょうか?」

「大丈夫! やってみるね」


 さあ、集中して……ちゃんとできるはずだ。


「神獣合体! ミリィ! ミディ!」

「にゃんっ!」


 ミリィとミディの体が魔力の光に包まれてあたしの中に入ってきた。

 これはすごいな……。

 でも今はリリアさんの治療が先だ。

 気持ちいいとか考えている場合ではない。

 2人とも力を貸してね。


――にゃうっ!――


 なんだかミリィとミディの声が一つに聞こえるな。

 まあ気にせずリリアさんの治療だ。

 舐めるのが一番効果的らしいけど、なんだか不謹慎な気がして出来ない。

 傷に手をかざして念じていこう。

 ミリィとミリィの能力のおかげで傷がみるみる消えていく。


――ユウナ様の力ですにゃ――


 ふふっ、あたしたち3人の力だよ。

 完全に治るまで力を貸してね。


――もちろんだにゃあ!――


 こうしてお城に着くまでに治療は完了した。

 あとは心の傷だけど、それを直すためにまずメアだ。




 城に着くとあたしは合体を解除した。

 リリアさんのことをミリィたちに任せてメアの元へ急ぐ。

 治療班のおかげか、メアは意識を取り戻していた。

 しかし、かなり衰弱しているらしい。

 人間に悪意を持って攻撃するとこんなことになってしまうんだな……。


「メア、大丈夫?」

「ユウナ様……申し訳ありません。いきなり倒れたりして……」

「ううん、あたしが無理させたから……。メアを癒したいんだけど、合体していいかな?」

「はい……お願いします」

「じゃあメア……神獣合体」


 あたしはメアと合体してベッドに寝た。

 また一緒に夢の世界へ行こう……。


 メアの夢の中……前回来た時にたくさん見えていた悪夢がかなり減っている。

 人間達に押し付けちゃったからだね。

 さて、来たはいいがどうしたものかな。


――この状態で少しずつ心が癒えてくるのを感じます――


 そっか……でも根本的には解決しないよね。

 さっき人間達に放った悪夢って回収できる?


――よろしいのですか?――


 うん、さっきはかっとなってやりすぎちゃったんだ。

 そのせいでメアが体調崩したんだし……元に戻そう。


――はい……しかしもう少し回復しないとその力も使えそうにありません――


 そっか……他に回復手段はないのかな?

 メアのためだったら何だってできるよ。


――それではユウナ様、ひとつ甘えさせてください。わたしが今まで使ったことのない能力があります。それを使わせていただけませんか?――


 なんだろう?

 もちろんなんだってするよ。

 好きなだけ甘えてね。


――人の素敵な夢を食べて奪う能力です。一生使うことはないと思っていましたが、ユウナ様の素敵な思い出をわたしにください――


 夢を奪うか……。

 きっとその言い方は違うよ。

 あたしの素敵な夢を共有しようね。


――はい、ではいただきます――


 なんだろう……頭になにかの光景が浮かんできた。

 その光景は夢の中だからか、あたしの目の前に現れる。

 幼稚園の時のあたしだろうか?

 その小さなあたしの前には男の子が立っている。


『あたしね、カズくんのお嫁さんになるんだ』


 これは……あたしの小さい頃の記憶か。

 昔好きだった男の子にこんなことを言った気がする。

 あたしって昔は男の子が好きだったんだね。

 こんな夢持ってたんだ。


――素敵な夢ですね。これをいただいてもいいでしょうか?――


 これをあげちゃうとあたしは本当に男に興味がなくなるかもしれない。

 でもいっか。

 あたしには可愛いみんながいるんだしね。

 メアにあげるよ……。


――ではいただきますね――


 あたしの中から何かが失われていく感覚。

 そしてメアの心が満たされていくのを感じる。


――ユウナ様のおかげで力が戻りました。悪夢を回収しますね――


 メアの夢の中はすぐに悪夢で満たされた。

 簡単に戻せるんだね。

 これを戻したってことは体調も戻った?


――はい、完全に回復しました。しかもユウナ様の夢をいただいたおかげで能力が向上しています――


 よかった……2度とあんな酷いことさせないからね。

 本当にごめんね……。


――いえ、ユウナ様のためですから――


 うん、ありがとね……。

 でも、メアになにかあっても嫌だからさ……もしあたしがまた怒りで我を忘れて同じようなことをさせようとしたら、断ってね。


――わかりました――


 じゃあ目覚めてリリアさんのところへ行こうか。


――はい、ではこのまま夢を渡ります――


 よろしくね。

 次の瞬間、あたりの景色が変わった。

 恐ろしい魔物の姿や、リリアさんに拷問をしていた兵士の姿がある。

 これはリリアさんの悪夢かな?


――そうです。すぐに消してしまいましょうか。ユウナ様も一緒に念じてくださいね――


 わかった。

 リリアさんのことを考えながら念じると、その悪夢たちはすぐに消え去った。

 終わったの?


――はい、ユウナ様と合体しているおかげかすぐに終わりました。目覚めて会いに行きましょう――


 さすがメアだね。

 さっそく目覚めてリリアさんの元へ行こう!



 リリアさんの部屋に入ると、横になっていたリリアさんがとても嬉しそうな顔をしてくれた。


「ユウナ様! 来てくださったのですね」

「うん、でもごめんね……。あたしのせいであんなことになって……。もうリリアさんを元の生活に戻すことができそうにないよ」

「そうですね……。でも、ユウナ様とここで暮らすのも悪くないと思っています」

「え?」

「ここで数日暮らしたことで魔物がそんな悪い存在でないことも知りました。それに、何故だか急に魔物を怖いと思わなくなっているのです。以前は洗脳ではないかと疑いましたが、そんなこともないようです」

「うん……嬉しいな。魔物のことをわかってくれて……」

「はい、というわけでよろしくお願いしますね」

「うん!」


 リリアさんの中でどんな考えが巡っていたのかはわからない。

 でもここで暮らすと言いだしてくれた。

 それならあたしのすることはただひとつ。

 このお城も、たくさんの魔物たちも、リリアさんもすべて守るんだ。

 その方法をどうすべきか、あたしはない頭を絞って考えることにした。

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