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20.戦いの後に

 北のお城から魔物が総動員されてきて、壊した砦の片づけを行っている。

 材料はなるべくリサイクルするそうで、川を使って城の近くまで運ばれるそうな。

 川での作業は、アクアと親衛隊が大活躍しているようだ。

 さらには麒麟も大きな破片を動かしたり大活躍している。

 虫の魔物たちは砦に踏みにじられた植物や木のお手入れをしているらしい。


 あたしはピィと合体して空を飛び、先に城へ帰らせてもらうことにした。

 他のみんなは先に送還している。

 わりとあっさり勝利はしたけど、みな精神的に疲れているはずだ。

 ちゃんと確認しておかねば。

 まずピィはどうなのかな?


――砦から落ちそうになった人を風で押し戻したり、人の頭に落ちそうな破片を風で吹き飛ばしたり、とてもとても楽しかったです。麒麟様の力もあり、ケガ人は一切出なかったんですよ――


 ふふっ、ピィは満足そうだね。

 ピィのおかげで人間はみんな無事だし、勇者には勝てたもんね。

 この子は大丈夫そうだな。

 ピィが嬉しそうなのは本心からのようで、帰りの飛行はとても速かった。



 お城について最初に向かうのはメアの部屋だ。

 人間の恐怖の感情を増幅する……あの子が一番負担のかかる能力を使っていたんだ。

 部屋に入ると、少し顔色が悪い感じで寝ていた。


「メア、つらい役目を任せてごめんね」

「いえ……ユウナ様のためですし、ああやって人間に逃げていただいたおかげでケガ人は出ませんでした……」

「うん、ありがとね……」

「はい……」


 顔色は悪いまま、笑顔をあたしに向けてくれる。

 心を癒す力のあるメア。

 この子を癒すには、同じ力を持った他の魔物の力がいるのかな?

 あたしでなんとかできないだろうか?


「ねえメア、まだやったことないけど合体してみようか。あたしでもメアを癒せるかも……」

「ぜひ……試していただきたいです」

「じゃあいくよ、メア……神獣合体……」

「はい……」


 メアが光に包まれてあたしの中に入ってくる。

 合体のいつもの気持ちよさとともに、悲しい感情があたしに流れ込んできた。

 これがメアの悲しみかな?

 とりあえず……合体で半分にはできたよ。


――少し楽になりました……。ユウナ様の中はとても素敵ですね――


 よかった……。

 この状態でメアの能力を自分に使えないのかな?


――試してみましょうか。だれかの夢に入る時はまず自分の夢に入り、自分の夢と相手の夢をつなげるんです――


 なるほど、じゃあ一緒に自分の夢に入ってみよう。


――はい……それでは寝る時のように心を落ち着けてみてください――


 メアの言うとおりに眠りにつくような気持ちになってみる。

 すると……意識がどこかへ落ちていく感覚……。


 夢の中では悪夢のような光景が広がっていた。

 死体の山が転がっている。

 死んだ子供を抱えて泣いている母親がいる。

 これは人間同士の戦争なのだろうか……。

 この光景がメアの心を悩ませてるの?


――ユウナ様、それは関係ありません。今までわたしが食べた悪夢があるだけです――


 食べたんだ……。

 悪夢って人間の?


――はい、戦争が終わった直後人間達は苦しんでいました。その悪夢を食べて回ったのです。それ以外にも、魔物が怖いという悪夢以外は食べて回りました……――


 な、なるほど……。

 戦争ってPTSDとか後遺症があるって言うもんね。

 そうならないようにしたわけか。

 相変わらず優しい子だよ。

 でもこんなにあって苦しくないの?


――多少は苦しいですが、人間達の役に立てたという気持ちが大きいので問題ないです――


 そうだよね、メアはそういう子だもん。

 そうすると……今メアが悩んでいる原因はどれだろう?


――埋もれてしまってどこにあるかわからないですね――


 そっか……じゃああたしがここに来た意味はないのかな……。


――いえ、何故か判りませんが……ユウナ様がそこにいるだけで心が癒えていく感じがします。ユウナ様と一緒になることでわたしの能力が高まっているのかもしれません――


 なるほど。

 ミリィの傷を癒す能力もあたしと合体することでかなり強くなったんだ。

 メアの能力もあたしと合体することで向上するのだろう。

 しばらくここにいようかな。いいよね?


――はい、狭苦しいところですがごゆっくりどうぞ――


 この後しばらくメアの悪夢を眺めて過ごした。

 恐ろしい光景だけど、そんな不快な感じではなかった。

 メアの優しさを感じられるからかな?

 偶然あたしとメアがキスしている光景が見えて2人で照れるといういいハプニングもあった。

 メアの心が癒えたようで、あたしは夢から目覚めることにした。



 ふう、夢の中って不思議だな。

 メアは元気になった?


――はい、ばっちりですよ。他のみなさんのところにも行かれるんですよね? このまま行きましょう。今の状態であれば、近くにいるだけで心が癒えるはずです――


 おお、なんともいい能力だね。

 そばにいるだけで癒せるってなんか幸せ。

 まずはミリィのところかな。

 あの子は人間の怪我をたくさん癒せてご満悦のはずだ。

 心配してはないけど、顔は見ておこう。


 部屋に行くと、弟君が出てきた。


「あっ……ユウナ様? ですよね……にゃお」

「いつもと違う姿だけどそうだよ。ミリィはいるかな?」

「えっと……先ほどから眠ってしまっていますにゃ」

「そっかぁ、どんな様子だった?」

「とてもとても嬉しそうにユウナ様との武勇伝を僕に話してくれましたにゃ」

「そっか、それなら安心だよ。じゃあ行くからたくさん寝かせてあげてね」

「わかりましたにゃ。ユウナ様、今日は本当にお疲れさまでしたにゃ」

「うん、ありがと」


 よし、ミリィは大丈夫。

 チルちゃんはどうかなー。


 部屋をノックすると反応がない。

 テレパシーで話しかけてみようかな。


――くー……すやすや……おねえちゃん大好きなの……――


 嬉しい寝言を言いながら寝ているようだ。

 チルちゃんも大丈夫なのかな?


――あの感じだと問題なさそうですね――


 メアのお墨付きももらえた。

 じゃあグリモアさんのところへ行こうか。

 今やっている片づけの指揮もしているはずだけど、部屋でしているはずだ。

 ノックして部屋に入れてもらう。


「グリモアさん、上手く行ったと思うんだけどどうかな?」

「お疲れさまでしたユウナ様。あの戦いっぷりでしたら上手くいくと思われます。明日人間と交渉してリリア様に帰っていただけると思います」

「うん、よろしくね」

「お任せください」


 忙しそうなので早々に退散だ。

 でもこれでやっとリリアさんをお家に帰せるかな……。

 元の生活に戻ってほしいな。

 今から会いに行ってみたいけどちょっと怖い……。


――ユウナ様、リリア様に渡していただきたいものがあります――


 ん? なにかな?


――今から作ります。ユウナ様はリリア様のことを想い浮かべてください――


 うん……。なにかわからないけどメアにお任せしよう。

 リリアさんへの想い……幸せになってほしいな……。

 この世界であたしを最初にお世話してくれた人だもん。

 そう考えていると……あたしの体から出た魔力がなにかを形作っていく……。

 手を伸ばしてそれを手の平に乗せてみる。

 これは……イヤリング?

 真珠のようなとても綺麗な宝石がついている。


――成功です。この片方をリリア様に渡してください。この宝石……パールに込められた魔力によって、着けた者同士に繋がりができます。リンクパールとでも申しましょうか――


 これをあたしとリリアさんが着ければつながりができるのか……。

 でもどうして?


――リリア様のことが少しだけ心配なのです。もし何かあった際には助けに行きましょう――


 そうだね……。

 なにかあってほしくはないけど念のためだ。

 これをリリアさんに渡しに行こう。

 合体は解除しないと驚かれちゃうよね?


――ユウナ様……恐らくなのですが、合体したままでもユウナ様の元の姿になれると思います。念じてみてください――


 え? そうなの?

 メアに言われた通り念じてみると……普段のあたしの姿に戻った。

 こんなこともできるんだね。


――さすがユウナ様です。それでは行きましょう。この状態で行けばリリア様に安らいでいただけると思いますし、イヤリングも受け取ってもらえるはずです――


 そうだね、行こう!

 リリアさんの部屋の前で深呼吸してノックをする。

 返事が聞こえたので、あたしはそーっと部屋に入る。


「ユウナ様でしたか」

「うん、久しぶりだねリリアさん。そっちに行って……いいかな?」

「はい……来てください」


 リリアさんは椅子に座ってなにか本を読んでいたようだ。

 なんだか穏やかな表情……。

 こないだは死にたがっていたのに、もう立ち直った?


「リリアさん、元気そうで良かった」

「こないだは取り乱してしまって申し訳ありませんでした。あの……メアさんでしたか? あの魔物からユウナ様が私のためにいろいろと動いていると教えていただきました。本当にありがとうございます」


 メア……いろいろお話してくれたんだね。

 リリアさんがあたしと普通に話をしてくれている……。

 なんだか涙が出てきちゃった。


「リリアさん……うう……」

「ユウナ様? 泣かないでください」


 リリアさんが立ち上がってあたしを抱きしめてくれる。

 いい匂い……なんだか安らぐ……。

 甘えてもいいんだよね?


「ユウナ様、なにか雰囲気が変わりましたか? その……なにかよくわからないのですが、こうしていると落ち着きます」

「んー……勇者の力……かな?」

「そうですか、素敵な力をお持ちですね。もう少しこのままでよろしいでしょうか?」

「うん!」


 メアのおかげでリリアさんにたくさん抱きしめてもらえてる。

 幸せだなあ……。

 よし、プレゼント渡すにはいいタイミングだ。


「リリアさん、これ受け取ってほしいんだけど……」

「これは……イヤリングですか?」

「うん、あたしとお揃いで……これがあればいざという時に助けに行けるんだ」

「嬉しいです……。大切にしますね」


 さっそく右耳にイヤリングを着けてくれるリリアさん。

 じゃああたしは左耳に着けよう。

 お互いに着けたのを確認して微笑み合う……。

 この後しばらくリリアさんと楽しく話をして過ごした。


「じゃあリリアさん、きっともうすぐ帰れるから……元気でね」

「はい、ユウナ様もがんばってくださいね。私は協力できませんが」

「うん、しちゃだめだよ。前と同じように生活してね」

「はい……」


 あたしは満足してリリアさんの部屋を出た。

 でもなんで急にああも変わってしまったのかな?


――以前お話した、魂に刻み込まれた魔物への恐怖……それを取り除きました――


 あ、そうなんだ。

 結構大変だったんじゃないかな?

 ありがとね。


――いえ、時間はかかりましたが……とても楽しかったです。ただ、帰っていただく前にまた元に戻す必要はありますが――


 そうだよね、あのまま帰しちゃったら問題が起こりそうだ。

 魔物を恐れない人間はきっと迫害されちゃう。

 メア、つらいだろうけどお願いね。


――お任せください――




 さて……これでみんなに会ったかな。

 アクアはどうしてるんだろう?

 おーい。


――作業は順調ですわ。ユウナ様――


 そっかそっか、今日の戦いで人間達にたくさん攻撃しちゃったけど大丈夫?


――そう……ですね。お城に帰ったらユウナ様がおかえりの……をしていただければきっと元気になれますわ――


 ふふっ、よしよし。

 帰ったら抱きしめてしてあげるよ。


――はい!――


 よし、冗談っぽく甘える余裕があるなら大丈夫だね。

 最後は麒麟だ。

 今日一番の働き者だもんね。

 なんだかノリノリで人間を脅してたけど、大丈夫かな?


――問題ない。あれは我なりのじゃれ方だ――


 あはは……。

 麒麟ってば威厳のある見た目の割にお茶目だね。

 というわけでみんな問題無しだね。

 さて、少しだけ平和な日々が続きますように……と。

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