21.見送り
あたしは麒麟の背中に乗って大空を飛んでいた。
少し離れたところにグリモアさんが座ってる。
これから人間と休戦の約束をしに行くらしい。
そのあたりはあたしによくわからないのでグリモアさん任せだ。
隣ではリリアさんがあたしに抱きつくように寄り添っている。
魔物に対して怯えているのであたしに抱きついてるわけで……役得である。
「リリアさん、大丈夫かな?」
「は、はい……。もっと近くに行っていいでしょうか?」
「うん、好きにしていいよ」
リリアさんはあたしにこの上なく密着してくる。
腕に押し付けられる胸のやわらかさに喜びつつ、あたしとの違いに少し切なくなる。
そのあたしのささやかな胸は不満でいっぱいだ。
ちゃんとリリアさんは帰ることができるのだろうか?
グリモアさんいわく、書面にてだいたいのことは合意済みらしい。
あとは直に会って調印をするだけだとか……。
書面を人間のお偉いさんのところに送り着けつつ、会話までしてしまうグリモアさんがすごい。
なんでも2枚1組の紙を用意し、それらは片方に文字を書くともう片方にも文字が浮かびあがるらしい。
これを1枚相手に送れば会話ができると言うすごい代物だ。
もう少しで予定の場所までたどり着く。
あたしがプロメイティア様らしきおっさんから神託を受けたあの神殿だ。
なんでもアルティアナの見ている場所で約束をすることに意味があるとか。
いきなり攻撃されたりとかはないと思うけど……その時は頼んだよ、ミリィ。
――おまかせですにゃ。ユウナ様はうちが守るのにゃ。麒麟様もいるので安心なのですにゃよ――
うん、そうだね。
麒麟もミリィも頼りにしてるよ。
ちなみにあたしはミリィと合体状態だ。
姿は普段のままとなっている。
さて、見えてきたかな……。
ちょいと準備をせねば……。
「リリアさん、悪いけど縛っちゃうね」
「はい……」
「今のうちしか言えないから言っておくね。さようなら、そしてありがとうね」
「はい……さようならユウナ様」
あたしはリリアさんの腕を後ろ手で縛って、口も塞ぎ目隠しまでした。
魔物の元でひどい目にあっていたと思わせる証拠が必要なんだ。
麒麟に怯えているためか、顔色は悪くなっているのでちょうどいい。
体に傷とかはないけど、これはさすがにしたくない。
では到着したようなのでちび麒麟に連れられて降りよう。
ちび麒麟は透明なので下にいる人から見たら、謎の魔力で浮いているように見えるだろうな。
神殿にはお偉いさん達が集まっていた。
会ったことあるんだろうけど覚えてないや。
わかるのは神官長のゼヴおじいさんくらいかな。
悲しそうな顔でこちらを見ていてちょっと居心地が悪い。
どうせなら睨んでほしいよね。
調印とやらは無事に終わった。
リリアさんも無事に引き渡した。
これで……リリアさんの件は無事解決したんだよね?
さあお城へ帰ろうか。
帰る途中であたしはリリアさんとお揃いで作ったイヤリングを左耳に着けた。
リリアさんも向こうで着けてくれたらいいな……。
さて、お城に帰ったら気分を一新してあたしの部下面接をしよう。
麒麟の上でグリモアさんに相談だ。
もう例の犬っ娘は採用決定なので面接をすると決めた。
あと1人くらい募集したいわけだけど……。
「ユウナ様、男性陣からもチャンスが欲しいとの声があります。一応目を通すだけお願いできないでしょうか?」
グリモアさんにこう言われちゃった。
たしかに女の子しか募集してないもんなあ。
うーむ……。
一応見るだけ見るか。
「わかった、じゃあ集めてみてね。採用したくなる子がいるかはわからないけどね。実はあたし……男が苦手で……」
「かしこまりました。見るだけ見ていただければ男性陣も納得するでしょう」
そう言ったグリモアさんはなにかしら書類を作成してそれをお城へ飛ばしたようだ。
いつでもどこでも働き者だねえ。
お城に帰って遅めの昼ごはんを食べ、広間へ赴く。
うーん……男だらけ。
なんとも食欲がわかないな……。
イケメン多いけどそんな興味ないし、かわいい系ならまだいけるかな……。
あれ? なにか1人異質な子がいるぞ。
なんだかフリフリな感じのピンク色のドレスを着ている。
とっても可愛らしいけど……男だよね?
近寄ってみると、猫かな?
てゆうかミリィの弟?
顔をこの上なく真っ赤にしてうつむいている。
話しかけてみよう。
「こんにちは、ミリィの弟君だよね? 可愛い格好だね」
「ユウナ様、こんにちはですにゃ。この格好は……お姉ちゃんがユウナ様が可愛い格好が好きと言って無理矢理……」
「ふふっ、よく似合ってて可愛いよ」
「ほ、ほんとですかにゃ? 嬉しいのですにゃ」
「うん、このあと面接においでー」
「はいですにゃ!」
ミリィの弟君は大喜びだ。
それはいいんだけど……周りがおかしな感じでざわざわしてる。
可愛い格好か……とか、女装なのか? とか、語尾に『にゃ』をつければいいのかとか。
全部間違ってるからやめてね……。
ここにいる男の魔物がみんな女装してにゃーにゃー言おうものならあたしは発狂しそう……。
さて、他にめぼしい魔物はいなかったので終了とさせていただきます。
若干かわいそうな気もするけど仕方がない。
あの子たちにも素敵な相手が現れることを願っておこう。
部屋に戻ってきて面接の時を待つ。
まず最初にミリィの弟君で、次が犬っ娘だ。
――おねえちゃん、ちょっといいかな?――
のんびり待っているとチルちゃんが慌てたようなテレパシーを送ってきた。
どうしたのかな?
――なんかね、お客さんがいっぱい来て……大きめの女性用の可愛い服を作ってほしいって言うの。それもみんながみんなだよ。おかしいよね?――
それの原因はあたしだね……。
チルちゃん、申し訳ないんだけどグリモアさんのところに行ってくれるかな……。
かくかくしかじかで……みんなの勘違いを通達してほしいって……。
――わかったよー、このままじゃ大変なことが起こりそうだから行ってくる。みんなにゃーにゃー言ってるし――
まかせたよー、このお城の平和はチルちゃんにかかっているからね。
ふう、あたしの行動一つでえらい騒ぎになるんだな……。
いろいろ気をつけよう。
――ユウナ様―、今よろしいですかにゃー?――
今度はミリィだね。
何の用かな?
――うちの弟が面接してもらえることになったみたいなので、お礼を言いたいのにゃー――
お礼なんていいんだよー。
ミリィがさせてた格好可愛かったしね。
――そうなのですにゃ! うちの弟はらぶりーなのですにゃよー。それでですにゃ、うちも面接に同行してはだめでしょうかにゃ?――
同行?
なんでかな?
――うちの弟は人見知りだし緊張する子なので、ユウナ様の前で何も話せなくなる恐れがありますのにゃ。だからうちが保護者としてですにゃあ……――
うーん、あたしと普通に話してたけどなあ。
ミリィの心配し過ぎじゃあないかな?
というかさ……ミリィが弟君と一緒にいたいだけじゃないの?
――ぎくっ……ですにゃあ――
やっぱりそっか、でもいいよ。
一緒においでー。
――ありがとなのですにゃー――
ミリィってば弟離れしてないんだなあ。
でも一緒にくるのも楽しそうだからいいか。
さあ、あたしの可愛いモン娘が増えるぞー。




