17.あたしの可愛いモン娘⑤鳥娘
コンコン。
さて……次の面接は鳥っ娘だ。
ドアを開けると、体と顔は人間そのまま……腕が白い羽の鳥っ娘がいた。
ノースリーブのワンピースを着ていて、肩が少し見えるのがちょいセクシー。
スカートから見える足先は鳥のもののようだ。
あとで中を確認せねば……。
今まで見た魔物の中で一番人間から遠い姿かもしれないな。
とっても緊張した感じで立っているぞ。
「いらっしゃい、入ってねー」
「はい!本日はお招きいただき光栄であります!」
「ふふっ、そんな固くならないでね」
「は、はい……」
鳥っ娘を椅子に座らせて面接開始だ。
この子には以前食事の用意をしてもらったことがある。
あたしの部屋のお布団はこの子の羽が詰まっててふかふか。
食事で時々出る卵はこの子が産んだものらしい。
何から聞こうかなあ。
「じゃあ、あなたの特技を教えてくれるかな?」
「はい! まず空を飛んでの偵察です。普通の鳥の姿に変身できますので、街へ行くことも可能です」
「ほうほう、変身してみてくれるかな?」
「はい!」
鳥っ娘は両腕の羽で自分を抱きしめるような格好となり……次の瞬間姿が変わった。
先ほどの羽と同じように真っ白でちっこい。
これは……文鳥かな?
あたしは思わず両手を前に差し出して……。
「おいでー」
「ピィピィ!」
手の平にもこもこもぞもぞした感触。
これはたしかに普通の鳥だね。
「その状態だとしゃべれないのかな?」
「ピィ……」
「そっか。完全に化けちゃうんだね。戻っていいよ」
ちびちゃんはあたしの手からふわっと飛び立つと……次の瞬間元の姿に戻っていた。
そういえば……リリアさんが言っていたことを思い出した。
動物は魔物が化けている可能性がある。
あれは正しかったわけか。
「いい特技だね。それにすっごくかわいかったよ」
「は、はい……。ありがとうございます。様々な種類の鳥に変身できるのですが、あれが一番気に入ってるんです」
「どうしてかな?」
「以前人間に飼われている鳥を見まして、それがとてもとてもうらやましかったんです。あの鳥のように飼われたいなと思い……あの姿によく変身するようになりました」
「そっかぁ……」
うーむ……飼ってあげたくなるな。
この面接って、本来合格か否かを決めるはずなんだけど……みんな合格してるよね。
だってみんな話してると愛おしくなるいい子なんだもん。
だからもう合格って前提で話しちゃおうかな。
「あたしでよければ飼ってあげたいな」
「え!? そ、それは願ってもないことです……。憧れのユウナ様でしたら申し分ありません!」
「じゃあテスト、あたし可愛く甘えてくれる子が好きなんだ。もう一度変身してみて」
「はい!」
また文鳥の姿に変身する鳥っ娘。
先ほどと同じようにあたしの手を差し出すと乗ってきた。
手の平で包み込むとふわっふわで気持ちいい。
なんとなく熱くなっている気がするな。
「じゃああたしの肩に乗ってみて」
「ピィ!」
ぱたぱたっと飛んで肩に乗ってくるちびちゃん。
これは可愛すぎだぞ。
「次は頭ね」
「ピイィッ!」
今度はぱたーっ、とジャンプする感じで頭に乗っかってきた。
なんか楽しーな。
あたしは頭のちびちゃんを手に取り、顔の前に持ってきた。
そして小さなくちばしにキスをした……。
「ピイイイッ!? ひゃあああんっ!」
あ……ついついペット感覚でキスしちゃったけど、この子には刺激が強すぎたか。
変身がとけて、床に崩れ落ちちゃう鳥っ娘。
頬を紅潮させ、とろんとした目であたしを見上げてくる。
「大丈夫? ごめんね……あまりにも可愛くてつい……」
「いえ、驚きはしましたが……とても嬉しかったです……」
「あたしに飼われるってことはね……あんなことや……他にもいろんなことされちゃうんだよ」
「いろいろ……可愛がっていただけるのですね……」
「うん、そうだよー」
「それでしたらぜひ……ユウナ様のペットにしていただきたいです
ペットかあ……女の子の顔でこんなこと言われるとすごく不思議な感じ。
でもこの子の望みだもんね。
「あなたはどんな風に飼われたいのかな?」
「わたしが見た鳥は……かごのようなものに入れられていました。あの状態がうらやましいです」
「え?でもあの中に入れられちゃうと自由に動けないんだよ」
「そうですね。でも……人間が自分のそばに常に置いておきたいためにそうするのですよね? そんな風に想われてみたいんです」
「そっか……うん、そうだね」
前向きな考えをするんだなあ。
だとすると、この子を飼うなら鳥かごがいるな……。
チルちゃん作れるかな?
とりあえず面接の続きだ。
「じゃあ変身できるのははよくわかったよ。他に特技はあるかな?」
「はい、風を操ることができます」
「おお……なんかすごそうだね。やってみてよ」
「はい……えっと、なにをしましょうか」
そうだなあ……。
ちょっといたずら心を出しちゃおう。
「えっとね……あたしの履いてるスカートを風でめくってみて」
「ええ!? そ、そんな失礼なことをしていいのでしょうか?」
「うん、これはテストだよ。あたしの下着の色を当てられるかどうか……。挑戦してみる?」
「テストですか……。もちろん挑戦します」
「よーし、じゃあスタート」
「はい!」
さあお手並み拝見といこうか。
鳥っ娘は羽を頭の上にあげて、ゆっくりと下ろした。
ヒュインッ!
「きゃあっ……」
あたしの足に風が吹いてきてスカートがめくれそうになるのを手で押さえる。
自分でめくれと言ったくせに恥ずかしがってしまった。
でもなんか楽しい……。
鳥っ娘は素早い動きであたしの横に移動してまた羽をはばたかせる。
ヒュウッ!
「やん……」
なんとか押さえることができたが、鳥っ娘はさらに移動して風を起こしてくる。
あたしはめくれそうになるスカートを手で押さえるのに精いっぱいだ。
鳥っ娘の動きがどんどん速くなり、あたしの周りを飛び回る。
「これで決めます!」
ヒュルルルルル!
「きゃあああっ!」
あたしの足元全体から上に噴きあげるように風が起こった。
スカートが押さえきれない……。
その間に鳥っ娘は素早く移動して……見られちゃったかな?
風がおさまり、急に静かになる……。
「ユウナ様……白……ですね」
後ろを振り返ると……鳥っ娘が真っ赤な顔でうつむいていた。
「正解だね……合格だよ……」
そういうあたしも真っ赤になってしまっているようだ。
他の子には平気で裸を見せたりしたと言うのに……なぜか恥ずかしかった。
スカートめくりって……エッチだよね?
「あの……ユウナ様すみません。なぜか恥ずかしくて……」
「あたしも……」
「えっと……恥ずかしがらせて申し訳ないです」
「いいんだよ。あたしがやらせたんだしね」
「でもなんだか申し訳なくて……ユウナ様の大切なところを無理矢理見てしまった気がして……」
あたしはまたここでいたずら心がわいてきた。
なんでかわからないけど……この鳥っ娘をからかいたくオーラを出している。
「じゃああなたの大切なところも見せてほしいな。それでおあいこになるよ」
「え!? あ……あの……それはわたしのスカートの中を見たいと言うことでしょうか?」
「うん。でも嫌ならいいよ。これは面接に影響ないからね。ただ、あたしがあなたのことをよく知りたいだけ」
「わたしのことをユウナ様に知っていただく……。ぜひ見ていただきたいです!」
「そっか……嬉しいな。じゃあお願い」
「はい……」
なんとなくあたしの言い方がずるい気もしたけど……わくわく。
鳥っ娘は羽の先をスカートの裾にもっていく。
どうなっているかはわからないけど、あれでスカートをつかんでいるようだ。
「ユウナ様……見てくださいね」
「うん、見てるよ」
スカートも見たいし、この上なく照れた顔も見たい。
あたしは両方楽しむべく視線を素早く上下に移動させる。
スカートが少しずつ持ち上がり、鳥足が少しずつ見えていく。
うーん……中身まで鳥だったらどうしよう……。
そう考えていると、鳥の足がある場所から人間の太ももとなった。
太ももから鳥の足が生えているような感じだ。
なるほどね……そうなっていたのか。
「ユウナ様……見えているでしょうか……」
「まだ見えてないよ。もう少し頑張ってね」
「はい……」
恥じらいの顔が可愛すぎる。
さあ……もうすぐだ。
やがて白い布地が見えてきた。
お股の形はまんま人間と同じようだ。
「ふふっ、あたしとおそろいの色だね」
「は……はい……。嬉しいです」
というか基本的にみんな白を履いているのかな?
そのうち落ち着いたらチルちゃんにいろいろ作ってもらってみんなに配りたいな。
鳥っ娘の顔は沸騰しそうになっている。
ずっと見ていたいけど、そろそろ終わりにしておこうか。
「じゃあ下ろしていいよ。ありがとね」
「はい……」
いやあ楽しい時間を過ごせた。
ただ……面接というよりセクハラ?
真面目な話に戻りたいけど、ひとつ確かめたいことがある。
「ところでその格好だとさ、空飛んでる時にぱんつ見えちゃったりしないのかな?」
「周りの風を操っていますので、絶対見えないようにしています」
「な、なるほど……器用だね」
「はい……だから見られたのはユウナ様が初めてです……」
そう照れながら言ってうつむく鳥っ娘。
可愛すぎたのでもう採用決定。
「初めてって嬉しいな。さて……どんな名前にしようかな」
「え!? つけていただけるのですか?」
「うん、あなたのこと気に入ったからね。名前考えるから少し待ってね」
「はい! えっとあの……それでしたらペットっぽい名前がいただきたいです……」
ペットっぽいって……それでいいのかな。
人間のペットがよっぽどうらやましかったんだろうね。
でも、この世界のペットの名前をよく知らないぞ。
「あたしが異世界から来たって知ってるよね? だからあたしの世界でのペットっぽい名前でいい?」
「はい!」
目を輝かせて元気に返事をする鳥っ娘。
では考えよう。
鳥と言えばピーちゃんがすぐに思いつく。
さっき文鳥姿の時にピィって鳴いてたっけなあ。
よし、ペットっぽいしこれでいいか。
「あなたの名前はピィにするね。ピィちゃん」
「ピィ……素敵な名前です。ありがとうございます」
さて、いつものあれをしようかな。
ピィの顔を両手で持つと……ピィは目を閉じた。
さっき文鳥の姿の時にしたからわかってるのかな。
それではいただきます。
ピィの唇は羽のようにやわらかかった……。
顔を離してとろんとしたか顔のピィと見つめ合う。
「これはペットと飼い主の誓いのキスだよ」
「はい……」
「これからよろしくね、ピィ」
「はい……お願いします。ユウナ様に一生忠誠を誓います」
「うん、あたしも一生面倒見るからね」
「嬉しいです……」
これで5人目か。
あたしの部下……可愛いモン娘たちは順調に増えている。
さて、時間はまだあるから他にも話をしておこうか。
ピィと一緒にベッドに座ってと。
「あなたも偵察部隊なんだよね? どんなことしてるの?」
「はい。情報収集は他の皆と同じですが、わたし達鳥族にはもうひとつ役目があります。わたし達の起こす風は自然のものと区別がつかないので、この力を使って偵察している場所の平和を守っています」
「平和を?どんなことしてるの?」
「例えば子どもが高い所から落ちた際には、風で助けて軽傷ですませたりもしました。これは滅多にないですけどね」
隠れて人間を守っているのか。
やっぱり優しい子たちだよ。
これを人間が知らないのは悲しいけど……。
「なるほど……他には?」
「皆で協力することで空の雲を時間をかけて動かすこともできます。日照りが続く時は雨雲を呼び、逆もあります。こうすることで農作物の収穫を助けるのです」
「天候まで操れるんだ。すごいね……」
「はい。とても楽しい任務なんですよ」
「それって誰かが指示を出しているのかな?」
「ずっと昔から続いているようで……今では当たり前のようにやっていますね。本来はなにか重要な理由があったらしいのですが、わたしは知らないんです」
「知りたいとは思わないの?」
「少しは気になりますが、人間を助けることは喜ばしいこと。知らなくても問題ありません」
「そっか……」
うーん、やっぱりいい子たちだよ。
それにしても重要な理由は少し気になるな。
メアあたりは知っているだろうか。
毎度のことながら、こういう話をしていると抱きしめたくなってしまう。
でもこの羽があるとどう抱きしめたらいいのかわかんないな。
よし、たまには逆をしてもらおう。
「ねえピィ、お願いがあるんだけど」
「はい、なんでも命令してください」
「あなたの羽気持ちよさそうだからさ……あたしを包んでみてほしいな」
「え……あ……はい……。では……失礼します」
「うん……」
ピィの羽があたしの背中と頭を包みこんできた。
やっぱりふわふわで気持ちいいや。
あたしはいつもこのふんわり羽の布団で寝てるんだね。
「ユウナ様……いかがでしょうか?」
「とっても気持ちいいよ……。今日から布団で寝るたびにピィのことを思い出しちゃいそう。ピィに包まれてる気分になって寝るね」
「わたしの羽で作った布団を気に入っていただけたなら嬉しいです。もっとたくさんむしって、もっとふかふかなものを作りますね」
「あはは……自然に抜けたやつだけでいいよ」
「はい……またためておきます」
「うん……」
羽に包まれたまま、ピィの胸に顔を押しつけてみる。
この子は胸ちっちゃめだね。
大きいと飛ぶ時に邪魔なのかな?
「あん……くすぐったいです……ユウナ様」
「嫌かな?」
「いいえ……嬉しいです」
「じゃあこのままお話しようね」
「はい……」
このままの幸せな体勢で残りの時間を過ごした。
あたしの特技を説明して、砦攻略についても話しておいた。
今度一緒に空を飛ぶ約束もした。
これで今日の面接は終わりだ。
かわいいペットができちゃった。